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エピローグ

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並行世界。
世界は一つではない。
『世界』は無限に存在し無数に枝分かれをしている。

例えば君がこの物語を最後まで読んだ世界。
途中で読むのを止めた世界。

この物語を面白いと思う世界。
いやいや、つまらないよ!と思う世界。

ポチっと応援ボタンを押す世界。
押さない世界。

人の数だけ、その行動の数だけ世界は枝分かれしてゆく。
時間の流れが速い世界、時間の流れが遅い世界。
が、時間だけは戻る事はない。
過去にだけは戻ることは出来ない。


この物語は並行世界を自由に行き来し、願いを叶えた男の話である。




「フーーー!! これで終わりだ。
 ようやく最後の欠片を手に入れることが出来たぜ!!!!!」

男は最後の一つを手に入れつぶやいた。
それはどこまでも白く透き通った拳大のビー玉のようにしか見えなかった。
袖の中から他の『欠片』と呼ばれる107個の大きなビー玉は、どれ一つとっても同じ色をしていなかった。
青や赤でも微妙に色が異なっていた。
他にも明らかにビー玉やガラスの塊と分かるものも取り出した。
一つ一つに思い出があるはずなのだが、すべては遙か遠い昔の話。
覚えているのは直近で集めて20個ぐらいだろうか?

多くの出会いが有り多くの別れがあった。
が、どのような出会いをし、どのような別れをしたのか・・・・・もう覚えていない。
自分の名前さえ忘れてしまうほどの時が過ぎて行った。

時の流れとは残酷だ。
愛する者も美しい思いでも・・・・・
いや、憎しみや怒りさえも・・・・・
時の流れはすべてを洗い流してゆく。
それは幸なのか不幸なのか判らない。
男が歩んできたのは『永遠』と言う名の地獄であった。
はっきり言える事は手に入れたモノはすべて失う宿命。
奪われるための人生であった。

「さぁ~これで、みんなの下へ行ける」

投げ出したビー玉やガラスの塊の前に胡坐をかきに座った。

「欠片よ! 俺の願いを叶えてくれ! 『永遠』と言う名の地獄から救ってくれ」

静かに目を閉じたとき物語は終わった。


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