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第二章 アカデミー編

第57話 『大惨事は唐突に』

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 アレイをZ組のリーダーとする事を、半ばなし崩し的に決めたリク達は、再びアレイによって呼び寄せられたハーダル家の馬車に送られる形で、それぞれ帰路についた。

 店を出る前に、ナーストリアが『ちょっと待ってて!』と女性陣3人を呼び止め…何かが入った紙袋をそれぞれに手渡していたので、少し出発が遅れる事にはなったが、放課後すぐに酒場へと移動した為か、まだそれ程夜遅く…という時間ではないので、さしたる問題でもなかったのだが。

 道順的に、寄宿舎のミーリィが最初。東区域のルーカス、北区域の一般住宅街のイリスという具合に馬車はそれぞれの宿舎や家へと進み…最後にガーディ邸に停車した。

 リク、そしてシルヴィアの二人が馬車から降り。窓から顔を出してアレイが二人を見送るのだが…


「アレイ、悪いな。帰りも送ってもらっちゃって」

「気にするな。どうせ俺の家もすぐ近くなのだからな。では、疲れている所すまんが…明日までに俺達の訓練内容、考えておいてくれよ?」

「それは良いんだけどさ。一応、先生達に許可は貰わないといけないし…明日は早めに行って、ちゃんと話しておきたいんだけど。迎え、少し早めに頼めるか?」

「…成程、確かにそうだな。分かった、明日は30分早く来る事にする。…シルヴィアもそれで構わないか?」

「うん。じゃあアレイ君、お休みなさい。ちゃんと良いプラン考えておくね!」

「ああ、リク一人だとかなり不安だからな。宜しく頼む」

「さりげなく酷い事言うな!…じゃ、また明日な」


 Z組の皆には既に話したが、未だ他の生徒…そして担任にも二人が同棲同然の生活をしている事は秘密である。

 詳細を知れば、無駄に大騒ぎする者も出るかも知れない不安。それを危惧したアレイがこうして馬車で送り迎えをしてくれている好意に、リクは素直に礼を述べる。

 その言葉にアレイは快活な笑みを返すが、明日からの訓練内容を考えておく、という宿題をリクにさせる事はきっちりと念をおした。

 ただ、これはあくまでも自分達…生徒達だけで考えている事であり、まだ担任であるアルベルト達の承認を得た訳ではない。

 きちんと筋を通し、先生の承認を得る事は大切だろう、という事でリクとアレイの意見は一致し、明日の登校は早めに…と30分前の出発を決め、シルヴィアにも承諾を得る。

 その際、リクよりもシルヴィアに対し念入りにプラン構築を要請するアレイに、リクは思わず抗議の声を上げた。

 無論、アレイも本気でリクに任せておくのが不安な訳ではない。単に自分がリーダーの重責を背負わされた事の意趣返し…ほんのお返しである。

 家についてまで一悶着があったリクであったが、流石に本気で文句を言う訳にも行かず、去っていくハーダル家の馬車をシルヴィアと共に見送り…漸くの帰宅となったのだった。


-----------------------


 ハーダル家の馬車が到着するとほぼ同時に、ガーディ邸の正門まで出迎えに来てくれたマルと共にリクとシルヴィアは、リビングに着くなり…それぞれソファーに体を投げ出す様にして座った。

 初日から思いの他色々あった二人は、リスティアで最も気を抜く事が出来る『我が家』に戻った事で、その疲れがどっと押し寄せたようだ。

 ナーストリアの家…『リムラッドの酒場』で会議と食事をしてくる事は、アカデミーを出る前に予めマルに通信用魔具で連絡を入れていたのだが、思いの他二人の帰宅が遅かったのでマルは相当心配していたらしい。

