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第1章 新たなる世界
冒険者ギルド
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「ほら、着いたぞ。ここが冒険者ギルドだ」
デュランがそういって指を差したのは、地下1階、地上階は3階(デュラン談)の大きな建物で、大きな観音開きの入り口扉の上には力こぶを作る腕を模したレリーフと、剣と杖が交差したレリーフが掲げられていた。
「ほー、思ってたよりずっと立派なのね」
『おっきいねー!』
ぽつりと呟いた私に反応するハク。
「そりゃお前、冒険者と言えば花形の職業だぜ?誰にでもなれる訳じゃないし、その体を張って皆を護るんだ。市民達も援助を惜しまないって訳だ」
「なるほど。戦う力のない人達の代わりにモンスターと戦うのが冒険者。それを支援するということは己の命を守るのと同義。理にかなってるわね」
「そういうこった、てかいつまでここで突っ立ってんだ?入るぞ?」
そういってデュランは観音開きの扉を開いた。重厚な扉だが、女子でも開け閉め出来るように滑車がつけられている。
中は冒険者達でごった返してい、なかった。
想像では粗野な連中が昼間っから酒をかっくらって給仕のお姉ちゃんに絡んだり、新人をいびって遊んだりしてるイメージだったんだけど。
「おい、なにしてんだ?受付いかないのか?」
「あ、はーい!」
デュランよ、あんた。せっかちって言われない?まぁ、良いわさっさと冒険者登録済ませるわよ。
ギルドの入り口から入って真っ直ぐ。中央にデパートのインフォメーションセンターのようなアイランドタイプの受付がある。
ちなみに、入って右手側はパーテーションで仕切られたフロアが広がっていて酒場件食堂。左手側はクエストボードと言われる、発注された依頼をランク別に振り分けた所謂掲示板のようなものがある。
その横手には上階に上がる階段と、階下に降りる階段が存在している。
受付前にたどり着くと
「じゃ、俺はクエストボード見てくるから。またな!」
とデュランとはそこで別れた。
受付窓口は3つ、今はアイドルタイム(入客が落ち着く時間)なのか、開いてるのは1つだけだ。私の前に2人ならんでいる。
そこに姿勢正しく座っているのは、見るからに可憐な美少女。
前で並んでいるお兄さん達が美少女にデレデレと話しかけている。
「なぁ、アイリーンちゃん。今日仕事後にどっか飯でもいかねぇか?」
「本日はご利用ありがとうございました。クエスト完了手続きと、報酬のお支払は完了致しました。またのご利用お待ちしております」
美少女は1ミリも笑顔を崩さずにスルースキルを発動。
「だめかー。アイリーンちゃん。いつかどこかに遊びに行けるように俺は諦めないぞ!」
「お疲れさまでした」
つ、強い。美少女もといアイリーンさん!その鉄壁の笑顔、崩せる気がしない。
前の身の程知らず2人組が去ったのでいよいよ私の番だ。
「いらっしゃいませ。本日はどのような御用向きでございますか?」
アイリーンさんが、鉄壁の笑顔を浮かべて穏やかな口調で話しかけてくる。
「冒険者登録をしたいのですが」
おずおずと私が切り出す
「はい。冒険者登録でございますね?失礼ですが、冒険者になるには一定値のステータスと戦闘、もしくは採取、解体、及び回復に通じるスキルの有無が問われます。従って強制的にステータスの開示を行って頂く必要がございます。もし、ステータスの開示に抵抗がございましたら、大変申し訳ございませんが冒険者登録をお断りさせて頂かなくてはなりません。どうなさいますか?」
アイリーンさんはつらつらと淀みなく規定事項を述べる。
ステータスかー。あのステータス出していいのかなー?
