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17 妖精と果物とアルコール
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ハインデル様に御来店いただいてから、それなりに・・・ほんっとそれなりにだけど、
お客様に来ていただけるようになりました。
もう、足を向けて寝られません・・・方向はわかりませんが・・・って駄目じゃん・・・
そうすると、俺、フィリアン、ハンティの3人が、てんやわんやになる日も出てくるわけで・・・
今日がそんな忙しい日でした。
うちの店でお茶会をする・・・そんな無謀なお嬢様・・・
ハインデル様と一緒に来てくれた御令嬢主催です。
こんな小さな店でやらんでも・・・と思う小市民な俺なんですが・・・
しかも、予約無しの飛び込み!
4つのテーブル席を一つに寄せて・・・
やりたい放題の貴族様・・・
しか~し、こんなビジネスチャンスは逃せない!
一応、常連のお客様もいることを伝え貸し切りにはしなくていいという言質を頂きました。
「このようなお茶会を私の店でするとは想定もしてませんで、殺風景なテーブルで申し訳ございません」
一応謝っておく・・・
こっちも一応プロだからこんな状況でもご満足いただけるようにするだけだ!
もう・・・慌てて用意しましたよ・・・高級茶葉・・・
「本日ご用意いたしましたのはダージリン セカンドフラッシュでございます。」
500グラム3万円だ!どうだ参ったか・・・と心の中で叫ぶ・・・が、
これって誰だよってくらい丁寧な接客・・・
そりゃそうだ!麗しのお嬢様方が11人!
店内を値踏みするかの視線・・・
念入りに蒸らし時間を計算しての紅茶をカップに注ぎお出しする。
カップなんて、この為だけにマイセンのブルーオーキッドを2組も買いましたさ・・・
「あら、センスのいいカップね」「模様も美しいわ」etc etc
はい!お褒めの言葉を頂きました!
お茶の方も、帰りに茶葉を持って帰りたいとの事で500グラム毎に瓶に詰め替えして販売する事に・・・
500グラム銀貨5枚での販売とさせていただきました・・・
倍とまでは言わないが、かなりのボッタクリである・・・のに
「これが銀貨5枚ですって!?金貨じゃなくて?」
・・・とのたまいやがりました・・・
金銭感覚の狂ったお嬢様だ・・・旦那になる人が泣くぞ・・・ほんとに
お菓子の方は、手軽に食べられるスコーンにブルーベリージャムを添えて、そしてガトーショコラをご用意いたしました。
この状況で踵を返さない勇敢な常連たちはカウンターの方で対応
この状況の物珍しさに逆に入ってくる野次馬新規客・・・
この野次馬が無駄に多い・・・
ちったぁ空気読め・・・
お茶の継ぎ足し提供はフィリアンに任せた・・・
ハンティも頑張ってくれてる・・・
それでもほとんどの常連が軽食とドリンクを早々に食して帰っていく・・・
ちなみに勇者達も「出直すよ・・・」と言って帰っていった・・・
そんな怒涛の展開もお菓子をあらかた食べ終えお茶会も終わりを迎える。
そのタイミングを見計らってお嬢様方全員に瓶入りの茶葉を手提げ布袋に入れて持たせる。
「今日は無理を通していただきありがとうございました。みんな満足いたしましたわ」
そう言って小袋を取り出しそのまま渡してくる。
「ありがとうございます。」
他のお嬢様方の茶葉の代金もここに含まれてるらしい
お茶会の手土産って感覚なのかな?
「また来させていただきますわ、そうそう、我が家の方にも茶葉を卸していただけないかしら?」
この状況で断ることができようか・・・
「かしこまりました。いかほどご入用でしょう?」
「後でうちの者を使いに出します。それでいいかしら?」
まぁ、来てくれるってのなら大歓迎だ・・・置きに来いって言われるとなかなかに手が足りん・・・
「はい、そのように取り計らっていただけたら幸いです。」
・・・このセリフ・・・俺って誰だよ・・・こんなキャラじゃないんだが・・・
「そうそう、申し遅れましたわ、わたくし、エルディラント伯爵家の次女でアーリアと申しますわ、今後ともよろしくお願いしますわね」
「ご丁寧にありがとうございます。ミスルトウ店主のハルヒト:サカナバです。今後とも御贔屓によろしくお願いいたします。」
そしてアーリア嬢たちは帰っていった・・・
「またのご来店心よりお待ちしております」
深々と礼をして見送る俺だった・・・俺ってこんなに権力に弱かったっけ?
