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第20話 魔王の生贄
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「オラオラ、てめぇ、逃げんじゃねぇ!!大人しくぶっ飛ばされろ!!!」
草も生えない荒野に罵声が響き渡る。
勇者ライカがゴブリンの群れを退治・・・追いはぎ?しているところだ。
「オラァ!」
ライカが聖剣セインリオンを振りぬけると、ゴブリンたちはまとめて吹き飛ばされ、そのまま岩に当たると、岩まで崩して、ゴブリンたちは岩に生き埋めになってしまった。
「ケッ!最初から食い物渡しておけばいいんだよ」
やはり追いはぎだった。いや、勇者がゴブリンの群れを倒すのは全く間違ったことではないのだが。見た目上は追いはぎだった。
勇者は目ぼしい食料を物色していたが、岩に埋まったゴブリンが語り掛けてきた。
「グゲゲ・・・・いい気になるなよ・・・勇者よ・・・。
貴様は魔王様に捧げる生贄に選ばれた・・・・。
まもなく生贄の儀式の準備が整う。
そうすれば貴様の命ももう終わりダ・・・・・!!!」
「・・・・・」
いきなりゴブリンがつらつらと語ってきたのを、ライカはしかめっ面で聞いていたが・・・・、
すぐにゴブリンのところに近寄って行って、しゃがみこんでゴブリンの顔を覗き込んだ。
「どういうことだ?テメェ」
「グゲゲ・・・貴様はやりすぎたのだ・・・。
強すぎた、と言ってもいい。
強い力を持つ魂は、魔王様への何よりの捧げものとなる。
名誉なことだぞ、人間よ・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・?」
ライカが何も言わないので、ゴブリンは不思議に思ったようだ。
少しすると、ライカがようやく喋った。
「それで?」
「・・・?」
「そういう話はもう分かったから、他に何か知ってたら全部言え!!」
「グゲゲ・・・・もう、無い・・・・」
「そうかい」
そう言うとライカはもう一度聖剣を振りかぶり。
・・・・さっきより念入りに振りかぶり。
「もうちょっと具体的な事言え、てめぇええええ!!!!」
思いっきり振りぬいて、ゴブリンたちを遥か彼方に飛ばしてしまった。
「チッ、またはずれか」
ライカは飛んで行ったゴブリンたちを眺めたあと、奪い取った食料の品定めを再開した。
すると後ろから一人の少女が近づいてくる。
「キミってもしかして、いつもああやって追いはぎしながら旅してるわけ?」
ライカは振り返って、声の主、シルフィアの方を見た。
「いつもなわけねぇだろ。
でもここら辺は村もないし、そこらに食べられそうなもんも無いから、使えるもんは使わないとな」
それほどの荒野である。
シルフィアはライカから別の場所へと視線を移した。
ライカもそちらを見る。
ライカ達が立っている場所から少し行くと深い谷がある。谷は遥か遠くまで続いている。
その底の一角に、深く暗い洞窟が大きく口を開いていた。
魔王城へ続く道、「死の谷の迷宮」の入り口である。
◆
「いやー、でもやっぱり生きてたんだね。いや、もちろん信じてたけどさ。
こうしてまた会えてよかったよー」
「よく平気な顔でそんなこと言えるな。埋まってる人間を無視してどっかに旅立つか?普通救助活動するだろ」
ライカとシルフィアは谷底に降りながら、ファイレーンの城の後の事を話しあってていた。
降りると言っても崖を降りているわけではなく、歩いて降りられる坂を探して降りているわけだが。
「しょうがないだろー。四天王を倒すような人間がちょっと埋まっちゃってるのと、ケガした普通の兵士、どっちが心配かと言うと・・・?」
「う、うーむ・・・?」
意外なことに、ちょっと納得しかけているらしい。
「いや、それは仕方ないとしても、兵士を村に届けた後に探しに来るとか、あるんじゃねぇか?」
「結構細かいこと気にするんだなー」
「細かくねぇだろ!?」
まあ実際は、シルフィア達・・・魔王軍からしたら、もしあれで埋まって死んでしまってもラッキーでしかないので、わざわざ探しに行かなかったわけだが、もちろんそんな事は本人には言えない。
それに、あんなことで死ぬわけない、と思っていたのも本当である。
「大体、村からこの場所に来るなら、あの城は通り道だろ?
