美容魔法で美の女神になる

麗月

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第1章 新たなる世界

農業都市ニブラヘイマ

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 私たち、風になってる!

 そんな感じで私はハクを抱っこした状態で、高速飛行中。
しかし、ステータスってやつの恩恵なのか知らないけど、幼体とはいえ魔物なだけあって既に小型犬の成犬よりもかなり大きいし、割と重いハクを抱えているというのに全然平気なの。

『レイコ様~すごい速いね~』

 とはいえ、はしゃいでジタバタするこの子。力強いわー。

「ちょっとハク。暴れないの。落ちちゃうでしょ?」

『ごめんなさーい……』

めっ!と少し怒れば素直に謝る。人間の子供より断然賢い。……気がする。親の欲目?

 飛び始めてかれこれ1時間位経ったかな?
遠くに街らしき建造物の群が見えた。

「おー!第1の街発見じゃーん!急げ急げ!」

 さらにスピードをあげて飛行する私に、ハクはワフワフと大喜びだ。

「こら!だから暴れんなってば」

『ごめんなさーい……』

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 そんなこんなで、無事転移初の街に到着した。いやー、異世界の街ですよ!緊張するよねー。

 上空から望むこの街は、思ってたよりも規模が大きい。半分は畑のようだが、建造物もかなりの数建てられているように見える。

 念の為すこーし離れたところで地上に降り立った私は。門をくぐるための列に大人しくならんだ。

 初めてこの世界の住人に出逢ったけどここは文化圏的にいうと欧州?
あ、いや。文化が欧州っぽいんじゃなくて人種が白人のような色素の薄い肌と金髪、茶髪が多く見られる。

 見るからに言葉の通じなさそうな外見だけれど、日本語しか喋れなかった私はもう居ない。
手に入れたアビリティー異世界全言語ワードマスターの恩恵で得た、異世界言語スキル。
これを駆使すれば、コミュニケーションなんて余裕!

 さてさて、並ぶこと15分位。ようやく門番のところまでたどり着いた。

「ようこそ。農業都市ニブラヘイマへ。身分証を提示してくれ」

み、身分証?What?
そんなの持ってないわよ。
ここは、田舎者のふりをするわよ!

「私、魔法使いのレイコ。この子は犬のハク!ごめんなさい門番さん。私、身分証を持っていないんです。田舎から出てきたばかりで……。やっぱり身分証がないと入れませんか?」

 必殺おめめウルウル攻撃をすると、門番のお兄さんは頬を少し染めて戸惑った表情を見せる。

「う、本来であれば身分証の無いものはボディチェックから犯罪歴の確認、その他諸々の手続きが必要なんだが……仕方ない。保証金の銀貨1枚は持っているかい?それを預かれば、冒険者ギルドにでも行って身分証を発行して見せに来るまで猶予をあげるよ」

 これが魅了の力なのかしら。ふっ、他愛ない。私はポケットを探るふりをして異次元収納インベントリから女神様の用意してくれておいた銀貨を1枚取り出す。

「これで良いですか?」

 そっと手を握りながら銀貨を手渡す私。

「お、おう。いいぜ通りな。後で必ず身分証を見せに来てくれよ?」

 顔を真っ赤にしながら通してくれたお兄さんにお礼を言いつつ門をくぐりぬける。

その先には、赤レンガで舗装された道が広がり。その脇を固める中世ヨーロッパ風(知らんけど)の建物を抜けると広場には噴水のようなものが設置されていた。

「わー!きれいねハク」

『うん!』

 ハクがはしゃいで暴れるもんだからそっと地面に下ろしてあげると、私の周りを飛び跳ねながら駆け回る。

「こーら。あんまりはしゃがないのよ?周りの人の迷惑になるから」

 微笑ましい光景だが、周りへの配慮も必要だ。ここは割と人通りが多いからハクがぶつかって怪我でもしたら大変。
あら?周りへの配慮っていうかハクの心配しかしてないわね私。まぁ、いいか。


「さーて!冒険者ギルドってどこにあるのかなー?」

 思わず大きめの独り言を発してしまったので、慌てて口を塞いで周りをキョロキョロする私。

「ぶはっ!」

 突然、後方から吹き出す声が聞こえたので振り返ると若い戦士風の格好をしたお兄さんが1人で笑っていた。

じーっと見ているとこちらに近づいてきて

「わりぃわりぃ。いや、あんまりにもハッキリした独り言だったもんでよ。笑っちまった。あんた冒険者ギルドに行きたいのか?」

 と話しかけてくるもんだから。こっちは赤面よね。
 年の頃なら17、8?少しつり目気味で鋭さを宿した男らしい顔つきに、まだ成長途中の引き締まった身体にはなめした革性の鎧を纏いその腰には武骨な鞘に収められた剣をはいている。見るからに冒険者だな。
 少し警戒しつつもこれも何かの縁かと思い質問に答える。

「はい。冒険者登録をして頂こうと思って」

「ふーん。なら付いて来な。俺も今からギルドに行くから案内するぜ?」

 そういってニカッと笑う。あ、いい奴だ。

「ありがとうございます。助かります」

そういって軽くお辞儀をする私。

「ついでだし、気にすんな。じゃあさっそく行くけどいいか?」

「はい!大丈夫です。ハクっ行くよ?」

 ワフワフ言いながら、私の足にまとわりついてくるハクを抱っこして目でお兄さんにいつでも良いよと促すが、お兄さんはハクをじーっと見つめ、訝しげな表情をしている。

「そいつ、もしかして魔獣?」

「えっ!?」

なんで解ったの!?ハクにはステータス隠蔽の魔法をかけていたのに。

「いや、気のせいか。その顔立ちとか毛並みとかが知ってる魔獣に似てたんでな。そもそも色ぎ違うし。悪かったな行こうぜ」

 ちっ。ただの勘か。驚かせやがって。
スタスタと歩くお兄さんを追い掛けながらほっと胸を撫で下ろす。

「ところで、お兄さん。名前はなんて言うんですか?私は魔法使いのレイコ。この子はハクです」

「おう、レイコか。よろしくな!俺はデュランだ。呼び捨てでいいぜ?」

「デュランさんですね!ギルドまでよろしくお願いします」

「呼び捨てでいいって」

笑いながら言うデュラン。一見取っ付きにくそうな外見だが人懐っこい性格のようだ。

その後も他愛のない話をしながらギルドへの道を歩いた。


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