・・・弱いのは財力に・・・だろ・・・と心の中で突っ込み100万回・・・
受け取った小袋を確認する・・・
・・・白金貨5枚・・・
あんなお茶会で500万とかアフォか!?
急なお茶会の迷惑料にしたって高すぎだろ・・・
『貸し切りにしたってこんなにかからんわ!』
お客様のいない店内で思わず叫んじゃいました・・・
そして夕方・・・
勇者様御一行です・・・
いつもの通り・・・ではなかった・・・
羽の生えた20センチくらいの小人
誰がどう見てもフェアリーである・・・しかも20人くらい・・・
飛び回るので数えるのを諦めた・・・
「ハル~客連れてきたぞぉ~」
「いらっしゃいませ」
しかしまず・・・どこからツッコむべきか・・・
フェアリーを想定した食器なんて無いぞ・・・
一番小さくてショットグラスだ・・・
「カズキ・・・難しすぎるだろ・・・接客が・・・」
「ん?自分たちの食器は持参してるぞ?
一人前出してくれれば自分達で取り分けるし
ショットグラスなら使えるだろ?それでOKだ」
・・・それでいいなら大丈夫か・・・
「失礼しました、申し訳ございませんフェアリーの方をお迎えするのは初めての事でして・・・」
もんだいな~いという感じのフェアリー達
「ご注文が決まりましたらお声がけください」
一旦引っ込む・・・栄養ドリンクを取り出し一気飲み・・・
ふぁいとぉ~いっぷぁ~つ
はぁ・・・落ち着いた・・・
落ち着いたところで注文が入る
フェアリーさんからは「果物を使った甘い酒、果物の盛り合わせ」
キャバとかだと定番の盛り合わせですね・・・
賢者と剣聖は生中と枝豆・・・こいつら・・・
トドメにカズキが「ラーメンライスと生中」
マジで後ろからド突いたろうか・・・
林檎、パインアップル、桃、オレンジ、マスカット、イチゴ、キウイフルーツ・・・こんなとこか・・・
一口大に切りささっと大皿に盛り付ける。
とりあえず生中と枝豆をさっさと出しに行き、果物の盛り合わせも持っていく・・・
「この中で一番好きな果物はどれですか?」
フェアリーたちは一度顔を見合わせた後各々手を伸ばす・・・
「この赤いのが好き!」
少しは意見が割れると思ってたが、満場一致でイチゴを選ぶ・・・
「ふむ・・・貴重なご意見ありがとうございました」
俺はバーカウンターに戻りイチゴのカクテルを思案する・・・
アレを出すか・・・
日本を代表するスペシャルバーテンダー『上田 和男』さん
俺は彼の著書は読みまくった、心のバイブルと言っていい・・・
その『上田 和男』さん考案のカクテル
【フレイズリシェス】
「贅沢なイチゴ」という意味を持つカクテルだ。
材料は一杯辺り・・・
クレームドフレーズ 20ml
イチゴ 3粒
グレナデンシロップ 小さじ2杯
シャンパン適量
クレームドフレーズってのはイチゴのリキュールでイチゴの味と香りを、これでもか!ってくらい濃縮したリキュールで
うちの店で使ってるのはフランス産のマリーブリザールのクレームドフレーズだ
作り方も難しいことは何もない
シャンパン以外をブレンダーにかけシャンパングラスに注ぎシャンパンを満たすだけ
ショットグラスが90mlだから今回は750のミキシンググラスでガンガン作る
今回は甘いお酒をご所望だったのでレシピ通りに作ったが、
個人的にはグレナデンシロップはやや少なめの方が美味しいと思ってます。
フェアリー達に向けショットグラスに注いで持っていく
「フレイズリシェスというカクテルです。」
さぁ!どんな反応を見せてくれるかな・・・
期待してますと言わんばかりの表情
一口飲んで二カっと笑みを浮かべ、ゆっくりと味わっている。
それを見て俺は一旦厨房へ・・・
カズキご所望のラーメンライスだ・・・
米は炊いてある。
アマゾンで買っておいた袋入り生麺と醤油ダレを取り出す
この前作り置きしといた豚骨スープもある・・・
今日も豚骨醤油だ・・・
お湯を沸かし麺を茹で、購入済みのメンマ、チャーシュー、味玉で仕上げて勇者に出す
「カズキ、日中と閉店後は、まぁ許す・・・バーの営業中にラーメンだのは遠慮してくれ・・・」
げんなりした表情の俺・・・嬉しそうにラーメンをすするカズキ・・・
「わかったよ、次は閉店まで待つよ」
ホントだな・・・絶対だからな・・・
まぁ、あいかわらずの勇者一行は放置気味でOK 足りなかったら注文してくるだろ・・・
フェアリーさんの方に注目する。
ショットグラスを両手に抱えて飲んでる姿が微笑ましい・・・
果物をツマミに果実系の酒を飲む・・・いいのか?
