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騎士団編
81.じっかへのきかん
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タタっと軽い足音を立て、俺は馬車から降りる。
目の前には見慣れているが2年間離れていた家のドア。
少しばかりの懐かしさを覚えながら、俺は息を吸い込んでドアを開けた。
「あ!おかえりなさい、ルーシャス様~!」
「ルーシャス様!帰ってこられたのですね!お久しぶりです!」
「ミーナちゃん、イーナさん、ただいま!」
2人のネコ耳メイドさんたちが耳をピョコピョコさせながら出迎えてくれる。
ミーナちゃんはちょっと大人っぽくなったかな?イーナさんに似てきたみたいだ。
「もう~、2年も帰って来ないなんて聞いてませんよ~?」
「みんな寂しがってたんですよ!特にジュリア様が」
ああー、それはそうかもな。風の噂でジュリアお姉ちゃんは変態が再発したと聞いた。今は勤務中でいないようだが、帰ってきたらとんでもないことになるだろうな。
「だーれだっ?」
おっと、お姉様はいないのではなく出てくるタイミングを伺ってたのか。見習いから正式に騎士団員になったようだが、今日はお休みなのかな?バレバレの声に苦笑しつつ、俺はノってあげることにした。
「誰だろう......?俺が知らない声だ......。まさか、まだ会ったことない俺のおばあちゃん!?」
背後で盛大にガックリ首を落としているのが感覚でわかる。
すまんな、からかわれてもタダでは起きないんだ俺は。
「ちょっと酷いよルーシャスくん!お姉ちゃんの声を忘れたっていうの!?」
「ううん、分かっててノってあげたんだよ」
「もっと酷いよ!?」
俺の目を隠していた手が退けられて視界が開けると、若干涙目のお姉ちゃんが顔を出す。
「あはは、ごめんごめん。ついからかいたくなっちゃって」
「もう!ルーシャスくんったらいたずらっ子なんだから!でもそんなところもかわいい~!」
飛びついてくるお姉ちゃんを風魔法で飛び上がって躱す。
お姉ちゃんは床に向かって見事なヘッドスライディングを決めることとなった。
「ところでミーナちゃん、今日の昼ごはんは何?」
「今日はメイド特製のオムライスですよ~。ルーシャス様が帰ってくるのでいつも以上に愛情を込めました~!萌え萌えきゅんって」
「ねえルーシャスくんさっきから酷くない!?」
悲痛な叫びを上げるジュリアお姉ちゃんをちらっと横目で見てスルーし、ミーナちゃんたちに向き直る。
それにしてもメイド特製オムライスはなんかちょっとそういうカフェ的な匂いがするな。萌え萌えきゅんは完全にそれだろ。ケチャップでハートとか書いてあるんだろうか。
「ルーシャス様~、オムライスをお持ちしました~!」
ミーナちゃんが両手にオムライスを持って歩き出てくる。
ちゃんとジュリアお姉ちゃんの分もあるみたいで良かったよ。当の本人はまだ半泣きだけど。
「それではケチャップで落書きしますね~」
「ジュリア様の分は私が落書きします!」
ミーナちゃんとイーナさんは右手にケチャップを持ち、オムライスに何かを描き始める。
俺とジュリアお姉ちゃんは何が描かれているのか嬉々として覗き込むと......
「覇」
「氣」
......覇氣!?気じゃなくて氣!?いや厳つすぎるだろ!!柔道部の部室とかに書いてありそうじゃねえか!!
てかなんで日本語で書いてあんだよ!!
「わーい、なんかかっこいい!」
日本語なんて知らないお姉様は意味もわからず喜んでいる。
うん、まああれだ、多分こういう絵があるんだろう。それがたまたま日本語の漢字に似てしまっただけだ。そう思うことにしよう。
「あれ?そういえば2人は食べないの?」
「もちろん食べますよ~。今私たちの分も持ってきますので一緒に食べましょ~」
ミーナちゃんがそう言うと、一足先にキッチンへ行っていたイーナさんが2人分のオムライスを持って現れた。
メイドさんたちの分はどんな落書きがしてあるんだろうと見てみると、トランプの10・J・Q・K・Aが順番に描いてあった。
いやロイヤルストレートフラッシュじゃねえか!!しかも2つともかよ!!クオリティ高えなおい!
