迷子の僕の異世界生活

クローナ

文字の大きさ
上 下
5 / 333
迷子になりました

5

しおりを挟む



長身から伸びる長い手足に鍛え抜かれた胸板と腹筋。彫刻のような見事な上半身を惜しげもなくさらしあくびをしながら肩を超え長く伸びる輝く金髪を掻きあげると澄んだ空の蒼色をした切れ長の瞳が覗く。

テレビや映画でしか見たことのないイケメンにしばらく見惚れてしまった。

彼は後ろから来たビートからシャツを受取ると渋々身につけながらマートに話しかける。

「なんだよマート、せっかく寝てたのに。」

「悪ィな、ちょっとソイツ、トーヤっていうんだがギルド連れてって登録してきて欲しいんだ。仕事依頼しようと思って。」

マートに言われたクラウスは俺をチラリと見た。

「登録は成人からだ。知ってるだろう。」

とすぐにマートに向き直る。

「そんな事は言われなくても知ってる。大丈夫だトーヤは成人越えてるから。18歳だ。」

クラウスは少しだけ近づくと頭からつま先までゆっくり俺を見た。

すごい、マートより更にでっかい。2メートルは越えてるのかな?

「登録時に嘘はバレるぞ?」

ビートがニヤニヤ笑ってるコンニャロ!覚えてろ!
あとちょっと前にコイツをイケメンと思った俺を返せ。

でもこの世界で生きる為には仕方ない。

「はじめまして。僕は冬夜と言います。間違いなく18歳なので大丈夫です。ギルドまで連れていって下さいよろしくお願いします」

18年間で身に着けたいい子ちゃんスマイルで胸の内なる不満を押さえつけ挨拶した。

クラウスはそんな俺を暫く凝視した。

「こんな小さいのになにを依頼するんだ?」

ちいさい言うな!

「ヘレナのいない間手伝いを頼もうと思って。あ、ついでに依頼の届けもクラウスに頼んでいいか?」

クラウスは面倒くさそうに溜息をつくと

「わかった、準備してくる」

と言って部屋へ戻って行った。

「かっこいいだろクラウス。父ちゃんの『昔なじみ』?ってやつらしくてうちを常宿にしてくれてるんだ。すげぇ強えんだって!」

「ふーん。」

「昔は王都の騎士団にいたってとーちゃんが話てたけどな。剣術大会で優勝した事もあるって言ってた」

ビートが瞳をキラキラさせながらクラウスの事を教えてくれる。尊敬してるのがわかる。強くてイケメン、羨ましい。

クラウスはさっきまでのラフなシャツとパンツの上に1枚ジャケットを着て荷物を持って降りてきた。編み上げブーツもにあってる。

「じゃあ行くか。」

クラウスの呼び掛けられそばによる。……からの凝視。

ん?なんだろ?

「よろしくお願いします?」

合ってるかな?

「お前今からギルドいくのにその格好なんとかならないか?」

ギルドに行くのに服装大事なんだ。でも無理だ。

「僕これしか持ってません。……だめでしょうか」

そんなに変な格好はしていないと思う。

シンプルな白い長袖のシャツに黒のスキニーだ。
買い物に出たときは秋晴れの空で日中はまだ少し日射しが暑い。そんな日に丁度いい格好で家を出たのだから上着1枚持ってはいない。

「悪くはないが良くもないな」

そう言うとクラウスは持っていた小さなリュックみたいな鞄から大きな黒い布を1枚取り出した。

「わわっ!すごい!」

明らかに容量がおかしい。ラノベ名物マジックバックかな?知っていても実際に見ると驚くもんだな。ちょっとはしゃいでしまった。

でもそれは布じゃなくて俺がすっぽり収まるマントだった。

「とりあえず今日だけこれを着ておけ」

そういってマントをきせてフードを目深に被せて来た。

「ありがとうございます。」

「じゃあ行ってくる。」

「おう頼むな。で、早くもどってくれな~。」

マートが手をヒラヒラ振って見送ってくれた。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

気付いたら囲われていたという話

空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる! ※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

【完結】攻略は余所でやってくれ!

オレンジペコ
BL
※4/18『断罪劇は突然に』でこのシリーズを終わらせて頂こうと思います(´∀`*) 遊びに来てくださった皆様、本当に有難うございました♪ 俺の名前は有村 康太(ありむら こうた)。 あり得ないことに死んだら10年前に亡くなったはずの父さんの親友と再会? え?これでやっと転生できるって? どういうこと? 死神さん、100人集まってから転生させるって手抜きですか? え?まさかのものぐさ? まあチマチマやるより一気にやった方が確かにスカッとはするよね? でも10年だよ?サボりすぎじゃね? 父さんの親友は享年25才。 15で死んだ俺からしたら年上ではあるんだけど…好みドンピシャでした! 小1の時遊んでもらった記憶もあるんだけど、性格もいい人なんだよね。 お互い死んじゃったのは残念だけど、転生先が一緒ならいいな────なんて思ってたらきましたよ! 転生後、赤ちゃんからスタートしてすくすく成長したら彼は騎士団長の息子、俺は公爵家の息子として再会! やった~!今度も好みドンピシャ! え?俺が悪役令息? 妹と一緒に悪役として仕事しろ? そんなの知らねーよ! 俺は俺で騎士団長の息子攻略で忙しいんだよ! ヒロインさんよ。攻略は余所でやってくれ! これは美味しいお菓子を手に好きな人にアタックする、そんな俺の話。

悪役王子の幼少期が天使なのですが

しらはね
BL
何日にも渡る高熱で苦しめられている間に前世を思い出した主人公。前世では男子高校生をしていて、いつもの学校の帰り道に自動車が正面から向かってきたところで記憶が途切れている。記憶が戻ってからは今いる世界が前世で妹としていた乙女ゲームの世界に類似していることに気づく。一つだけ違うのは自分の名前がゲーム内になかったことだ。名前のないモブかもしれないと思ったが、自分の家は王族に次ぎ身分のある公爵家で幼馴染は第一王子である。そんな人物が描かれないことがあるのかと不思議に思っていたが・・・

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

処理中です...