どんだけ果物が好きなんだ?
いい感じに酒が進む・・・
フェアリー達はあっちにフラフラこっちにフラフラと飛んでいる・・・
第三者視点だと微笑ましくも幻想的で楽しそう・・・ってなるんだろうが、
酔って顔を真っ赤にしながらフラフラしてる所は居酒屋帰りのサラリーマンのイメージだ・・・
ぶっちゃけてしまえばカオスである・・・
普段のフェアリーは自分たちのテリトリーで山や森の果物採集や花の蜜を集めたりする生活らしいが
今回は、そのテリトリーにキラーウルフの襲撃があって、勇者達が討伐したそうだ。
そんな中で希少な薬草なんかをやりとりしてるうちに意気投合し、
うちの店に連れてきたって流れなわけだ。
一部のフェアリーは果物談議で盛り上がってる・・・
「このイチゴってのは僕らの所でも作りたいね!」
「キウイってのもおいしいよ」
「苗か種が手に入ればいいんだけど・・・」
こんな時余計な事を言う賢者・・・
「ハルから買えるんじゃね?」
言えば出てくると思うな・・・俺はドラ〇もんか!?
面倒な事になりそうだったので首を突っ込むのを避ける・・・
どうせ勇者が快く引き受けて、運搬支払いが勇者で・・・って流れになるのは目に見えてる。
そんな感じでその日の飲み会はつつがなく終わった・・・
後日、案の定キウイとイチゴの苗の買取って話が出る
まとめて出してインベントリへ・・・
その時にフェアリーが一人だけついてきてた。
イチゴシェーキを出しておく・・・
嬉しそうに飛び回る
「いやっふ~!勇者さんにお礼の品を預けてるんで後で受け取ってね」
律儀な妖精だ・・・
「僕、ここが気に入ったよ!邪魔しないからここにいちゃダメ?」
・・・なんでそうなる・・・
「寝る時は俺の部屋でいいからここはOKしといたほうがいいぞ」
カズキのダメ押し・・・なんだそりゃ?最初から決定してたみたいだな・・・
「フェアリーは幸運を招くって言われてるんだそれに・・・」
それになんだよ・・・
「ここで断ったらイタズラされんぞ・・・」
脅迫かよ・・・
「お礼の品はハルも泣いて喜ぶぞ・・・マジで・・・」
と言って瓶を数本出す。
「妖精達の聖酒・・・フェアリーズネクターっていうそうだ」
ふむ、初めて聞く酒だ・・・
「味見しても?」
頷くカズキ・・・俺は瓶を開けショットグラスに注ぐ
「!?」
ヤバい、言葉にならない・・・
熟成年数?いや、そんなもんじゃない・・・
口に広がる芳醇な甘さ・・・しつこいくらいの甘さだが、ミント・・・いや違う・・・
・・・フォンテル?それよりも遥かに精錬されたスッキリ感がしつこい甘さを流していく・・・
なんだこりゃ?
