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ある日、俺はリザと一緒に異世界でバーベキューをしていた。


「美味いな、これ!」


リザは舌鼓を打ちながら満足そうに言った。今日の晩飯は俺が狩ってきたオークの肉と山菜だ。味付けには塩や胡椒を使っているが、素材の味を生かしたシンプルな料理になっている。


「ああ、やっぱり肉は最高だな」


俺も肉を頬張りながら答える。するとリザはニヤリと笑った。


「ところで主は最近、女遊びが過ぎるのではないか?」


「え? そうか?」


「そうだ、この前もメイドのクロエを口説いていたではないか」


「別に口説いたつもりはないんだがな……」


俺は苦笑しながら答える。確かに最近の俺はリザと一緒に異世界に行っては女と遊んでいるが、別に下心があるわけじゃないし……。まあでも傍から見ればそう見えるのかもしれないけどな。


「それに昨日はダークエルフの女と遊んでいただろう?」


「まあ、そうだな」


「全く主は節操がないな」


リザは呆れたように言うが、別にそういうわけじゃないんだけどな。ただ単に女と遊ぶことが好きなだけだし。でも確かに最近少し遊び過ぎているかもしれないな。自重しないと……と思っていると、リザが顔を近づけてきたのでドキッとする。彼女は妖艶な雰囲気を醸し出しながら耳元で囁いた。


「私ならいつでも相手になってやるぞ?」


「また今度な」


俺は苦笑しながら答えると、再び食事を続けた。リザも満足そうに笑みを浮かべると肉を頬張った。俺たちはしばらくの間のんびりとした時間を過ごしたのだった。


「おい、妙な部屋を見つけたぞ」


メイドのクロエが作ってくれた部屋でくつろいでいると、リザが部屋に入って来た。


「妙な部屋?」


俺が聞き返すと彼女は説明を続ける。


「ああ、掃除をしていたら地下室に続く扉を見つけたのだ」


「ふむ、面白そうだな。行ってみるか」


俺は興味本位で扉を開けるとリザと共に階段を降りていくことにした。薄暗い廊下を進むと奥に重厚な鉄の扉が見える。


「ドアノブが無いな」


しかしドアノブがどこにも見当たらない。


「これでは中にはいれぬではないか?」


「だからあんたをを呼んだのよ」


「魔法で壊せばいいのでは?」


「無理よ。この扉には反魔法の術式が組み込まれてる。この部屋では魔法は使えないわ」


「なら物理で壊すまでよ!」


リザはフェンリルの姿になると、勢いよく壁に突進するが、背後からリザが現れてクロエを勢いよく突き飛ばした。


「どうやら、空間魔法の一種らしいわね。しかもかなり強力なもの……」


「魔法でも駄目、物理攻撃でも駄目……か」


確かにこりゃ無理だな。……いや、待てよ。


「なんとかできるかもしれないぞ」


俺はアイテムボックスから、適当な剣を取り出す。


「まずはこいつに【切断】の付与をかける」


剣に魔力で性能を強化する、付与魔法をかける。


「そんで……はあっ!」


俺は気合を入れて扉を斬りつけた。すると扉は真っ二つに切り裂かれる。


「空間の魔法がかかってるなら、剣でそいつをぶった切ればいいだけだ」


「そ、そんなやりかたで突破するとは……」


リザとクロエが呆然とする中、俺は観音開きになった扉に手をかける。


「ここまでするからには重大なものが隠されているはずだ」


俺はゆっくりと扉を開ける。そこには……。


「じ、じいちゃん!?」


中は様々なゲームや漫画が置かれている大部屋であり、10メートルほどのモニターでゲームをしているのは、俺の祖父である新城剛三だった。


「ん? なんだ、直人か。久しぶりだな」


剛三はゲームに夢中になっているようで、こっちを見ずに返事をしてきた。俺は呆れながらも話しかける。


「こんなところで何やってるんだよ?」


「見て分からんのか? ゲームをしておったのだ」


「それは見たら分かるよ! そうじゃなくて、なんでここにいるのかって聞いてるんだよ!」


「うむ、話せば長くなるのだが……」


じいちゃんはゲームを止めてこちらを向いた。そして真剣な面持ちで話し出す。


「わし、実は死んでいませんでしたー!」


「……はい?」


「実は前から公安の連中に異能課に入れと勧誘されておってな。断ったんじゃがしつこくてのう……しまいには拉致されそうになったんで、死んだことにして屋敷で引きこもる事にしたのじゃ」


「何だそりゃ……」


俺は呆れてため息をついた。葬式であんなに泣いた自分が馬鹿みたいじゃないか。


「それでこの地下室でずっとゲームをしてたってわけか……」


「うむ、ここからなら誰にも見つからずにゲームができるからな」


「全く……何やってるんだよ」


俺は呆れながら言いつつも、どこか安心する気持ちもあった。この人が生きていたのは純粋に嬉しいし、じいちゃんが死んだなんて未だに信じられなかったからだ。するとクロエが近づいてくる。


「あんたがナオトのおじいさん? 私はナオトのメイドをしているクロエよ」


「いい乳をしておるな、儂の好みだぞ」


「ちょ、どこを見てるのですか!?」


クロエが慌てて胸を隠した。じいちゃんは気にせず続ける。


「若い女子はいいのう……直人もハーレムを作ってると聞いてたからどんなもんかと楽しみにしておったんじゃよ」


「いや、俺は別にそんなつもりはないんだけど……」


「まあよい、それよりゲームでもやらんか?」


じいちゃんはそう言ってコントローラーを手渡してきた。俺は渋々受け取ると画面を見る。


「バトラーズファイター2か……」


昔流行った格闘ゲームだ。じいちゃんとはよくこのゲームで対戦していたっけ。


「懐かしいな……よし、やるか」


俺はコントローラーを握って操作を始める。


「手加減はいらんぞ、本気でかかってこい」


「ああ、じいちゃん相手に手なんて抜けるかよ。俺は全力でいくぜ!」


こうして俺とじいちゃんの壮絶な対戦が始まったのだった。


「はぁ……はぁ……やるのう直人……」


「じいちゃんこそ、相変わらず強いな」


結果は俺の勝利だったが、かなりギリギリの戦いだった。やはりゲームとはいえ負けるのは悔しかったが、それ以上に久しぶりにじいちゃんとゲームができて嬉しかった。


「それで、じいちゃんはこれからどうするんだ?」


「儂か? また引きこもる予定だが」


「……そうか、まあほどほどにな」


「うむ、お主もハーレムとやらを作るのはほどほどにな」


「……覚えてたのか」


それから少し話をした後に、じいちゃんと別れた。地下室から屋敷に帰ろうとする俺にリザが声をかけてくる。


「なあ主よ、本当に良かったのか?」


「何がだ?」


「あの老人のことだ。主にとって家族のようなものなのだろう? あのような別れ方でよかったのか?」


リザに言われて俺は考える。確かにじいちゃんとはもっと話していたかったけど、本人が引きこもると言っている以上、無理やり連れ出すのも良くないだろう。


「いいんだよ。じいちゃんは今でも生きてるって分かっただけで十分さ」


「主がそう言うならいいのだが……」


「それより腹減ったし、晩飯にするか」


「うむ!」


そうして俺たちは現実世界へと帰っていったのだった。
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