迷子の僕の異世界生活

クローナ

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迷子になりました

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1日目のクラウスの話①



クラウスは昨夜遅くに宿屋に戻ったため、今日は休みと決めて昼近くにゆっくり起きて下の食堂に食事をとりに行った。

ここに落ち着いて随分経つが今日はやけに慌ただしい。
聞けばいつも宿屋と食堂を上手く回しているヘレナが体調を崩して実家に帰ったと言う。
長居しては邪魔だろうと自分の使った食器を流しに持っていき、さっさと部屋に戻って二度寝をする事に決めた。


扉を叩く音で目が覚める。昨日までの疲れが随分溜まっていたみたいだ。

扉を開けると宿屋の息子のビートからマートが呼んでると言うのでそのまま出た。

「またそんな格好で!」

部屋の椅子にかけてあった俺のシャツをとりにビートが部屋に入る。
行動がヘレナにそっくりだ
それにかまわず下へ降りれば見慣れない奴と目が合った。

この辺りでは珍しい黒髪。色白の小さな造りの顔にはひときわ大きな黒い瞳があって小さな赤い唇をぽかんとあけてこちらをじっと見ている。
一瞬女かと思ったがマートの口振りに男だと確信する。だけどもだ。

「登録は成人からだ。知ってるだろう。」

どう見たって子供だ。背も低いが体だってかなり細い。そもそもこんな小綺麗なやつがなんでこんなとこにいるんだ。
それでもマートが「18だから大丈夫」と言う。

これで18?女でもかなり低いほうじゃないか?
近付いてみてもやっぱり小さくて驚く。
ギルドの登録には水晶でステータスを確認するから嘘はつけない。

「登録時に嘘はバレるぞ?」

と目の前の子供に尋ねたら大きな黒い瞳をさらに大きくしたあと、ギルドの受付がするような不快ではない作り笑いを浮かべ自己紹介をしてきた。

一瞬で大人の雰囲気をまとった目の前の子供に目が釘付けになる。
見つめ過ぎて黒い瞳が揺らぐのに気づき慌てて目を逸した。

マートはヘレナのいない分をこの子供に働いてもらうという。仕方ないので言われた通りギルドへ連れて行く為に1度部屋へ戻って上着と鞄を身に着けた。


……それにしてもあんなのギルド登録させて大丈夫なんだろうか。
どこかの貴族の令息だろうか。身なりもいいし言葉遣いも丁寧でこれまで働いた事なんてなさそうだ。

……まあギルドの水晶でわかるから駄目ならだめで俺には関係ないか。その時はマートの依頼を別の奴にやらせればいい。

そんな事を考えながら下に降りればさっきの子供………トーヤが変わらない格好で待っていた。

「僕これしか持ってません。……だめでしょうか。」

どこか変なのかと困惑してる。確かにおかしくはない、おかしくはないがなんと言うか華奢な手足がやけに庇護欲をそそりこれでギルドに行ったら悪目立ちしそうだ。
鞄の中から認識阻害のマントを出してトーヤに着せるとフードを目深に被せた。
これでよし。

ここからギルドまでは少し歩けばすぐだし一本道だ。
あっという間にギルドについてトーヤを振り返れば白い肌を蒸気させて息をあげていた。歩いている間考え事をしていたので小さなトーヤが走ってついて来てたことにここまで気づいてなかった。
単独行動が長すぎて配慮に欠けた自分を反省しつつギルドの扉を開ける。

本来ギルドを利用するのは単発の依頼を受けるいわゆる冒険者が多い。
マートの様な店の仕事は依頼書の提出だけで終わるので冒険者家業をしている奴以外は登録時にギルドに来るだけだ。

中に入るとすぐに顔馴染みの奴に声を掛けられた。俺と同じAランク冒険者のチェイスだ。

すでに仕事あがりらしく片手に酒の入ったグラスを持って俺の肩に手を掛けてくる。
こいつは冒険者としては優秀で名が売れているがそれ以上に男女かまわず手が早いので名が知られている男だ。一応最低限の常識は備えているらしいが成人相手にはあまり関係ないらしい。

大丈夫トーヤには気付いてない。

マントを被せといて良かったと何故かさっきの小さく息を吐いて呼吸を整えていたトーヤを思い浮かべた自分に少し戸惑った。 


ギルドの登録時に何かわかるかと期待したけどトーヤに対しての謎は深まるばかりだった。

わかったのは年齢が申告通りだということだけだ。

家名もあるらしいが必要ないと言うし文字も読めないみたいだ。
ナイフもろくに扱えないでこんなひょろいのが18になるまでどこでどうやったら生き残れるんだ。

……どこぞの貴族にでも囲われてたとか?

とにかく登録できるならこんな所からさっさと連れて戻るだけだ。
受付嬢のソフィアを急かしてマートの仕事も受理させた。

そのソフィアに「明日ちょっと顔出しなさいよ!」と腕を引っ張られ小声で伝えて来た。
トーヤには内密のようだ。

「なんで俺が来なきゃいけないんだ」

「あんたが連れてきたんでしょ!」

と掴んだ腕をギュッと掴まれた。さすが冒険者上がり、地味に痛い。
渋々了解するとトーヤに再びフードをかぶせて宿屋へ戻る。

しばらく歩いてから行きでの事を思い出し立ち止まるど背中にポスンとトーヤがぶつかってきた。

すでに息が上がっていてやっぱり速かったかとゆっくり歩いてみる。
それでもまだ速いみたいだけど俺もこれ以上はゆっくり歩けないから仕方ないだろう。

トーヤの息が整う頃宿屋に着いた。





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