バランタインのような複雑な調合・・・だが完成度はこっちの方が遥かに上・・・
「なっスゲェだろ?フォンテルより貴重な薬草がいい感じに発酵を促進するらしいぞ」
超が十個位付くレベルのドヤ顔のカズキ・・・しかしこれは・・・納得である。
もう一口飲む・・・
蜂蜜酒・・・ミードに近い製法なのはわかる・・・
元を正せば両方花の蜜だ・・・
「この酒が妖精族のテリトリーから出ることはほとんど無い、過去の勇者が妖精王のお願いを聞いて下賜された記録があるくらいで世に出回った記録も無い」
幻の酒・・・フェアリーネクター・・・
「・・・どうして俺に?」
そんな貴重な酒を一介の酒場のマスターに渡される理由に心当たりはない・・・
「俺も後で知ったんだが、こないだ来た時に妖精王もお忍びで紛れ込んでたらしい・・・」
妖精王・・・アフォか?ホイホイ出かけていい距離や立場じゃねーだろ・・・
「そんでイチゴをいたくお気に召されて・・・苗が手に入るなら・・・と、簡単に言えば賄賂だな・・・」
ォィォィ・・・受け取るこっちが恐縮するわ・・・
味を見て、希少度を考えて・・・値段をつけるなら・・・
ベルフェクションなんて比じゃねーぞ・・・
これ一本で現世なら億の値が付く・・・
「妖精族の方でもそれなりに貴重ではあるらしいが、年に数本程度なら継続的に出してもいいって言ってた・・・」
俺は一瞬思考が停止する・・・馬鹿な・・・定期的に手に入る・・・・だと
頭を振り思考を加速させる・・・俺は慌ててアマゾンから各種の苗を買い付け大量に出す
「全然価値に見合わないが、追加で持って行ってくれ・・・代金は不要だ・・・足りなければ補充する・・・」
「後は、ケインがここに住み着くのは?」
ケインというのか・・・記憶した・・・
「無条件でOKだ!なんなら俺の部屋を明け渡してもいい・・・」
「身体がちっこいから場所もそんなに取らないよ、寝る場所さえあれば普段は店の中で過ごすもん」
希少な酒に目がくらんだ俺は、彼が起こすトラブルを考えもせずに許可を出す・・・
「妖精王もちょくちょく来るって言ってたぞ・・・」
早まったか・・・と思うのは後々になってからだった。
なんでも移動にはフェアリーサークルを使うから距離も時間も関係ないらしい・・・
異世界あるあるだな・・・
ともあれ カフェ&バー ミスルトウに新しい仲間?が加わったのだった・・・
お客様に来ていただけるようになりました。
もう、足を向けて寝られません・・・方向はわかりませんが・・・って駄目じゃん・・・
そうすると、俺、フィリアン、ハンティの3人が、てんやわんやになる日も出てくるわけで・・・
今日がそんな忙しい日でした。
うちの店でお茶会をする・・・そんな無謀なお嬢様・・・
ハインデル様と一緒に来てくれた御令嬢主催です。
こんな小さな店でやらんでも・・・と思う小市民な俺なんですが・・・
しかも、予約無しの飛び込み!
4つのテーブル席を一つに寄せて・・・
やりたい放題の貴族様・・・
しか~し、こんなビジネスチャンスは逃せない!
一応、常連のお客様もいることを伝え貸し切りにはしなくていいという言質を頂きました。
「このようなお茶会を私の店でするとは想定もしてませんで、殺風景なテーブルで申し訳ございません」
一応謝っておく・・・
こっちも一応プロだからこんな状況でもご満足いただけるようにするだけだ!
もう・・・慌てて用意しましたよ・・・高級茶葉・・・
「本日ご用意いたしましたのはダージリン セカンドフラッシュでございます。」
500グラム3万円だ!どうだ参ったか・・・と心の中で叫ぶ・・・が、
これって誰だよってくらい丁寧な接客・・・
そりゃそうだ!麗しのお嬢様方が11人!
店内を値踏みするかの視線・・・
念入りに蒸らし時間を計算しての紅茶をカップに注ぎお出しする。
カップなんて、この為だけにマイセンのブルーオーキッドを2組も買いましたさ・・・
「あら、センスのいいカップね」「模様も美しいわ」etc etc
はい!お褒めの言葉を頂きました!
