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騎士とミサンガ
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しおりを挟むクラウスとセオを見送った直後は子供達の健康診断で教会の事を考えたり、アンジェラが来てくれたりと俺の脳みそや心臓が忙しかったけれどその後からはとても穏やかな日々が続いている。
「あれ?」
「どうかしたか?」
「ううん。なんでも無いよ。」
レインに聞かれてそう返事を返したけど本当はちょっと、いやもの凄く気になる事があった。
でも今は子供達の髪をマリーとレインに乾かしてもらってる最中で、中断して風邪を引かせたりしたら大変だ。確かめるのは後でいい。
読み聞かせをして、小さい子組が全員眠ったのを確認して俺の1日の仕事が終わる。そして自分の部屋に戻ってからもう一度確かめた。
それに気付いたのは小さい子組とシャワーを浴びた後、首から下げているギルドタグがパジャマの外に出ているのに気がついて胸元にしまおうと手にとった時だった。
今日たまたま目に入っただけで普段その存在をあまり気にしてなかったからいつから変化したのかもわからないけれど───
「俺、19才になったんだ。」
未だよくわからないこの世界の魔法の仕組み。だけど確かに俺の身の回りに存在していて、灯りをつけたり、水やお湯を出したり、コンロに火をつけたり毎日使う洗濯機だって魔法仕掛けで動いている。
何がいいたいのかといえば、ギルドタグに刻まれている俺の年齢がいつの間にか『18』から『19』に変化していた。
ギルドで見た時は『18』だったから変わったのはその後から今日までの間。
捨て子の俺の誕生日は拾われた日だ。嬉しい日であったことは1度も無いんだけどその日がこれば年齢が上がる事は嫌ではなかった。
マデリンでギルドに登録した時にこの世界の人々に比べて小柄な俺の年齢を証明してくれたのはこの身体に流れる血。その血は俺の生まれた日も知っているんだ。
教会の水晶で見たらわかるんだろうか
ふとよぎった考えに首を振る。
「来年の冬の1月になったら毎日見なくちゃ。」
保証はない。でもそうであって欲しいと思ってわざと声に出した。
「クラウス、逢えないうちに俺19才だって。話したいことがまた増えたよ。早く無事に戻ってきてね。」
空の蒼の『お守り』とミサンガに話しかけてるのなんて人に見られたら恥ずかしいけれどこれはもう眠る前の日課だ。
あと俺の思い違いでなければこの『お守り』は話掛けるとあったかくなる気がするんだよね。なので毎日話しかけ、胸に抱き眠る日々。そして翌朝目覚めてぐっすり眠って夢で逢えなかった事を残念に思う日々。
いつ変わったのか気付かなかったくせに、19才になったと自覚したことで、ちょっと大人になった気になる俺って本当に単純だ。でも仕方ないよね。18才って『学生』って感じが抜けないけど19才って気持ち的になんか違うんだから。
だけど朝から背筋を伸ばして歩いてたりなんかしてたらマリーに「寝違えたの?」って心配された。違うし!
そんなちょっとだけ大人ぶった朝、朝食を食べてる時に嬉しい知らせがあった。
毎朝届けられる新聞には5日ごとに討伐部隊の定期報告の記事が載っているのだけど、騎士団の討伐遠征が順調みたいだとノートンさんが教えてくれた。
俺も小さい子組のお昼寝の時間に読ませてもらおう。
絵本と違って新聞は難しい文字が多いからいい勉強になるのだ。
「もしかしたら予定より少し早く戻るかも知れないね。」
ノートンさんが嬉しそうに新聞を読み返している。
「そうなるといいですね。」
セオにもクラウスにも早く無事に帰ってきて欲しい。もちろん討伐部隊の全員で。
今日で冬の1月も20日だ。変わらない穏やかな毎日で『やっと』?、それとも『もう』?
予定通りだったとしても10日後には帰ってくる。
お休みを貰うこともノートンさんに相談済みだ。
日を追うごとに少しずつ寒くなって来て、クラウスと再会できる日が確実に近づいてきた。
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