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Take It Easy 6

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「よっ! 第一王子! いい風呂だったぞ!」

部屋のドアを開け、第一王子と家老に開口一番挨拶をする。

「ほら、これ! 返しておくぜ」

ヒュ!

と第一王子の後ろの壁目掛け暗殺に使われた短剣を投げる。

ダン!

という音と共に壁に突き刺さる。

「あ、あ、あの2人は!」

「うん?5人じゃないのか? 腰が抜けて天国にでもいるんじゃないか?」

第一王子の前の応接椅子に濡れた頭を大きなタオルで拭きながら座った。

「契約違反はダメだよな~
 しかも2度も!
 俺の家の家訓知ってるか? まぁ~俺が決めたんだけどさ。
 『3度目は無い』っていうんだけど。
 どういう意味かって言うと、2回約束を守らなかった奴は3回目も約束を守らないってことさ。
 で、2回までは許されるっていうんじゃないんだよ。
 そんな奴に何度もチャンスを与えるのは馬鹿馬鹿しいだろ」

と、おどけた様に両手を広げ肩を竦めながら言った
「だから『3度目は永遠に来ない』ってことなんだ。
 永遠に来ない! 2回破ったら殺しておけば3回目は永遠にこないだろ?
 何か名言ぽく無い?
 カッコ良くて気に入っているんだけど、第一王子はどう?」

「出会え!! 者ども出会え!!」
家老が叫ぶ。

ダダダダダダ
ズドドドドドッド!

と鎧を纏った騎士が部屋に乱入してくる。

「こやつを斬り捨て!!」

家老の命で騎士が一斉に剣を抜き飛びかかってくる。

「王子、今のうちに!!」

家老が出口を空け脱出を促す。

「おいおい、話は終わってないぜ! 
 人の話は最後まで聞かないとダメだろ!!
 親の教育がなってないな~
 プリズン!!」
男は左手の平をドアの方へ向け魔法を唱えた。
第一王子は部屋の扉のノブを捻り外へ出ようとするが扉が開く事はなかった。
そして、振り向くと

「おのれ! 奴は手ぶらだ! 皆の者、ヤレ!」

と命令した。
騎士たちが次々と飛びかかってくる。
一人、二人、三人と右へ左へかわす。

徐に右手を挙げ唱えた。

「剣よ!!」

と言い終わると暗黒魔王・イーガワのダンジョンに置いてきたはずの透き通った紺色の大剣が手元に現れた。

「剣を召喚したのか!! そんな馬鹿な!」

第一王子が叫ぶ。

「な~に、この剣は忠犬ならぬ忠剣なのでね」

「貴様! 面白いつもりで言ったのか?」

「ダメ? なかなか良く出来てると思うのだけど・・・・・・第一王子は気に入りませんか!」

死ねーー!

騎士が叫びながら襲ってくると両手で大剣を持ち薙ぎ払う。

ガン!!

剣と剣が当たる音が部屋に響く。

「お前たちには罪は無いんだけどな~
 悪い事は言わない。他の王子様やお姫様に鞍替えした方がいいぞ。
 この王子は今日、ここで死ぬんだから。
 何なら転職の口ぞえをしてやるけど、どう?」

「貴様! 騎士道を侮辱するのか?」
鎧の上にマントを羽織った騎士長らしき男が怒鳴った。

「この国の騎士ってのは国王に使えるんじゃないのか?
 それとも第一王子に仕えているのか?
 お前らの主人は国王だと思うのだが・・・・・・俺の認識不足か?」

「黙れ!!」

騎士長が斬りかかってきた。

ガキン!

大剣で軽々受け、突き飛ばすと騎士長は壁まで吹き飛んでいった。

「この国の騎士さまは奴隷商人に仕えるということなのね。
 なら遠慮なく斬る事にしよう」

ブン! ガキン! ブシュ! ブン! ガキン! ブシュ! ブン! ガキン! ブシュ! 

大剣を薙ぎ払うたびに騎士たちは金属製の鎧後と切り裂かれ部屋に血しぶきが舞う。

「あ~あ、せっかく風呂に入ったのに!
 だから戦いたくなかったんだよ!
 さぁ~ 次は第一王子の番だよ!
 商人なら契約を守らなかったらどうなるか知っているだろ?」

