迷子の僕の異世界生活

クローナ

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迷子になりました

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俺の隣にジェリー、正面にビート。ビートの隣にマートが座り、クラウスは少し離れてカウンターに座った。

夕飯はスープにパン。それから茹で野菜のサラダにローストビーフによく似たお肉がでてきた。

「今夜はトーヤの歓迎会だからな、さあ召し上がれ?」

みんなが座ったところでマートが仰々しく手を広げ食べるのを促してくれた。

「ありがとうございます。いただきます」

せっかくなのでお肉からいただく事にすると見た目を裏切らない美味しさだった。
口の中に肉の旨味がいっぱいに広がる。

マートがにやりと笑って「うまいだろ」
と言うのでコクコク頷く。

「トーヤ口に入れすぎだろ」

ってビートに苦笑された。だってひと切れがすごく大きいんだもん。
俺がもぐもぐしてるうちにビートはあっさり咀嚼して次のお肉を口に運んでいた。

食事をとりながら明日からの俺のやるべき仕事の説明をしてもらった。

でも今日は夕飯の片付けをしたらもう休んでいいらしい。



「サイズが合うかわからんがとりあえず明日の着替えに使うといい。」

マートが白いシャツとカーキの七歩丈くらいのパンツの着替えと下着を二組とタオルを出してくれた。さすが宿屋の主人!着の身着のままだからどうしようかと思ってた。

「ありがとうございます。」

「それから部屋はクラウスの隣のシングルを使ってくれ。」

「え?だめですよ、お客さんが使うところじゃないですか。寝れるだけでありがたいんだから物置とか食堂のはじっことかで貸してもらえば十分ですから……」

「それも稼ぎのうちだからいいんだよ。シングルはいつも空いてるから気にしないでいい。隣はクラウスだから安全だしな」

マートが「なあ?」とクラウスを見て相槌をもとめたが彼の返事はなかった。



「じゃあ俺はジェリーとシャワー行ってくるから終わったら呼びにくるからまた後でな」

すでに眠そうなジェリーと手を繋いでビートがシャワーに行ってるうちに後片付けをする。

俺は食堂の全部のテーブルを拭いてから厨房の片付けの手伝いに入り食器を洗いながら改めてお礼を言った。

「得体のしれない僕を雇ってくれてありがとうございます。橋でビートに声をかけてもらえなかったら今頃こんな風にしていられなかったと思います。」

「うちも助かるよ。大丈夫っつって嫁を実家に帰しといて心配かけさせる訳にはいかんしな。トーヤこそ良かったのか?迷子なんて言ってるが家族が心配しちゃいねぇか?」

マートは明日の仕込みの手を止めて俺をじっと見ていた。そう言えばさっきは何も聞かれなかったのは子供たちの前だったからかな。

「僕ここに来るまで独りで暮らしていました。だから心配する人もいないのでマートさんの所で働いてる間にこれからどうするか考えてみます。……甘えてすみませんがよろしくお願いします」

「言ったろ?困った時はお互い様ってな。うちも困ってるんだからトーヤだけが甘えてるんじゃないさ。こっちこそ暫くの間ヨロシクな。」

そう言って大きな手で俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でてきた。力が強くて首がグネグネするくらいだったけど小さい頃にいた養護施設のおじさんがしてくれたのを思い出して嬉しくなってしまった。


「シャワー空いたよ~」

と髪から雫をポタポタ垂らしながらビートとジェリーが出てきた。

「わ、こら!ベタベタじゃね~か、風邪引くぞ!」

「だっていつもはかーちゃんが……」

とビートが言わないように気を付けてたのに思わずお母さんの事を口に出してしまったようで慌てて自分の口に両手をあて、それに気付いたマートもはっとしてジェリーを見たけれど心配された当の本人はてとてと俺の所まで歩いてくるとにこぉっと笑って

「にーちゃふいて」

と甘えてきた。ジェリーの可愛いさにメロメロになりそうだ。

「かしこまりましたお嬢様」

俺も急いで手を拭くとジェリーを抱き上げて食堂の椅子に座らせてタオルを受け取り柔らかい髪をふいてやる。
ビートは向かい側に腰掛けて自分でガシガシふきだした。

「ビートもやる?」

と聞けば

「俺はいつもこのぐらい自分でやってるからへーきだし。」

と口を尖らせる。こっちも可愛い。

「トーヤって昼間も思ったけどやっぱりそういうの慣れてるのか?」

とビートが聞くので「まあね」と答えながら風呂上がりのドライヤー待ちの小さい子らを順番にタオルドライしてたのを思い出す。ドライヤー、こっちにはないのかな?

ジェリーの細い髪はあっとゆうまにふわふわに乾いて仕上げにブラシで整えたらそれがいつもの終わりの合図なのか椅子に立ち上がると俺の首にぎゅ~っとしがみついてきた。
どうやら抱っこのおねだりみたい。

抱き上げて「ねんねする?」と聞けばこくんと頷いて体を預けて来たので背中をトントンしながらゆらゆら揺らしてやるとすぐに腕の中から寝息が聞こえてきた。

「もう寝ちゃった」

「ジェリーは寝るの早いんだ。」

ビートがジェリーの顔を覗きこんで優しく笑った。

「ありがとなトーヤ。」

マートがジェリーを俺から受け取り部屋に寝かせにいくみたいだ。

「トーヤはもう上がっていいぜ、部屋はわかるか?シャワーも今なら空いてるから使うといい。明日朝から忙しいからしっかり眠れよ」


「わかりました。ありがとうございます」

「おやすみトーヤ」

「おやすみビート」

ビートが小さく手を振ってマートと一緒にジェリーを連れて食堂を出ていった。

カウンターでゆっくりお酒を飲んでいたクラウスが

「俺はここにいるからシャワー終わったら声かけてくれ」

と言った。

「わかりました。」

俺のあとに使うのかな?じゃあ急がなくっちゃ。

昼のうちにビートがシャワーの使い方も教えてくれていた。
同時に3人くらい使えるけれど大抵外に使用中の札を下げて他の宿泊客と被らないようにするらしい。

俺は部屋に行くと借りた着替えの中からタオルと着替えを持っていそいでシャワーを浴びるとクラウスに声をかけて部屋に戻った。
悩んだ末に着替えを重視のため一度来たシャツとズボンを脱いで下履き1枚でベットに潜るとあっとゆう間に眠ってしまった。




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