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クロエが戻ってくるまでの間、俺たちは学園長と共に待つことになった。その間特に会話は無かったのだが、不思議と気まずい雰囲気ではなかった。何故ならお互いのことを信頼しているからだろう。だからこそ沈黙さえも心地良いと感じられていたのかもしれない。そして数分後、鏡の中から姿を現したのは……なんとアリアだった!


「え? なんで……?」


俺が困惑していると、学園長が説明を始めた。


「実はね……君の能力は影を浄化する力だけでなく、その力を他人に与えることも出来るんだ」


その言葉に俺は驚きを隠せなかった。まさかそんなことが出来るとは思わなかったからだ。だが同時に納得もできた。確かにそれなら俺の能力と組み合わせることでより強力な力になるはずだと思ったからだ。


「つまり……私の力をカイトさんに?」


アリアの問いかけに俺は頷いた後、学園長の方を見た。すると彼は微笑みながら言った。


「そうだ、そしてクロエ君は空間を操る力を手に入れた」


その一言を聞いてようやく理解することができた気がした。つまり今目の前にいる二人はそれぞれ新しい力を手に入れたということだ。そしてそれは影を倒すための力となるだろう。そう考えると自然と胸が高鳴ったのを感じたのだった……


「これで訓練は終わりだ」


学園長の言葉に俺たちは顔を上げた。いよいよ影との戦いが始まるのか……そう思うと緊張せずにはいられなかったのだが、それと同時に興奮もしていた。何故ならようやく自分にしかできない役割を見つけたからだ。


「さあ、行こう」


俺たちは学園長の後に続いて歩き出した。廊下を進むにつれ、窓から差し込む陽光が徐々に薄れていくのが分かった。外の世界は既に夕暮れ時を迎えつつあったのだろう。


「カイト、大丈夫か?」


アリアが俺の横に並んで小声で尋ねてきた。彼女の瞳には心配の色が浮かんでいる。


「ああ、大丈夫だ。むしろ、お前こそ大丈夫か?突然新しい力を得たんだろう」


「うん、まだ少し戸惑っているけど……でも、この力で皆を守れるなら」


アリアの言葉に、俺は軽く頷いた。彼女の決意が伝わってきて、俺も背筋が伸びる思いがした。


学園長が立ち止まったので、俺たちも足を止めた。大きな扉の前だった。


「ここから先は、影の領域だ。君たちの力が試される時が来た」


学園長の声には重みがあった。俺たちは互いに顔を見合わせ、決意を確認し合う。


「カイトさん、アリアさん。二人の力を合わせれば、きっと勝てる」


クロエの声が響いた。彼女は少し離れたところに立っていて、俺たちを見守っているようだった。


「よし、行くぞ」


俺は深呼吸をして、扉に手をかけた。ゆっくりと開くと、向こう側には漆黒の闇が広がっていた。その中から、うごめく影の気配が感じられる。


「俺たちの世界は、ここで守る」


扉を開けた瞬間、俺たちの前に広がったのは想像を絶する漆黒の世界だった。足元さえ見えないほどの暗闇に、一瞬たじろいでしまう。だが、すぐに気を取り直した。俺には仲間がいる。そして、この闇を打ち払う力がある。


「行くぞ」と小さく呟き、一歩を踏み出す。


暗闇の中を進むにつれ、周囲からうごめく影の気配が強まってきた。まるで生き物のように蠢き、俺たちに襲い掛かろうとしているかのようだ。


「カイト、左!」


アリアの声に反応し、咄嗟に左を向く。そこには巨大な影の触手が伸びてきていた。俺は躊躇わず、右手を突き出す。


「はあっ!」


光が迸る。俺の手から放たれた純白の光が、影の触手を貫いた。触手は光に触れた瞬間、まるで霧のように消え去っていく。


「やったな、カイト!」


アリアの声に頷きながら、俺は周囲を警戒し続ける。一匹倒しただけで油断はできない。


「アリア、お前の番だ!」


俺の言葉に応じて、アリアが前に出る。彼女の手から放たれたのは、青白い光だった。その光は俺のものとは違い、まるで霧のように広がっていく。周囲の影が、その光に触れるとみるみる縮んでいった。


「すごい……これが俺の力をアリアが使った結果か」


感心していると、突然背後から冷たい気配を感じた。振り返ると、巨大な影の塊が俺たちに襲いかかろうとしていた。


「くっ……!」


咄嗟に身構えたその時、突如として空間が歪んだ。影の塊が宙に浮いたかと思うと、瞬時に別の場所へ転送されていた。


「危ないところでした」


クロエの声だ。彼女が空間を操る力を使って、俺たちを守ってくれたのだ。


「ありがとう、クロエ」


感謝の言葉を述べつつ、俺は再び前を向く。まだ戦いは始まったばかりだ。


「みんな、いけるな?」


俺の問いかけに、アリアとクロエが力強く頷く。三人で視線を交わし、互いの決意を確認し合う。


「よし、行くぞ!」


俺たちは息を合わせて前進する。影との戦いは、まだ始まったばかり。だが、俺たちには勝算がある。なぜなら、俺たちには互いを信じ合う絆があるからだ。闇の中を進みながら、俺は確信していた。この戦い、必ず勝つと。俺たちの力と絆があれば、どんな敵だって倒せる。そう、俺たちは最強なのだから。
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