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高校生編

62.しんせいかつのはじまり

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 3日後-。俺たちはこれから通う高校に辿り着いていた。
 道中は一般市民が暮らす街を通って行ったが、随分と良くしてもらった。
 宿泊は全て宿で済んだし、古本屋に眠っていた魔術の本を引っ張り出してもらってそれを買ったりできた。
 随分面白そうな内容だったから寮に着いたらちゃんと読んでみよう。


「はえー、ここが高校でやんすか!めちゃくちゃでかいでやんすね」


「ああ、こんなに大きな建物は初めて見たかもな。東○ドーム何個分だろうか?」


「東○ドームそのものだからどう見ても1個分だろ!......ってなんで知ってんだよ!」


 ジェームズは時々日本から来たのかと思うような言動をするからびっくりさせる。
 それかこの世界にも東○ドームがあるのか?そんなわけないよなまず東京がねえわ。


「ルーシャス、アリス、俺たちが着いて来られるのはここまでだ」


「ここからは何が起こるかわからない世界。何かあっても責任は取らないでやんすからね!」


「心霊スポットに行くみたいに言うな!てかここまで着いて来たのがまずイレギュラーだわ!」


「馬車の中にいた時は驚きましたけれど、貴方たちのおかげで道中楽しかったですわ。帰りも気をつけて帰るんですのよ?」


「もちろんだ。その為にセシリアにも着いてきてもらった」


「お2人ともこんにちは!」


「なんでいんだよ!!え、今までずっと馬車に潜んでたの!?」


「いえ、後ろから別の馬車に乗って来ましたよ。お2人の荷物と一緒に」


「何やってんだよ!!だから後ろの馬車の方が大きかったのかよ!!」


 突然のセシリアさんの登場にひっくり返る俺たち。
 いやなんか荷物積むだけなのにやけに大きい馬車用意するなとは思ってたんだよ。まさかセシリアさんが泊まってるとは。


「ジェームズ様、コーディくん、ここからは私と一緒に帰りますよ!」


「ああセシリア。よろしく頼む」


「じゃあアニキ、あっしらはここでお別れでやんす!」


 ジェームズとコーディは俺とアリスにサムズアップを決め、いそいそと帰りの馬車に乗り込んで行った。

 騒がしい2人の退場に俺たちは苦笑しつつ、高校の方へ向き直る。
 いよいよここから寮生活の始まりだ。まさかの旅のお供がいて地元を離れた気がしなかったが、2人が帰ったことで少し気が引き締まる。

 まず俺たちが向かうのは学生寮だ。学校自体は1月15日に始まるので、まだ2日余裕がある。それまでは寮で過ごし、少しでも新しい暮らしに慣れるのが通例だそうだ。

 寮に着くと男女それぞれの寮に寮母さんがいて、部屋まで案内してもらった。もちろんアリスとは別の部屋。正真正銘、ここからは1人で暮らすんだな。

 しみじみとしながら部屋に入る。寮の部屋は古めかしいが綺麗に保たれており、木目調の落ち着いた部屋だ。
 魔力灯を付けてよく見てみると、大きめのクローゼットに勉強机、ふかふかのシングルベッドが置いてある。
 結構良い部屋だな。これなら快適に過ごせそうだ。


「夕飯の準備ができたら呼びに来るから、ゆっくりするんだよ」


「ありがとうございます!そうします!」


 そう言うと寮母さんは笑顔を浮かべて部屋を出ていく。ちなみに寮母さんはふっくらとした50代くらいの女性だった。絵に書いたような寮母さんで安心感のある人だなあ。

 1人になった俺は、高校までの道中で買った魔術の本を読むことにした。
 なんとこの本、属性魔法ではなく転移魔法について書いてあるのだ。

 魔法と聞いて一度は憧れるであろう召喚。それがこの本に書いてある転移魔法で可能になるかもしれないのだ!楽しみだ。


 表紙にでかでかと『サルでもわかる転移魔法』と書いてあるちょっと腹立つ本をうきうきで開く。

 かなり分厚い本なので内容をまとめると、

『転移魔法は光魔法の一種だぞ!!』

『基本的には魔法陣を使って発動させるぞ!!』

『物体や動物はもちろん、理論的には落雷や噴火など自然現象を転移させることもできるぞ!!』

『転移は空間だけでなく、時間も指定できるぞ!!』

 とのことだ。
 なんでこんなハッ○ーセットのおもちゃの説明みたいな口調なんだと思うかもしれないが、本当にこう書いてあるんだもん。
 まじでこの世界の本でまともなものに出会った事がないな。

 しかし転移魔法か......。なんと時間転移も出来るらしい。つまりタイムトラベルが可能だということだ。とりあえず俺が生まれたばかりの頃に戻って、腕立てもいいが走り込みもした方がいいぞと助言してやりたい。
 風魔法が適正の場合は足が早くなるからな。せっかくの特性だから活かした世界線を見てみたい。そんな簡単にできる魔法なのか知らんが。
 魔法陣を使うということだから、同じ高校に進学したエリック先輩に報告してみるか。

 読みふけっていると寮母さんが呼びに来たので、寮での初めての夕食に向かう俺なのだった。
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