 いつも以上にけたたましい足音を立てて駆けて来た姿に、リクとシルヴィアは若干の申し訳無さと、それ以上の嬉しさを感じたのだった。


「…遅くなるとのご連絡を頂いてはおりましたが、お二方共大変お疲れのご様子で御座いますね?一先ず、お飲み物をお持ち致します」

「……ああ。悪いな、マル。出来たら夜食も後で用意して貰いたいんだけど…」

「勿論構いませんが……リク様、お休みにならなくても宜しいのですか?明日もアカデミーは御座いますが…」

「それがね。明日から私達がやろうとしてる授業…っていうより、訓練かな?そのプランを考えなくちゃいけなくって…まだちょっと寝れないの」

「そういう事でしたら、リク様とシルヴィア様にご無理の無い範囲でお願い申し上げます。無論、ワタクシも全力でサポートさせて頂きますが…」

「大丈夫。何となくは考えたから……シルと煮詰める作業が大体だろうしさ。取り合えず…始めるか」

「そうだね。私も何となくだけど考えてはみたよ?リっくんの考えと合わせれば…きっと良いのが出来ると思うよ」


 帰って来るなりぐったりとした様子を見せるリクとシルヴィアに、マルは大急ぎで飲み物の用意へと向かおうとするが、駆けだそうとする銀色の背にリクが声を掛けた事で、これまた慌てて急停止する。

 そして、既に夕食を済ませて来た筈の主人から夜食の用意も頼むとの命に…マルは樽の様な体を大きく横へ傾ける…半分心配・半分不思議、と言いたげな動きで真意を伺う。

 明日が休日ならば、この後多少の夜更かしをしても特に問題は無いだろう。ただ、アカデミーの休日は週末の二日間と決められており…今はまだ週の頭だった。

 つまり、休みまでは残り4日ある。始まったばかりで慣れていない生活では、今日の様に疲れ切ってしまうのではないか…とマルは危惧し、先の問い掛けになったのだ。

 しかし…リクは笑顔で軽く右手を振って、心配無用と答えた。

 あくまでも、明日以降の方針の確認程度。それをシルヴィアと話し合うだけなのだから…大した時間は掛からないだろう、というのがリクの考えである。

 実際、アレイとミーリィ以外のクラスメート…ルーカス達の戦闘力はまだ詳しくは知らないのだから、明日それを見せて貰ってからでなければ、本格的なメニューを構築する事は不可能に近い。

 リムラッドの酒場で食事をしながら、大体のイメージをしてはいたリクは、やはり同じ様に考えていたと話すシルヴィアとお互いの意見交換を主にする事に決める。

 そして、納得したらしいマルが飲み物の用意を整える為にリビングを退出し……二人は並んでソファに座り直し、真剣に意見を交わし始めた。


「最初にアルベルト先生に許可を貰わないといけないけど、取り合えずは全員と模擬戦かな」

「うん……そうだね。皆がどの程度…って言うと失礼だけど、戦えるのかを正確に把握しないとね。何から鍛えて貰えば良いのか分からないもんね」

「俺とシルが組んで……皆には…そうだな、色々とコンビとか連携とか好きに試して貰いながら…ってのはどうだろ?」

「じゃあ、その動きとかを私達が分析して……それから、メニューを考えて…先生達にもう一回チェックしてもらう、って感じにすれば良いと思うよ?」


 やはりというか、二人の意見はあっさりと纏まる。

 そもそも、リク達はラルフとエリスの指導の下、地獄と言って差し支えの無い訓練漬けの日々を10年間続けて来たが…誰かに何かを教える、という事は初体験である。

 互いの苦手を教え合ったりという程度ならばやってもいたが、アレイ達にいきなり同じ様に自分達のこなして来た内容を提示したならば…まず間違いなく全員がついて来れないだろう。

 故に、先ずは全員の正確な戦闘力の把握が第一であり。その為には…全員を相手に戦ってみるのが手っ取り早いと、リクとシルヴィアの意見は一致したのだ。

 無論、自分達の考えをアルベルトとレジーナの二人…担任に確認の上、了承して貰った上で…とはなるのだが、恐らくは許可が下りるであろうとリクとシルヴィアは見ていた。

 今日の模擬戦で、至近距離からの闘気破砕砲オーラ・ブレイカーと、魔力円環法マナ・サークル魔力マナを全て注ぎ込んだ魔力破砕砲マナ・ブレイカーを受け止めたアルベルトの義手は、傍目にも無事とは言えない程破損…大破していたのを二人は目撃している。