まぁ、いいか。ちょっと強いお姉さんってことで(自覚なし)。
「はい。問題ありません。ステータスの開示はどのようにすれば良いですか?」
私は笑顔で頷いて、先を促す。
「ご協力ありがとうございます。こちらに鑑定珠と呼ばれるマジックアイテムがございます。そちらに手を触れて頂ければ鑑定が完了致します」
アイリーンさんは、机の下に一瞬潜り込むと成人男性の握り拳くらいの大きさの水晶玉を私の前に丁寧に置いた。
「や、やりますね!」
なんとなく緊張しつつ、私は鑑定珠に手を触れる。すると一瞬閃光が走り鑑定珠がブルブルと震えだした。
「え、これ大丈夫ですか?」
私がアイリーンさんを見やると、アイリーンさんは鉄壁の笑顔を驚愕の表情に変えて鑑定珠を凝視している。
「こ、これは!……嘘でしょ?……ハッ!失礼致しました。大丈夫です。この鑑定珠はどのような物理攻撃も無効に出来るほど頑丈に造られておりますので」
ほっ。一安心。ぶっ壊したら弁償とか言われそうだし。あ、ブルブルが止まった。
「鑑定に出たお名前、レイコ=イツシマ様でお間違えないですか?」
「はい、間違えないです」
「レイコ様、大変申し訳ございませんが。これからギルド長と面談をして頂きたいのですが。この後ご予定はございますか?」
真剣な眼差しで私に語りかけるアイリーンさん。
え、やっぱステータスやばかった?問題があった?断ると色々まずいわよね?
「大丈夫です。このあとは街を見て回るくらいしか考えていなかったので」
「恐れ入ります。では、ご案内致します」
アイリーンさんは立ち上がると、机上に置いてあったボタンを押す。
アイリーンさんの受付口に、柵が出てきた。
一時休止中とやつだろう。
「そちらの白い狼はレイコ様の従魔でございますか?」
私の足元でおとなしく待っていたハクに目線を送るアイリーンさん。
「はい。そうです、連れて行っても?」
「すでに従魔をも従えているとは流石でございます。もちろんお連れいただいて構いません。ではご案内致します、こちらにどうぞ」
受付から出てきたアイリーンさんに促されて私はその後をついていくのであった。
デュランがそういって指を差したのは、地下1階、地上階は3階(デュラン談)の大きな建物で、大きな観音開きの入り口扉の上には力こぶを作る腕を模したレリーフと、剣と杖が交差したレリーフが掲げられていた。
「ほー、思ってたよりずっと立派なのね」
『おっきいねー!』
ぽつりと呟いた私に反応するハク。
「そりゃお前、冒険者と言えば花形の職業だぜ?誰にでもなれる訳じゃないし、その体を張って皆を護るんだ。市民達も援助を惜しまないって訳だ」
「なるほど。戦う力のない人達の代わりにモンスターと戦うのが冒険者。それを支援するということは己の命を守るのと同義。理にかなってるわね」
「そういうこった、てかいつまでここで突っ立ってんだ?入るぞ?」
そういってデュランは観音開きの扉を開いた。重厚な扉だが、女子でも開け閉め出来るように滑車がつけられている。
中は冒険者達でごった返してい、なかった。
想像では粗野な連中が昼間っから酒をかっくらって給仕のお姉ちゃんに絡んだり、新人をいびって遊んだりしてるイメージだったんだけど。
「おい、なにしてんだ?受付いかないのか?」
「あ、はーい!」
デュランよ、あんた。せっかちって言われない?まぁ、良いわさっさと冒険者登録済ませるわよ。
ギルドの入り口から入って真っ直ぐ。中央にデパートのインフォメーションセンターのようなアイランドタイプの受付がある。
ちなみに、入って右手側はパーテーションで仕切られたフロアが広がっていて酒場件食堂。左手側はクエストボードと言われる、発注された依頼をランク別に振り分けた所謂掲示板のようなものがある。
その横手には上階に上がる階段と、階下に降りる階段が存在している。
受付前にたどり着くと
「じゃ、俺はクエストボード見てくるから。またな!」
