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第三章 王立学校
対話
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「———てな感じで、俺の正体がバレてるっぽいんだ」
『ふむ……それは厄介だな』
こうした危機的状況の判断はフリードに任せるのが最善だろう。
白く光る魔石を介し、俺はフリードとコンタクトを取った。
「なぁ、ひょっとして、俺の名前とかも国にバレてるんじゃないか?」
以前のフリードの話では、代表者が報告書を国へと持っているとのことだったが。
『それはまず、間違いなく大丈夫だろう』
「なんでそんな自信満々に……」
『やつらにとって、異世界人は人間に非ず、という事だ。殺す奴の名前を逐一報告する必要がないからな。故に、そのお前の名を知る者がいるという事実は見過ごせない』
「ちゃんと人間にバレないように工作したんだよな?」
『ああ。戦争の引き金になっては敵わんからな』
あの村の事件は魔物による襲撃ということになっている。シルバーが現地に行き、細工を施したとのことだ。
「で、どうすればいいと思う?」
『口封じ……が理想だが、現実的ではない。ひとまず、もう一度接触してみろ』
「接触っつったってなぁ」
何をどう言えばいいのかわからない。できれば情報を聞き出したいところだが、それにはリスクが伴う。
『そうだな……俺自身が話を聞いて判断するのが良いか』
こうして作戦を練っていき、方針が定まった。
▷▶▷
翌日
授業が終わり、キリヤ達に一緒に寄り道を提案されるがそれを断って、ガルドの元へと行く。
「今、話いいか?」
「……何の用だ」
「昨日の事で話したい事、聞きたいことがある。ここじゃアレだから、人の少ないとこに行かねぇか?」
「……分かった」
ガルドを連れ、仕掛けを施した部屋へと誘導する。
あらかじめキリヤに空き教室を聞いておいたので、人が来る心配はないはずだ。
扉を開け、普通の学校の教室と遜色のない教室に入る。よく分からない荷物と、ほこりの臭いが部屋に広がっている。
(どうだ、聞こえるか?)
『ああ、後は俺の指示どおりにしてくれ』
部屋に設置して起動しておいた通信用の魔石、そしてメアの『念話』を介してフリードとも連絡を取る。
『念話』の便利なところは、脳内で会話ができるから相手に気づかれないという点だ。そして、ガルドとの会話は魔石を通して向こうに伝わる。完璧だ。
「……それで、話とはなんだ」
「その前に一個聞かせてくれ。どうして俺が異世界人だと思ったんだ?」
大前提、ここははっきりさせておかなければならない。それ次第では、俺はこの学校にいられなくなる。
「……父からの手紙だ」
「手紙?」
「父は国の命で平原にある村の警護を担当していた。知ってはいると思うが、その村とは異世界人を確保するためのものだ」
これはフリードから聞いた話と一致する。この国はやはり異世界人を利用していたのか。
「離れ離れの父からは、よく手紙が送られてきた。内容は他愛のないものだ」
ガルドは少し表情を柔和させ、懐かしむようにそう話す。
「ある時、その手紙にこう書かれていた。『異世界人が本当に現れた。名はイスルギ・ケンイチというらしい。年齢はお前に近いかもな』と」
「……」
「他にも、お前の普段の様子や特徴なんかが書かれていた。そして、その内容と今俺の目の前にいるイスルギ・ケンイチの特徴は一致する。それが理由だ」
「……それは、他に誰か知っている人がいるのか?」
俺の問いかけにガルドは首を横に振る。
「他の家族とかもか?」
「母は俺が生まれてすぐに死んだ。兄弟もいない。俺はずっと父と共に暮らしていた」
なるほど。確かにそれなら他の人が手紙を見た可能性は低いな。
「……俺は話した。次はそっちの話を聞かせてくれ」
(おい、なんて話せばいい?)