俺も村に行ったけど、すれ違ったりもしなかったぞ?」
「・・・・悪かったよ。ボクも本当は助けに行ったり、村で待ってたりしたかったけど、急に別のところに寄らなきゃいけなくなったんだ」
だいぶ苦しい言い訳なので、ライカの追及が来ないようにすぐに話題を変える。
「そんなわけで、キミの後を追ってきた形になるんだよね。
幸いキミの後を追いかけるのは楽だったよ。
いくつかの村や魔王軍相手に暴れまくってたみたいだから」
「村では暴れてねーよ」
「その割に、村人たちは随分怯えていたけど・・・・」
とは言え、シルフィアが実際にライカの足跡を全部見てきたわけではないが。
何せシルフィアは魔王城から出てきたのだから、ライカとは逆方向からこの地に来たことになる。
まあ、多少情報収集のため、ぐるっと大回りして、ライカの最期の方の足跡を確かめてから到着するようにはしたが。
「それで、聞いたんだよね、あの噂。
ライカもさっきのゴブリンたちから情報引き出そうとしていたよね」
「なんだ、シアも聞いたのか。あのへんな話」
「まあね、モンスターが勇者を探し回ってるって、村の人も噂してたし」
シルフィアは、坂の急なところで少しバランスを崩して、おっとっと、と漏らしながら後に続けた。
「魔王軍は、勇者を力あるものと認めて、
魔王への生贄にするためにその行方を捜しているって」
◆
「魔王様に生贄?」
四天王の作戦会議の中で、シルフィアはファイレーンの説明の中のその言葉に疑問を投げかけた。
「魔王様って、生贄とか食べるんだっけ?」
「そんなもの食べませよ。シルフィアも知ってるでしょう」
冷静に突っ込まれてしまった。言い出したのはファイレーンなのに。
「生贄と言うのは建前です。
魔王軍は勇者を、脅威ではないとはいえ大きな力を持っていると認めた、ということにします」
まあ本当は、認めるも何も恐れ慄いているわけだが。
「そして魔王軍は、そんな勇者を魔王の生贄にすると決め、
生贄の儀式のために勇者を死の谷の洞窟へ連れて行こうとしている、ということにします。
そういう噂を人間族にも伝わるように流します」
ファイレーンはそこで一度、質問などがないかを待つためにシルフィアとウォーバルを見たが、二人とも口を挟むのはやめて話の続きを待っていた。
「そうして儀式の場所に勇者を連れてきたら、そこで最終決戦です。
この作戦がなぜいいかと言うと、
『儀式』のために『四天王の三人が揃っている必要があった』と言う説明ができるからです。
勇者と戦うために三人必要だったのではなく、儀式のために三人必要だった、ということです」
シルフィアは久しぶりに素直に感心していた。
「なるほど。そういう言い訳さえあれば、勇者に勝てないから三人がかりで戦ったんだろう、と評価を下げなくていいわけだ」
「ハッ、そんなことで感心してどうするんだ」
ウォーバルは不満そうだが、作戦そのものに異論はないようだった。
「これで三人がかりで戦う事の正当性はバッチリです!」
ファイレーンはそこまで自信満々に言った後・・・急に自信なさげに肩を落とした。
「だったんですが、さっきのグリーズが何か変なことしないか凄い不安なんですが・・・」
先ほど突然現れては消えていった怪しさ満点の男は、ファイレーンを大きな不安に陥れたようだ。
「もー。さっきも言ったじゃん。あいつの事は気にしたってどうしようもないよ。
何するか全然わかんないけど、何もしないかもしれないし。
首輪つけて閉じ込めておけるようなヤツでもないし。
他にいい作戦がないなら、それでいくしかなくない?」
グリーズがいなくなった後、一番心配しだしたのは、グリーズの事をよく知らなかったファイレーンだった。
逆にシルフィアとウォーバルは、彼の人となりを知っているだけに、
――――つまり、心配してもどうしようもない、と言うことを知っているだけに、
ファイレーンを落ち着かせる立場に回った。
それで出た結論が先ほどシルフィアが言ったことだった。