 魔法銀ミスリル製な上、装填魔法チャージマジック等というとんでもない機能を備えた高度な魔法具の義手は、修繕にかなりの時間が必要になる筈だ。

 普通に生活する分には大丈夫であったとしても、間違いなく戦闘行為には耐えられない……ならば、その間は自分達の考えたメニューを中心に努力をしたいという申し出を却下される事は考えにくい。

 そして、マルが運んできた紅茶が3杯目になる頃、大体の方針を話し合っていたリクとシルヴィアは休憩を取る事にする。


「ふう……後は明日の朝、アレイに簡単に説明出来るように詰めておくだけかな?…シル、悪いけど俺、ちょっと風呂に入ってくるよ。ちょっと頭…休ませたい」

「もう…リっくんったら……良いよ、私はもうちょっと後で入るから…ここでもう少し案を考えて待ってるね」


 言うが早いか、リクは立ち上がり…浴場へとふらふらした足取りで歩き出す。本人が言うように、どうにも頭を使い過ぎたようで…相当に疲れたのだろう、たまらず気分転換を求めたのだ。

 その背を穏やかな笑みで見送るシルヴィア。考える事は元々彼女の担当、という事の多い二人だけにこういう状況には結構慣れている。

 ただ、最近のリクの入浴時間…もとい、入浴回数が段々とラルフの領域に近づいている様な気がしてならないのが、シルヴィアは若干心配だったりするのだが…

 兎も角、リクが戻ってくるまでに話し合った内容を書面に纏めておこうと、彼女は魔具の羽ペンを手に取り、文字を紙へ記していく。

 リスティアは流石に王都、と言うべきか…ライラックの村で使っていた手漉きの紙では無く、製紙を行う魔具で作られた…いわゆる『工業品』に分類される、品質の良い紙である。

 そして、彼女が手にする魔具の羽ペンは、魔力マナを流すことでインクに相当する物を生成し、文字を書く事が出来るなかなかの優れものだ。

 これもリスティアでは一般的に使われている物で、リクとシルヴィアは買い物の際に初めて目にした時、その便利さに驚き…田舎者を丸出しにしてしまい、少々恥ずかしい思いもしたのだが…

 シルヴィアはここまでの話し合いの要点を、頭の中で簡単に纏めた物をスラスラと書き記す。そして、マルが淹れ直してくれた温かいミルクティーのカップに手を伸ばそうとして…

 テーブルの上に置いたままになっていた、ナーストリアの紙袋に気が付いた。帰って来て殆ど間を空けずにリクと話し込んでいた為…すっかり忘れていたのだ。

 両手で持てるサイズの紙袋には、ナーストリアが書いたのであろうメッセージカードが添付されており…『私、ナーシャ作のこれを着れば間違いはないわ!』との丸い文字。


「……と、言う事は服、だよね?……何が間違いなしなのか分かんないけど、ナーシャが折角くれた物だし……って…………えええええっ!?な、な、何……これ…?」


 カードを読み、小首を傾げつつシルヴィアは袋を開いて中身を確認……して、思わず叫んだ。

 そこに入っていたのは………いやに丈が短い、そして何よりもやたらとスケスケな素材で作られた…真っ赤なネグリジェの様な何か。

 どの位スケスケなのかと言えば…広げて目の前に持ってきて見ると、普通に向こう側の壁や家財道具といった物が見えてしまう程である。

 シルヴィアが叫ぶのも無理は無い。ナーストリア謹製のそれは『どちゃくそエロいネグリジェ』とでも名付けたくなる…ある意味見事なシロモノだったのだ。


「な……な…なんて物をくれるのよナーシャぁぁぁぁッ!?」


 シルヴィア、再度の悲痛な叫び。今度はもう絶叫レベルだが…幸か不幸か、ガーディ邸は全館に渡り無意味なまでの防音が行き届いており、彼女の叫び声は比較的近くにある厨房のマルにさえ届かない。