とデュランとはそこで別れた。
受付窓口は3つ、今はアイドルタイム(入客が落ち着く時間)なのか、開いてるのは1つだけだ。私の前に2人ならんでいる。
そこに姿勢正しく座っているのは、見るからに可憐な美少女。
前で並んでいるお兄さん達が美少女にデレデレと話しかけている。
「なぁ、アイリーンちゃん。今日仕事後にどっか飯でもいかねぇか?」
「本日はご利用ありがとうございました。クエスト完了手続きと、報酬のお支払は完了致しました。またのご利用お待ちしております」
美少女は1ミリも笑顔を崩さずにスルースキルを発動。
「だめかー。アイリーンちゃん。いつかどこかに遊びに行けるように俺は諦めないぞ!」
「お疲れさまでした」
つ、強い。美少女もといアイリーンさん!その鉄壁の笑顔、崩せる気がしない。
前の身の程知らず2人組が去ったのでいよいよ私の番だ。
「いらっしゃいませ。本日はどのような御用向きでございますか?」
アイリーンさんが、鉄壁の笑顔を浮かべて穏やかな口調で話しかけてくる。
「冒険者登録をしたいのですが」
おずおずと私が切り出す
「はい。冒険者登録でございますね?失礼ですが、冒険者になるには一定値のステータスと戦闘、もしくは採取、解体、及び回復に通じるスキルの有無が問われます。従って強制的にステータスの開示を行って頂く必要がございます。もし、ステータスの開示に抵抗がございましたら、大変申し訳ございませんが冒険者登録をお断りさせて頂かなくてはなりません。どうなさいますか?」
アイリーンさんはつらつらと淀みなく規定事項を述べる。
ステータスかー。あのステータス出していいのかなー?
まぁ、いいか。ちょっと強いお姉さんってことで(自覚なし)。
「はい。問題ありません。ステータスの開示はどのようにすれば良いですか?」
私は笑顔で頷いて、先を促す。
「ご協力ありがとうございます。こちらに鑑定珠と呼ばれるマジックアイテムがございます。そちらに手を触れて頂ければ鑑定が完了致します」
アイリーンさんは、机の下に一瞬潜り込むと成人男性の握り拳くらいの大きさの水晶玉を私の前に丁寧に置いた。
「や、やりますね!」
なんとなく緊張しつつ、私は鑑定珠に手を触れる。すると一瞬閃光が走り鑑定珠がブルブルと震えだした。
「え、これ大丈夫ですか?」
私がアイリーンさんを見やると、アイリーンさんは鉄壁の笑顔を驚愕の表情に変えて鑑定珠を凝視している。
「こ、これは!……嘘でしょ?……ハッ!失礼致しました。大丈夫です。この鑑定珠はどのような物理攻撃も無効に出来るほど頑丈に造られておりますので」
ほっ。一安心。ぶっ壊したら弁償とか言われそうだし。あ、ブルブルが止まった。
「鑑定に出たお名前、レイコ=イツシマ様でお間違えないですか?」
「はい、間違えないです」
「レイコ様、大変申し訳ございませんが。これからギルド長と面談をして頂きたいのですが。この後ご予定はございますか?」
真剣な眼差しで私に語りかけるアイリーンさん。
え、やっぱステータスやばかった?問題があった?断ると色々まずいわよね?
「大丈夫です。このあとは街を見て回るくらいしか考えていなかったので」
「恐れ入ります。では、ご案内致します」
アイリーンさんは立ち上がると、机上に置いてあったボタンを押す。
アイリーンさんの受付口に、柵が出てきた。
一時休止中とやつだろう。
「そちらの白い狼はレイコ様の従魔でございますか?」
私の足元でおとなしく待っていたハクに目線を送るアイリーンさん。
「はい。そうです、連れて行っても?」
「すでに従魔をも従えているとは流石でございます。もちろんお連れいただいて構いません。ではご案内致します、こちらにどうぞ」
受付から出てきたアイリーンさんに促されて私はその後をついていくのであった。
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