「ハッ、まあ次にあいつが出てきたら問答無用で叩きのめして身動きできないようにしてやるよ」
ウォーバルはグリーズの事はずっと怒りの対象ではあるようだ。
シルフィアはやれやれ、といった様子だ。
ファイレーンはなんとか心を落ち着かせた・・・・というか、考えても仕方ないことだと覚悟を決めたようだ。
「そうですね・・・。では、勇者は魔王の生贄にする、ということで、
そちらの準備も進めていきます」
◆
と言うわけで、シルフィアは魔王の生贄である勇者と共に、死の谷の迷宮の入り口、崖の底までたどり着いたのである。
「さてと・・・・分かっていた事だけど、ウジャウジャいるねー」
ライカとシルフィアが崖下に来るのを、隠れて律義に待っていたのだろうか。見計らったかのように、沢山のモンスターが姿を現し、二人を取り囲み始めた。
「ケッ!まあ生贄にしようなんて話をペラペラ喋ってんだからな。待ち伏せしてるのは当然だろうな」
ライカは勿論、それを分かった上でここまで来たのだ。
魔王城に行くにはここを通るしかないし、それで怯むようなライカではなかった。
(本当は他にも通り道はあるけど、魔王軍しか知らない道だからね)
シルフィアは心の中でそう呟きながら、モンスターの群れをみた。
一つ目の巨人サイクロプス。巨大な怪鳥ガルーダ、様々な武器を構えたゴブリンの上級兵団、毒の霧が集まったガス生命体ポイズンシャドウ、三つ首の魔獣ケルベロスもいる。
動く鎧をはじめとするファイレーンの軍団もいる。今回は岩の巨兵ゴーレムも追加されている。
「さてと、生贄ってのがどういう事されるのか分からねぇが、取り合えずどこかに優しくご招待、ってわけじゃなさそうだ。
お望み通り戦って・・・・ぶっ倒して先に進ませてもらうぜ!!」
ライカはそう吠えてモンスターの中に突っ込んでいった!
シルフィアも心の中で決意を新たにする。
(まずは一生懸命戦って・・・・ボクは途中で敵にさらわれて人質になる!!!)
草も生えない荒野に罵声が響き渡る。
勇者ライカがゴブリンの群れを退治・・・追いはぎ?しているところだ。
「オラァ!」
ライカが聖剣セインリオンを振りぬけると、ゴブリンたちはまとめて吹き飛ばされ、そのまま岩に当たると、岩まで崩して、ゴブリンたちは岩に生き埋めになってしまった。
「ケッ!最初から食い物渡しておけばいいんだよ」
やはり追いはぎだった。いや、勇者がゴブリンの群れを倒すのは全く間違ったことではないのだが。見た目上は追いはぎだった。
勇者は目ぼしい食料を物色していたが、岩に埋まったゴブリンが語り掛けてきた。
「グゲゲ・・・・いい気になるなよ・・・勇者よ・・・。
貴様は魔王様に捧げる生贄に選ばれた・・・・。
まもなく生贄の儀式の準備が整う。
そうすれば貴様の命ももう終わりダ・・・・・!!!」
「・・・・・」
いきなりゴブリンがつらつらと語ってきたのを、ライカはしかめっ面で聞いていたが・・・・、
すぐにゴブリンのところに近寄って行って、しゃがみこんでゴブリンの顔を覗き込んだ。
「どういうことだ?テメェ」
「グゲゲ・・・貴様はやりすぎたのだ・・・。
強すぎた、と言ってもいい。
強い力を持つ魂は、魔王様への何よりの捧げものとなる。
名誉なことだぞ、人間よ・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・?」
ライカが何も言わないので、ゴブリンは不思議に思ったようだ。
少しすると、ライカがようやく喋った。
「それで?」
「・・・?」
「そういう話はもう分かったから、他に何か知ってたら全部言え!!」
「グゲゲ・・・・もう、無い・・・・」
「そうかい」
そう言うとライカはもう一度聖剣を振りかぶり。
・・・・さっきより念入りに振りかぶり。
「もうちょっと具体的な事言え、てめぇええええ!!!!」
思いっきり振りぬいて、ゴブリンたちを遥か彼方に飛ばしてしまった。
「チッ、またはずれか」
ライカは飛んで行ったゴブリンたちを眺めたあと、奪い取った食料の品定めを再開した。
