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long run 1

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「ワ、ワシの負けじゃ!
 が、お前には永遠の苦しみを与えてやる!」

バサッという音と共に魔神の体を透き通った紺色の大剣で切り裂いた。

「永遠の苦しみを味わえ!! 永遠という名の地獄の中で!
 ハハハハハハハハ!」

魔神は死に際に右手の平を向けた。

(何かが来る!!)

と一瞬、身構えたが魔神の手から何かが発せられる様子は無かった。
安心した瞬間、俺の体の中に何かが入った気がした。
が、痛みはおろか体のどこにも何かをされた形跡はなかった。

(何だったんだ!?今のは・・・・・)
が、呪いを受けたことだけは分かった。

ダンジョンの奥で魔神の体がゆっくりと崩れたかと思うと小さな欠片となり弾けるように散っていった。

ハッとして目を醒ます。

「チッ!  また、あの夢か!
 一体何度目だよ。クソが!
 野宿をするとこれだからな! デリケートな俺はふかふかのベッドで寝ないと安眠できないんだよな!」

左腕枕にしながら毛布に包まりながら毒づく。
360度砂が広がり、人の気配などあるはずも無かった。
広大な砂漠に一人やって来た。
体を上に向け空を見上げると満点の星が輝いていた。
側には焚き火が煌々と焚かれている。
毛布の中で左足をくの字に曲げ右足を上に掛け星を見ながらつぶやいた。

「永遠の苦しみか・・・・・・確かにな」

左腕のローブの袖から透き通った黒色のビー玉より二周りほど大きい石を取り出し夜空に透かすようにしながら呟いた。

「30個目か。まだまだ、先は長いな・・・・・・
 また、この砂丘か・・・・今度は取り返すのか。因縁だな」

遙か昔の事を思い出していた。

「あの頃の俺はザコザコだったな~
 魔神を倒したと言っても俺の力じゃなかったしな・・・・・止めを刺しただけだ」

と遙か昔の事を思い出した。

「・・・・・結局、俺一人の力では極悪勇者・ラインハルトを倒すこと出来なかったな」

そして、比較的近年の事を思い出した。

頭を掻きながら回想する。
この世界は他の世界よりも時間の流れが遅い。
他の世界では1000年ほど経過しているが、この世界は30数年しか経過していなかった。
その時間の流れが遅い世界で今から30数年ほど前に、魔王が現れ人々を恐怖に落としいれた。
そのとき、勇者ラインハルトが現れ魔王を討伐し、この世界に平和をもたらせた。
が、平和は長く続かなかった。
当時の王は魔王を倒した勇者・ラインハルトを恐れ、亡き者にしようと画策した。
が、ことごとくラインハルトは返り討ちにし、ついには嫌がるこの国の第一王女を誘拐し、宝物庫から国璽を奪い、逃亡を企てた。
悪いのは狭量な王であるのは間違いないのだがラインハルトも逃亡の道中で王女や多くの女性にあれやこれや、羨ましいことを・・・・・
いや、違った。如何わしい事をして楽しんでいた。
あのブサイクな顔、オークのような体躯で可愛がられた王女の事を思うと不憫で仕方がない。
町に立てこもり町の住人を皆殺しにしたり、追っ手の王国騎士団を返り討ちにするために人質を獲り、騎士、人質とも・・・・・・

他にも多くの者を手にかけていた。
勇者・ラインハルトの名は地に落ち、罪人となってしまった。
もはや勇者の面影はなく、行く先々で罪を犯す犯罪者に成り下がった。
少々、可哀想な気もするが、今や猛獣が野に放たれた状態だ。
王にとっては討伐の良い名目が出来たわけだ。

王も酷いものだ。
土地なり爵位なり与えて身分を保証さえすれば、このような大事になる事は無かっただろう。
王、いや権力者ははいつも勝手なのだ。
それはいつの時代でも、どの世界でも変わらない。
自分より優秀な者は疎まれ排除されるのが世の常。

まぁ、どちらに正義があるかなんて俺には関係無い。
俺に有るのは雇い主と雇われる側の雇用関係以外に優先するものは無い。
お客様には逆らえないのでね。

そのラインハルトといったい何回、死闘を繰り返したことだろうか・・・・・・
と、格好をつけてはみたものの、正確に言うと死闘では無く一方的な虐殺が正しい。
あるときは得意の雷魔法で黒こげ、あるときは聖剣で一刀両断。
その数は300回は越えていただろ。
罪人になったとはいえ、魔王を倒した勇者。
俺のように止めを刺しただけのインチキ勇者とはスペックが違う。
が、最初は殺したはずの男が翌日には目の前に立っていて驚いていたな~

「貴様は昨日殺したはず!」

と決まった台詞を返してくれた。

砂人形を幾つも作って集団で襲い掛かったときには、

「これがお前の不死身の仕掛けだったのか!」

と大声で怒鳴っていたが、そうじゃないんだな。
お前は確かに俺を何度も殺していたんだよ。
ただ、俺は死ねないだけなんだよ。

俺も伊達に何度も殺されていたわけではない。
弱いなりにラインハルト攻略法を探っていた。
ラインハルトはオークのような巨体を生かした剣技と雷撃魔法を得意としていた。
分類上は魔法剣士系の勇者であり、この世界の人間の魔法は自然と密接に関係している。
雷撃魔法は雲か重要なポイントになっている。
近くに雷雲があるときの威力は雲が無いときに比べ明らかに威力は増す。
強力な雷撃魔法は雲が無くては十分な威力が発揮されないのだ。
砂漠などの空気が乾いている地域では最上位の雷撃魔法の威力が極度に弱まる。
オーク並みの体を使った馬鹿力の剣技も踏ん張りの利かない砂の上なら威力も半減するだろう。

そして、死闘の末、たどり着いたのがこの砂丘だった。
まぁ~俺がラインハルトをこの砂丘に誘導したのだ。
オークのようなガタイのクセに母親の形見のペンダントを大事にしていた。
無数の泥人形君たちを使い撹乱し、一瞬の隙を見て首にぶら下げていたペンダントを奪い取り、追跡させ砂丘まで導いたのだった。

あ~弱いって罪だ。
二人の悪魔、デブーとガーリが居れば楽勝だったのにな・・・・
あのころは二人と一緒に旅をしていなかったからな・・・・

姑息な手段を用いなければ強者に勝てない。
きっと、世間様は卑怯者と罵るだろう。
が、俺には契約がすべてだ。


そして、砂漠といえば、奴がいる!
どの世界でも嫌われ者!
そう! 巨大ワームだ!
全長500mを超える化け物!
この世界の魔王でさえ手を出すことが叶わなかった超巨大ワーム。
魔王が誕生する以前から、この当たり一体の砂漠を住処にしており、この砂漠に栄えた都市を一夜にして瓦礫に変えたと言われていた。
そして、この砂丘がヤツのねぐらと言われている。
そう!自力で倒せないのなら強者の手を借りて倒すまで!

後は時間との戦いだった。

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