お茶の方も、帰りに茶葉を持って帰りたいとの事で500グラム毎に瓶に詰め替えして販売する事に・・・
500グラム銀貨5枚での販売とさせていただきました・・・
倍とまでは言わないが、かなりのボッタクリである・・・のに
「これが銀貨5枚ですって!?金貨じゃなくて?」
・・・とのたまいやがりました・・・
金銭感覚の狂ったお嬢様だ・・・旦那になる人が泣くぞ・・・ほんとに
お菓子の方は、手軽に食べられるスコーンにブルーベリージャムを添えて、そしてガトーショコラをご用意いたしました。
この状況で踵を返さない勇敢な常連たちはカウンターの方で対応
この状況の物珍しさに逆に入ってくる野次馬新規客・・・
この野次馬が無駄に多い・・・
ちったぁ空気読め・・・
お茶の継ぎ足し提供はフィリアンに任せた・・・
ハンティも頑張ってくれてる・・・
それでもほとんどの常連が軽食とドリンクを早々に食して帰っていく・・・
ちなみに勇者達も「出直すよ・・・」と言って帰っていった・・・
そんな怒涛の展開もお菓子をあらかた食べ終えお茶会も終わりを迎える。
そのタイミングを見計らってお嬢様方全員に瓶入りの茶葉を手提げ布袋に入れて持たせる。
「今日は無理を通していただきありがとうございました。みんな満足いたしましたわ」
そう言って小袋を取り出しそのまま渡してくる。
「ありがとうございます。」
他のお嬢様方の茶葉の代金もここに含まれてるらしい
お茶会の手土産って感覚なのかな?
「また来させていただきますわ、そうそう、我が家の方にも茶葉を卸していただけないかしら?」
この状況で断ることができようか・・・
「かしこまりました。いかほどご入用でしょう?」
「後でうちの者を使いに出します。それでいいかしら?」
まぁ、来てくれるってのなら大歓迎だ・・・置きに来いって言われるとなかなかに手が足りん・・・
「はい、そのように取り計らっていただけたら幸いです。」
・・・このセリフ・・・俺って誰だよ・・・こんなキャラじゃないんだが・・・
「そうそう、申し遅れましたわ、わたくし、エルディラント伯爵家の次女でアーリアと申しますわ、今後ともよろしくお願いしますわね」
「ご丁寧にありがとうございます。ミスルトウ店主のハルヒト:サカナバです。今後とも御贔屓によろしくお願いいたします。」
そしてアーリア嬢たちは帰っていった・・・
「またのご来店心よりお待ちしております」
深々と礼をして見送る俺だった・・・俺ってこんなに権力に弱かったっけ?
・・・弱いのは財力に・・・だろ・・・と心の中で突っ込み100万回・・・
受け取った小袋を確認する・・・
・・・白金貨5枚・・・
あんなお茶会で500万とかアフォか!?
急なお茶会の迷惑料にしたって高すぎだろ・・・
『貸し切りにしたってこんなにかからんわ!』
お客様のいない店内で思わず叫んじゃいました・・・
そして夕方・・・
勇者様御一行です・・・
いつもの通り・・・ではなかった・・・
羽の生えた20センチくらいの小人
誰がどう見てもフェアリーである・・・しかも20人くらい・・・
飛び回るので数えるのを諦めた・・・
「ハル~客連れてきたぞぉ~」
「いらっしゃいませ」
しかしまず・・・どこからツッコむべきか・・・
フェアリーを想定した食器なんて無いぞ・・・
一番小さくてショットグラスだ・・・
「カズキ・・・難しすぎるだろ・・・接客が・・・」
「ん?自分たちの食器は持参してるぞ?