ゆっくり、ゆっくり、一歩ずつ近づくと第一王子は腰砕けになり床に尻餅をついた。

「悪かった、悪かった。僕が悪かった。謝るよ!
 静かに誰にも知られないように暮らす。
 だから命だけは、命だけはとらないでくれ!
 許してくれ!!」

「ゴメンで済めば警察は要らないの!!
 さっきも言ったろ『三度目は無い!!』って」

「いや、だから、許してくれ!頼む!」

家老が壁に刺さっている短剣を抜き襲い掛かってくる。

「王子は私がお守りする!!」

突き刺そうとする短剣を先を素手で握りバキンッ!っとへし折る。

「止めておけよ、じーさん。老い先短い人生を無駄にするなよ。
 孫の下へ戻って抱いてやれよ! 人生は短いんだぜ!」

短剣を折られると家老は尻餅をついた。

「さぁ~第一王子、茶番は終わりだ。
 依頼主をこれ以上待たせるわけにはいかないのでね」

右手を水平に振ると第一王子の首が床に落ちた。
それを左腕の袖の下から取り出した唐草模様の風呂敷に入れ、左腕の袖の下へ入れた。


プリズンを解除し部屋から出る。
屋敷の外に出ると裏へ回り巨大な壁を大剣で壊す。
そして屋敷の中へ戻ると地下へと向かう。

「おおお、いるいる、一体何人いるんだよ! 
 ゼルダム最大の奴隷商人といったところか」

地下には多くの牢屋が並んでいた。
牢屋の中には亜人、獣人、人間まで捕らわれていた。
地下にもかかわらず日の光が入ってくるよう小さな窓も付いた。

「奴隷牢にしては整った環境だな。
 健康を害していたり体が欠損している者は居ないようだし・・・・・
 健康状態の悪い者は処分された可能性もあるな」

出入り口に一番近いの牢獄の前に立つと

「おーーい、お前たちここから出してやる。
 お前たちのご主人さんは、もうこの世にいないから好きにしろ!
 危ないから横に避けろ」

と中にいる4人の犬や猫の獣人に声を掛けた。

ドデン!

牢屋の扉に蹴りをみまうと壁まで飛んでいった。

「兄さん、出してくれるのかい?」

色っぽい女の犬の獣人が目を丸くして聞いてくる。

「ここに残りたければ残ってもいいが他の奴隷商に捕まるだけだぞ。
 館の裏の壁を壊しておいたから、そこからこっそり逃げ隣町までいくといい。
 ほら、金だ!」

袖の下に手を突っ込み第一王子から貰った金貨を一掴みして渡した。

「こんなに?」

「あぁ~好きに使え!
 生きていくのには金が掛かるからな。
 残りの人生を楽しめ!」

「お兄さん、ありがとう。みんなで分けるよ」

「いや、それはお前一人分だ」

「え!!」

「ほら行け! まだ何人も残っているから」

牢屋の残りの獣人たちに同じように金貨を渡すと次の牢屋へ向かい同じ事をした。

「あ~~、メンドクセー!
 一体、いくつ牢屋があるんだよ!」

と頭を掻きながら

「召喚! デビルロード!!」

と言うと左手を前に突き出すと口は裂け、目はどこまでも赤く、肌は浅黒く、翼を生やした2匹の悪魔が出てきた。
一匹は痩せ型。もう一匹は明らかに肥満体型だった。

「アニキ! 最近、悪魔使いが荒くないっすか?」

と太った悪魔が答える。

「アニキ、今度は何ですか?」

と痩せた悪魔が問う。

「この牢屋の扉を全部開けて欲しいんだ」

「え!!俺たちはそんなことで呼ばれたんすか!? アニキ!」
太った悪魔が言う。

「まぁ~そうなるかな」
と頭をかきながら言う。

「ちょっと待ってくださいよ、アニキ!
 俺たち二人、『地獄の公爵』と言われてるんですぜ!」

「お前たち、もっと地上に居たいって言ってたじゃない・・・・・
 暗殺なんてすぐ終わるからつまらないって。
 だから呼んだんだよ」

「でも、扉を開けるだけってのは無いんじゃないですか? アニキ」
痩せた悪魔が言う。

「扉を見てみろ、片側だけでも10部屋あるんだぞ!
 一人で全部開けて金貨を配ってなんて時間掛かりすぎるだろ!
 これが終わったら美味い物でも食いにいこうぜ!」

「仕方無いッすね~」
「特産物・名産品でお願いしやすよ~」

と二匹の悪魔は文句を垂れながら右と左に別れ扉を開けに行った。
二匹の悪魔が扉を空けにいくと奴隷達全員部屋の奥へ固まった。

「大丈夫、大丈夫。何にもしないから。扉を開けたら出口にいる兄さんに金貨を貰って好きなように逃げてくれ」

奴隷たちは悪魔が次の牢屋に向かったのを確認すると一目散に出口へ向け走った。
座っている男が全員に金貨を一掴みずつ渡す。

「館の裏の塀に穴開けてあるから、そこから逃げろ!
 短い時間かもしれないが残りの人生を楽しめよ」

(あ~あ、いつから俺はこんな偽善者になったんだろうな~ 嫌だ、嫌だ)

と首を振りながら一人一人に金貨を渡した。


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