 そのままリビングの床に倒れ伏すと、シルヴィアは煽情的極まりない服を抱えたまま…転げまわった。

 先程までの落ち着いた姿はどこへやら。混乱の極地に陥った彼女は頭から湯気を噴きだす程に赤面し…遂にはリビングの壁に激突して、漸く転がるのを止める。


「どどどどど………どうしよ……これ……こんなの絶対リっくんには見せられないよぉ……………うぅ~」


 散々転げまわった事で、まだ新品同様だったアカデミーの制服が皺だらけになってしまったシルヴィアだが……時間の経過と共に、僅かだが彼女は落ち着きを取り戻していた。無論、まだ行動も思考も乱れては居る。

 その証拠に、見れば見る程にとんでもない服を袋にしまうでも無く、赤面し……ずっと抱えたままになっているシルヴィアは、どうしてもこのネグリジェが気になってしまい…じっと見つめていた。普段の彼女にはまずあり得ない行動だ。

 当然だが、この服を着てリクの前に立つ事など…彼女には絶対に出来ない行為だろう。ただ、ナーストリアのメッセージカードに書かれた言葉がどうにも頭から離れない。

 意を決して、これを身に付けた煽情的な姿を見せれば…リクも自分の事を一人の女性として見てくれるのだろうか?

 幼い頃から抱き続けて来た『想い』を、一人の大人の女性として認識し始めたばかりのシルヴィアには、正直分かりかねる事だ。それ故に……興味や期待といった感情が入り交じり、再び彼女は混乱する訳で。

 とうとうシルヴィアは、制服を脱ぐと…下着の上からネグリジェを身に付け、リビングに据え付けられた大きな姿見の前におずおずと立ってしまった。


「あううぅぅ…………や、やっぱり無理!全部透けちゃってるし……下なんて殆ど見えちゃってる……恥ずかしい」


 それは彼女が想像したより遥かに…えらいこっちゃな格好になっていた。

 ナーストリアが作ったネグリジェは、奇しくもシルヴィアの体にほぼピッタリのサイズだったが、やはり異常な丈の短さが気になる。そう…殆ど丸見えになってしまうのだ。

 そして上は言わずもがなのスケスケっぷり。そこに破壊力抜群の大きく実った果実、といった感じである。

 これではアカデミーの新入生ではなく、歓楽街の新人の方が合っている…と言われても仕方がない。予想を超える恥ずかしさに、姿見に映る自分共々…真っ赤になって固まるシルヴィア。

 そこへ……最悪のタイミングで帰ってきたのは…


「ふぅ~……大分頭がすっきりしたよ。お待たせ、って……シル………!?」

「……………ふえっ!?…………………………きゃああああああッ!!!!!」


 唐突に意識の外から掛けられた声に、シルヴィアは後ろを振り返る。そこには……バスタオルを首に掛け、シャツと短パンだけというラフな風呂上り姿のリクが硬直していた。

 そして…彼の顔が先程まで姿見に映っていた自分と同じか、或いはそれ以上に真っ赤になっている事に気づき……漸く、今自分が何を着ていたのか、という事に思考が行きつき…

 シルヴィアは今日一番の絶叫を打ち上げると、その場にへたり込み…両手で必死に自分の体を隠すのだった。


「な、なんて格好してるんだよ!?……あ、ご、ゴメン!!取り合えず俺、出て行くから…」

「み、み、み………見ちゃダメぇぇぇぇぇッ!!!【強化版ブーステッド裁きの光ジャッジメント・レイ】ィィィッ!!!」

「え!?ま、待ってくれシル!!それだと俺、ここから動けなく……ダメだ!?全っ然聞こえてない!?」


 先に我に返ったのはリクの方だった。暫くシルヴィアから目を離せなくなってしまっていたが、見てはいけない!と謝罪の言葉を口にし、慌ててリビングから出て行こうとするが…