一人前出してくれれば自分達で取り分けるし
ショットグラスなら使えるだろ?それでOKだ」
・・・それでいいなら大丈夫か・・・
「失礼しました、申し訳ございませんフェアリーの方をお迎えするのは初めての事でして・・・」
もんだいな~いという感じのフェアリー達
「ご注文が決まりましたらお声がけください」
一旦引っ込む・・・栄養ドリンクを取り出し一気飲み・・・
ふぁいとぉ~いっぷぁ~つ
はぁ・・・落ち着いた・・・
落ち着いたところで注文が入る
フェアリーさんからは「果物を使った甘い酒、果物の盛り合わせ」
キャバとかだと定番の盛り合わせですね・・・
賢者と剣聖は生中と枝豆・・・こいつら・・・
トドメにカズキが「ラーメンライスと生中」
マジで後ろからド突いたろうか・・・
林檎、パインアップル、桃、オレンジ、マスカット、イチゴ、キウイフルーツ・・・こんなとこか・・・
一口大に切りささっと大皿に盛り付ける。
とりあえず生中と枝豆をさっさと出しに行き、果物の盛り合わせも持っていく・・・
「この中で一番好きな果物はどれですか?」
フェアリーたちは一度顔を見合わせた後各々手を伸ばす・・・
「この赤いのが好き!」
少しは意見が割れると思ってたが、満場一致でイチゴを選ぶ・・・
「ふむ・・・貴重なご意見ありがとうございました」
俺はバーカウンターに戻りイチゴのカクテルを思案する・・・
アレを出すか・・・
日本を代表するスペシャルバーテンダー『上田 和男』さん
俺は彼の著書は読みまくった、心のバイブルと言っていい・・・
その『上田 和男』さん考案のカクテル
【フレイズリシェス】
「贅沢なイチゴ」という意味を持つカクテルだ。
材料は一杯辺り・・・
クレームドフレーズ 20ml
イチゴ 3粒
グレナデンシロップ 小さじ2杯
シャンパン適量
クレームドフレーズってのはイチゴのリキュールでイチゴの味と香りを、これでもか!ってくらい濃縮したリキュールで
うちの店で使ってるのはフランス産のマリーブリザールのクレームドフレーズだ
作り方も難しいことは何もない
シャンパン以外をブレンダーにかけシャンパングラスに注ぎシャンパンを満たすだけ
ショットグラスが90mlだから今回は750のミキシンググラスでガンガン作る
今回は甘いお酒をご所望だったのでレシピ通りに作ったが、
個人的にはグレナデンシロップはやや少なめの方が美味しいと思ってます。
フェアリー達に向けショットグラスに注いで持っていく
「フレイズリシェスというカクテルです。」
さぁ!どんな反応を見せてくれるかな・・・
期待してますと言わんばかりの表情
一口飲んで二カっと笑みを浮かべ、ゆっくりと味わっている。
それを見て俺は一旦厨房へ・・・
カズキご所望のラーメンライスだ・・・
米は炊いてある。
アマゾンで買っておいた袋入り生麺と醤油ダレを取り出す
この前作り置きしといた豚骨スープもある・・・
今日も豚骨醤油だ・・・
お湯を沸かし麺を茹で、購入済みのメンマ、チャーシュー、味玉で仕上げて勇者に出す
「カズキ、日中と閉店後は、まぁ許す・・・バーの営業中にラーメンだのは遠慮してくれ・・・」
げんなりした表情の俺・・・嬉しそうにラーメンをすするカズキ・・・
「わかったよ、次は閉店まで待つよ」
ホントだな・・・絶対だからな・・・
まぁ、あいかわらずの勇者一行は放置気味でOK 足りなかったら注文してくるだろ・・・
フェアリーさんの方に注目する。
ショットグラスを両手に抱えて飲んでる姿が微笑ましい・・・
果物をツマミに果実系の酒を飲む・・・いいのか?
どんだけ果物が好きなんだ?
いい感じに酒が進む・・・
フェアリー達はあっちにフラフラこっちにフラフラと飛んでいる・・・
第三者視点だと微笑ましくも幻想的で楽しそう・・・ってなるんだろうが、
酔って顔を真っ赤にしながらフラフラしてる所は居酒屋帰りのサラリーマンのイメージだ・・・
ぶっちゃけてしまえばカオスである・・・
普段のフェアリーは自分たちのテリトリーで山や森の果物採集や花の蜜を集めたりする生活らしいが
今回は、そのテリトリーにキラーウルフの襲撃があって、勇者達が討伐したそうだ。
そんな中で希少な薬草なんかをやりとりしてるうちに意気投合し、
うちの店に連れてきたって流れなわけだ。
一部のフェアリーは果物談議で盛り上がってる・・・
「このイチゴってのは僕らの所でも作りたいね!」
「キウイってのもおいしいよ」
「苗か種が手に入ればいいんだけど・・・」
こんな時余計な事を言う賢者・・・
「ハルから買えるんじゃね?」
言えば出てくると思うな・・・俺はドラ〇もんか!?
