迷子の僕の異世界生活

クローナ

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危険な魔法

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「『ほっそい』ってなんだよ。いくら俺だってそのくらいで折れたりなんて……。」

「トウヤは黙ってて!この人はねウチの一番小さいのが飛び付いただけで倒れちゃうような子なのにあんな勢いで来ていいわけないでしょう!」

俺の申し立てを断ちラテ屋のお姉さんを怒鳴りつけているマリーの背中はもちろん俺より小さい。それを一緒に眺めているレインも俺より低い身長だけど『俺と違う』と小さい子組に称された通り逞しさを感じる腕に引き寄せられたのを思い返す。俺は今、小さなふたりに護られている。

「とおやだいじょうぶ?」

「けがしなかった?」

「しなかった?」

小さい子組も次々に俺の心配を口にする。もしかしなくても今魔道具が発動したのはラテ屋のお姉さんから俺を護ろうとしてくれたの?

「ふ、ふふ、ふははははははっ!あ~可笑しい、小鳥ちゃんに過保護なのは我が弟だけじゃないんだ、あははははっ。」

その気付きが間違いでないのはお腹を抱えて笑っているルシウスさんが証明してくれた。

「でも彼女の言うとおりだよ。今のは物理反射が起きたんだ。キミが彼に与えようとした衝撃が跳ね返った、小さな彼なら怪我をしたに違いない、それをこの小さな騎士達が危険とみなして魔道具が反応したんだ。キミは挨拶と言ったがそれにしては度が過ぎている。」

マリーの横に並び出た長身の王国魔法士の言葉にラテ屋のお姉さんが泣きそうな顔になってしまったところでセオとジョセフがルシウスさんに向かって敬礼をした。

「騎士隊のジョセフと申します。こちらは同じくセオです。失礼ですが王国魔法士の方ですね。今の異変をご存知でしょうか。」

「ああ、私は第一皇子様から『桜の庭』の防犯強化を仰せつかった王国魔法士のルシウス=ルーデンベルクと云う者だ。今話した通り今回のは彼女の勢いに子供達が危険と判断して魔道具が発動したんだ。」

「そうでしたか。ではすでに危険はないと云うことですね。彼女の処分はどういたしますか?」

俺とルシウスさんの表情を確認しながら『処分』と云うセオの言葉ににラテ屋のお姉さんの顔がすっかり青褪めてしまったので俺は慌てて首を横に振った。

「いや、今回は事故みたいなモノだし知り合いの様だから厳重注意と云うことで何もしなくていいよ、本人も反省しているしね。」

「わかりました、ではその様に報告を上げておきます。それでは私達は通常警備に戻ります。さあ、あなたも戻って下さい。」

「ごめんね、また会えるなんて思わなかったから嬉しかったんだ。二度もキミを驚かしてごめん。良かったらまた来てね今日のお詫びに奢るからさ。」

ジョセフに俺達から離れるように促されたお姉さんは背中を丸めなながら申し訳無さそうにそう言って右手を差し出した。差し出された手を取り握手をするとへにゃりと笑ってその後随分うなだれてラテの屋台へ戻って行く。そして騎士服姿のセオも子供達に再び『いってらっしゃい』と送り出され照れくさそうに去って行った。

「さてと。チビちゃん達びっくりしただろう?」

「びっくりした。」

「おもしろかった。」

「きらきらしてきれいだった。」

「おとがりーんりーんてしたよ。」

目をキラキラさせながら一生懸命身振り手振りでそれぞれの思ったことを話す姿にルシウスさんが芝生に膝を付いてニコニコしながら聞いてくれた。

「まずはレイン、トウヤを護ってくれてありがとう。キミは勇敢だ。今回魔道具を発動させたのはキミだよ。」

「え、俺ですか?」

膝を折ってもレインよりまだ大きいルシウスさんに名前を呼ばれ身に覚えがないと云う顔をした。

「うん。キミはさっき『トウヤが危ない』って思ったろう?それに反応して魔法障壁が出来て周りに危険を知らせる警告音がなったんだ。」

「どうしてきらきらきえちゃったの?」

「急に膜が出来て大きな音も鳴ってみんな驚いただろう?でもセオ君が来て安心したね?みんなが『もう大丈夫』って思ったら魔法も消えるようにしてあるんだ。いつまでもあのままだと遊べないだろう?」

「「じゃあもうあそんでもいいの?」」

「いいよ。みんなのおかげで実験大成功だ。だからいっぱい走り回っておいで。」

視線を合わせゆっくりわかりやすく説明してくれたルシウスさんにそう言われ子供達はまた大喜びで駆け出して行った。

「ふふふ、小鳥ちゃんはチビちゃん達にとても大事にされてるんだね。こんな形で実証実験出来るとは思わなかったけど上手くいった。もうチビちゃん達を傷付ける事はアルフレッド様でも出来ないと保証できるよ。それに『音』というものは私の思っていた以上に効果のあるものなんだね。周りも注目していたし騎士もすぐに来てくれた。今ここにいなくとも噂は広がるだろうし騎士団から報告も上がる、キミを狙うものがいるならば手出しは難しいと考えるだろう。どうかな?私の考えた『防犯ベル』は安心でき得る物に出来上がったかな。」

立ち上がり、ローブの裾に付いてしまった芝を払いながら笑っているルシウスさんに今の気持ちを上手く伝える言葉が見つからない。フランディールで最も強いと云うアルフ様が無理ならもう誰にも子供達を傷付けられないって事だ。

「ああ、ごめん。あれだけじゃわからないか。魔法石も小さいし数も少ない。でもそれぞれ違う魔法を付与してあってそれを『共鳴』と云う魔法で繋いであるんだよ。今のは双子ちゃんの付けてる『防犯ベル』の物理攻撃反射と防御結界で他にも小鳥ちゃんのと同じ……。」

「ありがとう、ござい……ます。」

ルシウスさんが話すのを止めたのが先かノートンさんが抱きしめてくれたのが先かわからないけれど、ほっとした俺はどうしようもなく涙が溢れてそう伝えるのが精一杯だった。




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