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迷子になりました
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しおりを挟む俺がここに来たと認識してから歩いたのは橋からマートの宿屋までしかない。
クラウスに連れられて歩くギルドまでの道は物珍しくてついキョロキョロしてしまう。
やっぱり映画で観る中世ヨーロッパの街並に似てる感じた。日本の都市に比べたらこっちのほうが親しみが持てる。
お店だろう所には看板が架かっているけれど文字は読めない。
言葉は通じるのに変なの。
ギルドまでは歩くと15分位だった。
ただその間余所見とリーチの差で俺はずっと軽いランニング状態だったけど。
少し息が上がったけれど汗はかいていないというかむしろ体がひんやりしてくる。なんでだろ。
大きな観音開きの木戸をくぐり中へ入ると天井の高いホールになっていて、奥にカウンターが見えた。
左手にはテーブルがいくつかあって何人か座って話してる。
入ってきた俺達に気づいた一人が声をかけてきた。
「ようクラウス、今日は来ねぇんじゃなかったか?」
クラウスと同じくらいの背丈のその男は目の醒めるような赤色の髪をして瞳は紫色だ。
……派手な人だな。
カラフル過ぎて見慣れないないけれど変ではない。むしろ格好イイ。服の上からでもわかる鍛えられた体に金属の防具を着けていた。
「『とまりぎ』のマートに頼まれてちょっとな。悪いが急いでるから話はまたにしてくれ」
クラウスがそう言えば相手もそうかとすぐに他の人と話しだした。
マートの宿屋の名前『とまりぎ』なんだ。戻ったら看板見てみよう。
俺はクラウスにカウンターに案内された。そこは市役所とかの受付みたいで4つの窓口があった。
「あらクラウスこんな時間に何かしら?昨日遅かったから今日は仕事しないのかと思ってたわ。」
「『とまりぎ』のマートに頼まれて仕事の依頼だ。あとその仕事をコイツに受けさせたいから登録も頼む」
「あら、新規登録なの?わかったわ。依頼は隣のカウンターでお願いね。ちょっと~誰か依頼受付頼むわ~。」
明るい声に良く似合うピンクの髪をきれいにカールさせて薄い水色の瞳のやっぱり派手で美人なお姉さん。なにげに俺より背が高い。
奥の方へ声をかけて俺を椅子に座るよう示し向かい側に同じく座ると制服で抑えきれない見事な胸が目の前だ。刺激が強すぎるよお姉さん。
「ギルドへようこそ。今から登録するから悪いけどそのフード脱いでくれるかしら。認識阻害の魔法がかかっててあなたがちゃんと見えないのごめんなさいね。」
と言った。
「魔法⁉」
思いがけない言葉にびっくりして大きな声を出してしまった。すごい!魔法のある世界なんだ。
そんな俺を気にせずお姉さんが続ける。
「そうよ、それ迷宮品かしら?登録するのにあなたの顔をみない訳にはいかないからフードを取ってちょうだい。」
「これクラウスさんにお借りしたのでそんなものだなんて知らなくてすみません。」
俺は慌ててフードを脱いだ。道理でお姉さんの視線が俺を捉えきらなかったわけだ。
「あら可愛いわね。じゃあとりあえずこれ書いてくれるかしら。」
と紙を寄越した。駄目だな、やっぱり読めない。
「あの……すみません、文字が読めないんですが登録できませんか?」
「いいえ大丈夫よ?じゃあ私が聞くから答えてもらえるかしら。」
「はい、よろしくお願いします。」
良かった読めなくても馬鹿にされなかった。この世界には文字が読み書きできない人結構いるのかな?勉強すれば俺にもできるだろうか。
「じゃあいつもは後からなんだけど……」
となんだかキラキラ光る拳大の水晶のような物と小さなナイフを差し出された。
「これに血を少し貰えるかしら。」
「え……」
血?意味がわからない。思わず隣のクラウスを見る
「それに血を垂らすとお前の必要最低限の情報の名前と年齢。あと犯罪歴がわかる。嘘はつけないって言ったろ?」
ほら見ろって感じでクラウスが口の端だけ上げた。
「違う、あの……そうじゃなくてナイフで自分で切るなんて怖くてできません。」
当たり前だ。うっかり包丁で指を切ることがあってもわざと切るなんてやったことがない。自分で切ったりしたらどんだけ血が出るかも分からないのに
だから『は?なに言ってんのこいつ』みたいな顔二人でしないで欲しい。無理なものは無理だ。
「あの……針、針はないですか?それならなんとか出来ると思います!怖いけど……」
必死にお姉さんに訴えてると不意にクラウスに手を取られた。
そして俺がそれを認識したときには既に小指から血がひとしずく零れていた。
「痛いか?」
「だい…じょうぶデス」
あまりの早業に手品みたいだ。
「ふふっ良かったわね、じゃあここに垂らして?」
水晶に血を垂らすとホワンと白く輝いて、同時にお姉さんの手元のガラスのプレートも光ってそこに文字が浮かんだ。
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