 混乱と恥ずかしさが限界突破してしまったシルヴィアは、反射的に麻痺効果のある裁きの光ジャッジメント・レイを室内で行使してしまった。

 それもご丁寧に強化版で放ってしまい……あまりに予想外の行動に、流石のリクも体の自由を奪われてしまう。これでは出て行くどころか…顔を横に向ける事も出来ない。

 これではどうしようもない…と、せめて目を閉じるリク。一方、自分の魔法で自分を更に窮地に追いやってしまい、縮こまって震えるシルヴィア。

 大惨事のリビングは、大きすぎる魔力マナの動きに、何事かと夜食を乗せたトレイを片手に厨房から駆けて来たマルによって、シルヴィアが制服を着せられるまでの間…収集がつかなかったのである。

 だがそんな怒涛の混乱の中。リクは幼馴染の少女が、大人の女性となっていたのだと今更ながら実感していた。ちょっと不謹慎だと思いつつも……素直に彼女の事を綺麗だと感じたのだ。

 だが、口にはしない。絶対に出来ない。

 そんな事を言えば、きっとシルヴィアは今以上に混乱し……下手をすれば館が吹き飛んでしまう程の魔法を使いかねない。

 今はそっとして……落ち着いて貰う事が先決と、リクは痺れる体と格闘しつつ、マルにシルヴィアの為のミルクティーをもう一度淹れてくれるよう頼むのだった。


-----------------------


 結局、泣き出す寸前まで精神的に追い込まれたシルヴィアを、リクは何とか宥めて落ち着かせ……風呂にでも行って少し休むように、と提案した。

 シルヴィアはもごもごとまだ何かを言いたげにしていたものの…マルに伴われる形で、浴場へと向かっていく。リクの言う通り、一度頭をリセットした方が良いと思ったのだ。

 本当なら、さっきの出来事もリセットしたい位の二人である。一人になったリクは、一度大きく深呼吸をして…シルヴィアが途中まで纏めていた、訓練内容と記した紙を手に取る。


「……まだ心臓がバクバクしてる。ホント……驚いた……けど、忘れなきゃ…な、うん」


 丁寧な字で、殆ど完成近くまで纏め上げられた文章に目を落としつつ、リクは一人呟く。シルヴィアの為にも今夜の事は忘れた方が良い…と頭では理解している。

 しかし…あまりに強烈な光景が、未だにリクの目と頭にしっかりと焼き付いて離れない。

 今夜は間違いなく眠れない……覚悟を決めたリクは、両手で頬をパン!と張って気合を入れ、出来る限り精神を落ち着け…明日からのプランを仕上げるのだった。

 一方、大浴場の女湯では…


「……うぅ~……は…恥ずかしい……戻ったら…リっくんにどんな顔すれば……あううぅぅ~…」


 湯あたりしたかの様に真っ赤なシルヴィアが岩風呂に沈み、悶えていた。

 見られた事が相当に堪えたのだろう。別に嫌な訳ではないが、兎に角恥ずかしくてたまらない。こちらも未だに心臓が早鐘を打ち続けている状態であった。

 そして…とんでもない恰好をしていた事をどう説明し、どうやって彼に接すれば良いのか…と全く回らない頭で必死に考えつつ、温かいお湯に沈んでいった…

 怒涛の夜はそうして更けてゆき…翌朝、結局完徹してしまったリクとシルヴィアは、迎えに来たアレイに『…徹夜までさせてしまうとは悪かった』と激しい勘違いをされる羽目になる。

 完全にやらかした二人は、お互いに疲れた笑みを向け合い…ハーダル家の馬車へと乗り込む。

 いよいよ始まるZ組全員での訓練……その初日にしてはあまりにもしまらないスタートであった。


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