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迷子になりました
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しおりを挟むプレートに浮かび上がる文字を見ながらお姉さんが俺に質問を始めた。
「名前は?」
「冬夜です」
「年齢は?」
「18です」
「出身地は」
「わかりません」
「スキルは?」
「わかりません」
「魔法はどうかしら」
「わかりません」
「犯罪歴は?」
「ないと思います」
答える度に水晶がほわんと光る。キレイだなぁ
確信持って答えれたのは名前と歳と犯罪歴だけだった。
お姉さんが困った顔をする。
「クラウス、この子どうしたの?」
「知らん、俺が起きた時にはマートの宿屋いたんだ。なんだ、登録できないのか」
「うーん、とりあえず年齢も成人してるし犯罪歴もないから最低条件はクリアよ。トウヤ、少し他の質問してもいいかしら?」
「はい」
あ、お姉さん『トウヤ』ってよんでくれた。
「まず最初の質問ね、名前はトウヤでいいの?」
「はい。」
「ここにあなたの情報が出てるのわかるかしら。」
お姉さんはそう言ってガラスプレートみたいな物に文字が浮かんだのを見せてくれたけれどさっぱりわからない。
「ごめんなさい、わかりません。」
「いいのいいの、じゃあ……次はあなたの名前なんだけど家名が入っているのだけど登録名は『トウヤ』でいいのかしら?」
「はい。」
「出身地なんだけど……こっちでもわからないのよね。一応文字が出てるけど読めないの理由はわかるかしら?」
「僕にもわかりません。気付いたらここにいて……その……家への帰り方もわからなくて。」
『日本』とか書いてあるのかな?
「……迷子……か、う~~~ん。」
質問の度にお姉さんから笑顔が消え徐々に眉間のしわが深くなる。
「ギルドとしてはトラブルを避けたいの、あなたにとって話したくない事もあるかもしれないけれどもう少し質問してもいいかしら。」
「大丈夫です、ギルドに登録して働かないといけないので。」
「じゃあ聞くわね、あなたは誘拐された挙げ句放り出されてしまい帰り方がわからない貴族の令息とかだったりする?」
「───いえ、ただの迷子です。」
一瞬ふざけてるのかと思ったけれど、お姉さんの表情は至極真面目だ。
「本当に?」
「本当です。」
「やっぱり嘘は言ってないのよね。」と溜息交じりに水晶をチラリと見た。
何それ嘘発見器ですか⁉
「いいならさっさと登録してマートの依頼もそいつに受けさせてくれ、そいつが戻らないと店の仕事が回らないらしい。」
「わかったわ、じゃあ登録するわよ。」
クラウスの急かすような物言いにお姉さんは仕方ないと言った風に応えながら手をかざすと、水晶がキラリと光を放ったかと思えば小さな金属のプレートが現れた。
「ギルドタグよ、名前と年齢とギルドランクが入っているわ身分証にもなるからなくさないでね。」
と、小さなプレートに革紐を通して渡してくれたので首から下げて眺めてみた。
なんか文字が書いてあるけどやっぱり読めはしない。
「しばらくは『とまりぎ』の仕事よね?ギルドの細かな説明は次の仕事を探す時に改めてしてあげるわ。」
お姉さんにふわりと笑顔を向けられお礼を言う俺はきっと顔が赤いと思った。
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