『もう一つ、こう質問をしろ』
フリードに言われ、
「もう一個聞かせてくれ。俺が仮に真相を話して、そしたらガルドはどうするつもりなんだ?」
「……どうする、か。どうするつもりもない、どうしていいか分からない、というのが正直なところだ。だが、俺は異世界人だからという理由でお前を利用しようとする国は許せん。父がその犠牲になったのなら猶更だ」
その眼には一本の芯が宿っているように見える。
この男はやはりヘルドの血を継いでいるのだと、あらためて理解した。
「だから頼む、聞かせてくれ。俺はただ、父がなぜ死んだのかが知りたいだけなんだ」
(フリード)
『……分かっている。その代わり、口留めはしっかりとしろ』
(ああ)
「分かった、話すよ。でも、その前に契約を結ばせてくれ」
そう言い、俺は一枚の紙を取り出す。これは契約書なのだが、行動を縛る効果がある。フリード印だからその効力は絶大だ。
「分かった、それを受け入れよう」
互いの名を刻み、口外の禁止を義務付ける。
そして、部屋に置いたままの椅子に腰かけ、俺は話し始めた。
「今から数か月前のことだ———」
『ふむ……それは厄介だな』
こうした危機的状況の判断はフリードに任せるのが最善だろう。
白く光る魔石を介し、俺はフリードとコンタクトを取った。
「なぁ、ひょっとして、俺の名前とかも国にバレてるんじゃないか?」
以前のフリードの話では、代表者が報告書を国へと持っているとのことだったが。
『それはまず、間違いなく大丈夫だろう』
「なんでそんな自信満々に……」
『やつらにとって、異世界人は人間に非ず、という事だ。殺す奴の名前を逐一報告する必要がないからな。故に、そのお前の名を知る者がいるという事実は見過ごせない』
「ちゃんと人間にバレないように工作したんだよな?」
『ああ。戦争の引き金になっては敵わんからな』
あの村の事件は魔物による襲撃ということになっている。シルバーが現地に行き、細工を施したとのことだ。
「で、どうすればいいと思う?」
『口封じ……が理想だが、現実的ではない。ひとまず、もう一度接触してみろ』
「接触っつったってなぁ」
何をどう言えばいいのかわからない。できれば情報を聞き出したいところだが、それにはリスクが伴う。
『そうだな……俺自身が話を聞いて判断するのが良いか』
こうして作戦を練っていき、方針が定まった。
▷▶▷
翌日
授業が終わり、キリヤ達に一緒に寄り道を提案されるがそれを断って、ガルドの元へと行く。
「今、話いいか?」
「……何の用だ」
「昨日の事で話したい事、聞きたいことがある。ここじゃアレだから、人の少ないとこに行かねぇか?」
「……分かった」
ガルドを連れ、仕掛けを施した部屋へと誘導する。
あらかじめキリヤに空き教室を聞いておいたので、人が来る心配はないはずだ。
扉を開け、普通の学校の教室と遜色のない教室に入る。よく分からない荷物と、ほこりの臭いが部屋に広がっている。
(どうだ、聞こえるか?)
『ああ、後は俺の指示どおりにしてくれ』
部屋に設置して起動しておいた通信用の魔石、そしてメアの『念話』を介してフリードとも連絡を取る。
『念話』の便利なところは、脳内で会話ができるから相手に気づかれないという点だ。そして、ガルドとの会話は魔石を通して向こうに伝わる。完璧だ。
「……それで、話とはなんだ」
「その前に一個聞かせてくれ。どうして俺が異世界人だと思ったんだ?」
大前提、ここははっきりさせておかなければならない。それ次第では、俺はこの学校にいられなくなる。
「……父からの手紙だ」
「手紙?」
「父は国の命で平原にある村の警護を担当していた。知ってはいると思うが、その村とは異世界人を確保するためのものだ」
これはフリードから聞いた話と一致する。この国はやはり異世界人を利用していたのか。
「離れ離れの父からは、よく手紙が送られてきた。内容は他愛のないものだ」
ガルドは少し表情を柔和させ、懐かしむようにそう話す。
「ある時、その手紙にこう書かれていた。『異世界人が本当に現れた。名はイスルギ・ケンイチというらしい。年齢はお前に近いかもな』と」
「……」
「他にも、お前の普段の様子や特徴なんかが書かれていた。そして、その内容と今俺の目の前にいるイスルギ・ケンイチの特徴は一致する。それが理由だ」
「……それは、他に誰か知っている人がいるのか?」
俺の問いかけにガルドは首を横に振る。
「他の家族とかもか?」
「母は俺が生まれてすぐに死んだ。兄弟もいない。俺はずっと父と共に暮らしていた」
なるほど。確かにそれなら他の人が手紙を見た可能性は低いな。
「……俺は話した。次はそっちの話を聞かせてくれ」
(おい、なんて話せばいい?)
『もう一つ、こう質問をしろ』
フリードに言われ、
「もう一個聞かせてくれ。俺が仮に真相を話して、そしたらガルドはどうするつもりなんだ?」
「……どうする、か。どうするつもりもない、どうしていいか分からない、というのが正直なところだ。だが、俺は異世界人だからという理由でお前を利用しようとする国は許せん。父がその犠牲になったのなら猶更だ」
その眼には一本の芯が宿っているように見える。
この男はやはりヘルドの血を継いでいるのだと、あらためて理解した。
「だから頼む、聞かせてくれ。俺はただ、父がなぜ死んだのかが知りたいだけなんだ」
(フリード)
『……分かっている。その代わり、口留めはしっかりとしろ』
(ああ)
「分かった、話すよ。でも、その前に契約を結ばせてくれ」
そう言い、俺は一枚の紙を取り出す。これは契約書なのだが、行動を縛る効果がある。フリード印だからその効力は絶大だ。
「分かった、それを受け入れよう」
互いの名を刻み、口外の禁止を義務付ける。
そして、部屋に置いたままの椅子に腰かけ、俺は話し始めた。
「今から数か月前のことだ———」
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