すると後ろから一人の少女が近づいてくる。
「キミってもしかして、いつもああやって追いはぎしながら旅してるわけ?」
ライカは振り返って、声の主、シルフィアの方を見た。
「いつもなわけねぇだろ。
でもここら辺は村もないし、そこらに食べられそうなもんも無いから、使えるもんは使わないとな」
それほどの荒野である。
シルフィアはライカから別の場所へと視線を移した。
ライカもそちらを見る。
ライカ達が立っている場所から少し行くと深い谷がある。谷は遥か遠くまで続いている。
その底の一角に、深く暗い洞窟が大きく口を開いていた。
魔王城へ続く道、「死の谷の迷宮」の入り口である。
◆
「いやー、でもやっぱり生きてたんだね。いや、もちろん信じてたけどさ。
こうしてまた会えてよかったよー」
「よく平気な顔でそんなこと言えるな。埋まってる人間を無視してどっかに旅立つか?普通救助活動するだろ」
ライカとシルフィアは谷底に降りながら、ファイレーンの城の後の事を話しあってていた。
降りると言っても崖を降りているわけではなく、歩いて降りられる坂を探して降りているわけだが。
「しょうがないだろー。四天王を倒すような人間がちょっと埋まっちゃってるのと、ケガした普通の兵士、どっちが心配かと言うと・・・?」
「う、うーむ・・・?」
意外なことに、ちょっと納得しかけているらしい。
「いや、それは仕方ないとしても、兵士を村に届けた後に探しに来るとか、あるんじゃねぇか?」
「結構細かいこと気にするんだなー」
「細かくねぇだろ!?」
まあ実際は、シルフィア達・・・魔王軍からしたら、もしあれで埋まって死んでしまってもラッキーでしかないので、わざわざ探しに行かなかったわけだが、もちろんそんな事は本人には言えない。
それに、あんなことで死ぬわけない、と思っていたのも本当である。
「大体、村からこの場所に来るなら、あの城は通り道だろ?
俺も村に行ったけど、すれ違ったりもしなかったぞ?」
「・・・・悪かったよ。ボクも本当は助けに行ったり、村で待ってたりしたかったけど、急に別のところに寄らなきゃいけなくなったんだ」
だいぶ苦しい言い訳なので、ライカの追及が来ないようにすぐに話題を変える。
「そんなわけで、キミの後を追ってきた形になるんだよね。
幸いキミの後を追いかけるのは楽だったよ。
いくつかの村や魔王軍相手に暴れまくってたみたいだから」
「村では暴れてねーよ」
「その割に、村人たちは随分怯えていたけど・・・・」
とは言え、シルフィアが実際にライカの足跡を全部見てきたわけではないが。
何せシルフィアは魔王城から出てきたのだから、ライカとは逆方向からこの地に来たことになる。
まあ、多少情報収集のため、ぐるっと大回りして、ライカの最期の方の足跡を確かめてから到着するようにはしたが。
「それで、聞いたんだよね、あの噂。
ライカもさっきのゴブリンたちから情報引き出そうとしていたよね」
「なんだ、シアも聞いたのか。あのへんな話」
「まあね、モンスターが勇者を探し回ってるって、村の人も噂してたし」
シルフィアは、坂の急なところで少しバランスを崩して、おっとっと、と漏らしながら後に続けた。
「魔王軍は、勇者を力あるものと認めて、
魔王への生贄にするためにその行方を捜しているって」
◆
「魔王様に生贄?」
四天王の作戦会議の中で、シルフィアはファイレーンの説明の中のその言葉に疑問を投げかけた。
「魔王様って、生贄とか食べるんだっけ?」
「そんなもの食べませよ。シルフィアも知ってるでしょう」
冷静に突っ込まれてしまった。言い出したのはファイレーンなのに。
「生贄と言うのは建前です。
魔王軍は勇者を、脅威ではないとはいえ大きな力を持っていると認めた、ということにします」
まあ本当は、認めるも何も恐れ慄いているわけだが。
「そして魔王軍は、そんな勇者を魔王の生贄にすると決め、
生贄の儀式のために勇者を死の谷の洞窟へ連れて行こうとしている、ということにします。