面倒な事になりそうだったので首を突っ込むのを避ける・・・
どうせ勇者が快く引き受けて、運搬支払いが勇者で・・・って流れになるのは目に見えてる。
そんな感じでその日の飲み会はつつがなく終わった・・・
後日、案の定キウイとイチゴの苗の買取って話が出る
まとめて出してインベントリへ・・・
その時にフェアリーが一人だけついてきてた。
イチゴシェーキを出しておく・・・
嬉しそうに飛び回る
「いやっふ~!勇者さんにお礼の品を預けてるんで後で受け取ってね」
律儀な妖精だ・・・
「僕、ここが気に入ったよ!邪魔しないからここにいちゃダメ?」
・・・なんでそうなる・・・
「寝る時は俺の部屋でいいからここはOKしといたほうがいいぞ」
カズキのダメ押し・・・なんだそりゃ?最初から決定してたみたいだな・・・
「フェアリーは幸運を招くって言われてるんだそれに・・・」
それになんだよ・・・
「ここで断ったらイタズラされんぞ・・・」
脅迫かよ・・・
「お礼の品はハルも泣いて喜ぶぞ・・・マジで・・・」
と言って瓶を数本出す。
「妖精達の聖酒・・・フェアリーズネクターっていうそうだ」
ふむ、初めて聞く酒だ・・・
「味見しても?」
頷くカズキ・・・俺は瓶を開けショットグラスに注ぐ
「!?」
ヤバい、言葉にならない・・・
熟成年数?いや、そんなもんじゃない・・・
口に広がる芳醇な甘さ・・・しつこいくらいの甘さだが、ミント・・・いや違う・・・
・・・フォンテル?それよりも遥かに精錬されたスッキリ感がしつこい甘さを流していく・・・
なんだこりゃ?
バランタインのような複雑な調合・・・だが完成度はこっちの方が遥かに上・・・
「なっスゲェだろ?フォンテルより貴重な薬草がいい感じに発酵を促進するらしいぞ」
超が十個位付くレベルのドヤ顔のカズキ・・・しかしこれは・・・納得である。
もう一口飲む・・・
蜂蜜酒・・・ミードに近い製法なのはわかる・・・
元を正せば両方花の蜜だ・・・
「この酒が妖精族のテリトリーから出ることはほとんど無い、過去の勇者が妖精王のお願いを聞いて下賜された記録があるくらいで世に出回った記録も無い」
幻の酒・・・フェアリーネクター・・・
「・・・どうして俺に?」
そんな貴重な酒を一介の酒場のマスターに渡される理由に心当たりはない・・・
「俺も後で知ったんだが、こないだ来た時に妖精王もお忍びで紛れ込んでたらしい・・・」
妖精王・・・アフォか?ホイホイ出かけていい距離や立場じゃねーだろ・・・
「そんでイチゴをいたくお気に召されて・・・苗が手に入るなら・・・と、簡単に言えば賄賂だな・・・」
ォィォィ・・・受け取るこっちが恐縮するわ・・・
味を見て、希少度を考えて・・・値段をつけるなら・・・
ベルフェクションなんて比じゃねーぞ・・・
これ一本で現世なら億の値が付く・・・
「妖精族の方でもそれなりに貴重ではあるらしいが、年に数本程度なら継続的に出してもいいって言ってた・・・」
俺は一瞬思考が停止する・・・馬鹿な・・・定期的に手に入る・・・・だと
頭を振り思考を加速させる・・・俺は慌ててアマゾンから各種の苗を買い付け大量に出す
「全然価値に見合わないが、追加で持って行ってくれ・・・代金は不要だ・・・足りなければ補充する・・・」
「後は、ケインがここに住み着くのは?」
ケインというのか・・・記憶した・・・
「無条件でOKだ!なんなら俺の部屋を明け渡してもいい・・・」
「身体がちっこいから場所もそんなに取らないよ、寝る場所さえあれば普段は店の中で過ごすもん」
希少な酒に目がくらんだ俺は、彼が起こすトラブルを考えもせずに許可を出す・・・
「妖精王もちょくちょく来るって言ってたぞ・・・」
早まったか・・・と思うのは後々になってからだった。
なんでも移動にはフェアリーサークルを使うから距離も時間も関係ないらしい・・・
異世界あるあるだな・・・
ともあれ カフェ&バー ミスルトウに新しい仲間?が加わったのだった・・・
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貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
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