「それでは皆さん、いただきましょう!」
呆れていいのか感心していいのか戸惑いながら心の中でツッコミを入れる俺を他所に、イーナさんが音頭を取る。
「「「「いただきま~す」」」」
きちんと挨拶をして俺たちは食べ始める。
しかしこうしてみんなで食卓を囲むのも久しぶりだなあ。
「それにしてもルーシャスくん、なんで2年間とも帰ってこなかったの?」
「ああちょっと色々都合が悪くて......魔法陣の研究したり過去に行って人間の魔獣を倒したりしてたからさ」
「うんなんか君はお姉ちゃんが理解できない領域にいるね!?何したって!?」
驚愕の表情を浮かべるお姉ちゃんを適当にあしらいながら、俺はオムライスを味わう。
目の前ではミーナちゃんとイーナさんが笑いながら俺たちの会話を聞いている。2人とも耳がピョコピョコ動いていて楽しそうだ。
「ねえルーシャスくん聞いてる?暁の剣士もビックリのことやってるよね!?」
「ああ、その暁の剣士が俺だよ」
「え!?ちょっと待ってどういうこと!?ちゃんと説明してもらえる!?」
久しぶりの我が家は、今日も平和だ。
目の前には見慣れているが2年間離れていた家のドア。
少しばかりの懐かしさを覚えながら、俺は息を吸い込んでドアを開けた。
「あ!おかえりなさい、ルーシャス様~!」
「ルーシャス様!帰ってこられたのですね!お久しぶりです!」
「ミーナちゃん、イーナさん、ただいま!」
2人のネコ耳メイドさんたちが耳をピョコピョコさせながら出迎えてくれる。
ミーナちゃんはちょっと大人っぽくなったかな?イーナさんに似てきたみたいだ。
「もう~、2年も帰って来ないなんて聞いてませんよ~?」
「みんな寂しがってたんですよ!特にジュリア様が」
ああー、それはそうかもな。風の噂でジュリアお姉ちゃんは変態が再発したと聞いた。今は勤務中でいないようだが、帰ってきたらとんでもないことになるだろうな。
「だーれだっ?」
おっと、お姉様はいないのではなく出てくるタイミングを伺ってたのか。見習いから正式に騎士団員になったようだが、今日はお休みなのかな?バレバレの声に苦笑しつつ、俺はノってあげることにした。
「誰だろう......?俺が知らない声だ......。まさか、まだ会ったことない俺のおばあちゃん!?」
背後で盛大にガックリ首を落としているのが感覚でわかる。
すまんな、からかわれてもタダでは起きないんだ俺は。
「ちょっと酷いよルーシャスくん!お姉ちゃんの声を忘れたっていうの!?」
「ううん、分かっててノってあげたんだよ」
「もっと酷いよ!?」
俺の目を隠していた手が退けられて視界が開けると、若干涙目のお姉ちゃんが顔を出す。
「あはは、ごめんごめん。ついからかいたくなっちゃって」
「もう!ルーシャスくんったらいたずらっ子なんだから!でもそんなところもかわいい~!」
飛びついてくるお姉ちゃんを風魔法で飛び上がって躱す。
お姉ちゃんは床に向かって見事なヘッドスライディングを決めることとなった。
「ところでミーナちゃん、今日の昼ごはんは何?」
「今日はメイド特製のオムライスですよ~。ルーシャス様が帰ってくるのでいつも以上に愛情を込めました~!萌え萌えきゅんって」
「ねえルーシャスくんさっきから酷くない!?」
悲痛な叫びを上げるジュリアお姉ちゃんをちらっと横目で見てスルーし、ミーナちゃんたちに向き直る。
それにしてもメイド特製オムライスはなんかちょっとそういうカフェ的な匂いがするな。萌え萌えきゅんは完全にそれだろ。ケチャップでハートとか書いてあるんだろうか。
「ルーシャス様~、オムライスをお持ちしました~!」
ミーナちゃんが両手にオムライスを持って歩き出てくる。
ちゃんとジュリアお姉ちゃんの分もあるみたいで良かったよ。当の本人はまだ半泣きだけど。
「それではケチャップで落書きしますね~」
「ジュリア様の分は私が落書きします!」
ミーナちゃんとイーナさんは右手にケチャップを持ち、オムライスに何かを描き始める。
俺とジュリアお姉ちゃんは何が描かれているのか嬉々として覗き込むと......
「覇」
「氣」
......覇氣!?気じゃなくて氣!?いや厳つすぎるだろ!!柔道部の部室とかに書いてありそうじゃねえか!!
てかなんで日本語で書いてあんだよ!!
「わーい、なんかかっこいい!」
日本語なんて知らないお姉様は意味もわからず喜んでいる。
うん、まああれだ、多分こういう絵があるんだろう。それがたまたま日本語の漢字に似てしまっただけだ。そう思うことにしよう。
「あれ?そういえば2人は食べないの?」
「もちろん食べますよ~。今私たちの分も持ってきますので一緒に食べましょ~」
ミーナちゃんがそう言うと、一足先にキッチンへ行っていたイーナさんが2人分のオムライスを持って現れた。
メイドさんたちの分はどんな落書きがしてあるんだろうと見てみると、トランプの10・J・Q・K・Aが順番に描いてあった。
いやロイヤルストレートフラッシュじゃねえか!!しかも2つともかよ!!クオリティ高えなおい!
「それでは皆さん、いただきましょう!」
呆れていいのか感心していいのか戸惑いながら心の中でツッコミを入れる俺を他所に、イーナさんが音頭を取る。
「「「「いただきま~す」」」」
きちんと挨拶をして俺たちは食べ始める。
しかしこうしてみんなで食卓を囲むのも久しぶりだなあ。
「それにしてもルーシャスくん、なんで2年間とも帰ってこなかったの?」
「ああちょっと色々都合が悪くて......魔法陣の研究したり過去に行って人間の魔獣を倒したりしてたからさ」
「うんなんか君はお姉ちゃんが理解できない領域にいるね!?何したって!?」
驚愕の表情を浮かべるお姉ちゃんを適当にあしらいながら、俺はオムライスを味わう。
目の前ではミーナちゃんとイーナさんが笑いながら俺たちの会話を聞いている。2人とも耳がピョコピョコ動いていて楽しそうだ。
「ねえルーシャスくん聞いてる?暁の剣士もビックリのことやってるよね!?」
「ああ、その暁の剣士が俺だよ」
「え!?ちょっと待ってどういうこと!?ちゃんと説明してもらえる!?」
久しぶりの我が家は、今日も平和だ。
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