そういう噂を人間族にも伝わるように流します」
ファイレーンはそこで一度、質問などがないかを待つためにシルフィアとウォーバルを見たが、二人とも口を挟むのはやめて話の続きを待っていた。
「そうして儀式の場所に勇者を連れてきたら、そこで最終決戦です。
この作戦がなぜいいかと言うと、
『儀式』のために『四天王の三人が揃っている必要があった』と言う説明ができるからです。
勇者と戦うために三人必要だったのではなく、儀式のために三人必要だった、ということです」
シルフィアは久しぶりに素直に感心していた。
「なるほど。そういう言い訳さえあれば、勇者に勝てないから三人がかりで戦ったんだろう、と評価を下げなくていいわけだ」
「ハッ、そんなことで感心してどうするんだ」
ウォーバルは不満そうだが、作戦そのものに異論はないようだった。
「これで三人がかりで戦う事の正当性はバッチリです!」
ファイレーンはそこまで自信満々に言った後・・・急に自信なさげに肩を落とした。
「だったんですが、さっきのグリーズが何か変なことしないか凄い不安なんですが・・・」
先ほど突然現れては消えていった怪しさ満点の男は、ファイレーンを大きな不安に陥れたようだ。
「もー。さっきも言ったじゃん。あいつの事は気にしたってどうしようもないよ。
何するか全然わかんないけど、何もしないかもしれないし。
首輪つけて閉じ込めておけるようなヤツでもないし。
他にいい作戦がないなら、それでいくしかなくない?」
グリーズがいなくなった後、一番心配しだしたのは、グリーズの事をよく知らなかったファイレーンだった。
逆にシルフィアとウォーバルは、彼の人となりを知っているだけに、
――――つまり、心配してもどうしようもない、と言うことを知っているだけに、
ファイレーンを落ち着かせる立場に回った。
それで出た結論が先ほどシルフィアが言ったことだった。
「ハッ、まあ次にあいつが出てきたら問答無用で叩きのめして身動きできないようにしてやるよ」
ウォーバルはグリーズの事はずっと怒りの対象ではあるようだ。
シルフィアはやれやれ、といった様子だ。
ファイレーンはなんとか心を落ち着かせた・・・・というか、考えても仕方ないことだと覚悟を決めたようだ。
「そうですね・・・。では、勇者は魔王の生贄にする、ということで、
そちらの準備も進めていきます」
◆
と言うわけで、シルフィアは魔王の生贄である勇者と共に、死の谷の迷宮の入り口、崖の底までたどり着いたのである。
「さてと・・・・分かっていた事だけど、ウジャウジャいるねー」
ライカとシルフィアが崖下に来るのを、隠れて律義に待っていたのだろうか。見計らったかのように、沢山のモンスターが姿を現し、二人を取り囲み始めた。
「ケッ!まあ生贄にしようなんて話をペラペラ喋ってんだからな。待ち伏せしてるのは当然だろうな」
ライカは勿論、それを分かった上でここまで来たのだ。
魔王城に行くにはここを通るしかないし、それで怯むようなライカではなかった。
(本当は他にも通り道はあるけど、魔王軍しか知らない道だからね)
シルフィアは心の中でそう呟きながら、モンスターの群れをみた。
一つ目の巨人サイクロプス。巨大な怪鳥ガルーダ、様々な武器を構えたゴブリンの上級兵団、毒の霧が集まったガス生命体ポイズンシャドウ、三つ首の魔獣ケルベロスもいる。
動く鎧をはじめとするファイレーンの軍団もいる。今回は岩の巨兵ゴーレムも追加されている。
「さてと、生贄ってのがどういう事されるのか分からねぇが、取り合えずどこかに優しくご招待、ってわけじゃなさそうだ。
お望み通り戦って・・・・ぶっ倒して先に進ませてもらうぜ!!」
ライカはそう吠えてモンスターの中に突っ込んでいった!
シルフィアも心の中で決意を新たにする。
(まずは一生懸命戦って・・・・ボクは途中で敵にさらわれて人質になる!!!)
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