悪役令嬢の兄に転生したので、妹を聖女に生まれ変わらせます

7

数日後、俺は学園でアリアとクロエに勉強を教えていた。


「お兄様、この問題はどう解くのですか？」


クロエが質問してくる。


「これはだな……」


俺が説明を始めると、アリアは目を輝かせながら聞いていた。その時、突然扉が開き、学園長が入ってきた。


「カイト君、来てくれ！」


緊迫した声に俺は立ち上がる。クロエとアリアも不安そうな表情を浮かべた。


「どうしたんですか？」


俺が尋ねると、学園長は深刻な表情で答えた。


「アルカディア王国の王族が学園を訪ねてきたんだ。何でも君に用があるらしい」


俺は眉をひそめた。一体どんな用件だろうか？ すると、学園長は意味深な笑みを浮かべた。


「実はね……君と婚約したいと言っているんだよ」


俺は目を丸くした。クロエとアリアも驚いた表情を見せる。


「お兄様、どういうことですか……？」


「カイト先生……」


二人の声からは怒りが感じ取れた。俺は慌てて弁解した。


「待て、誤解だ！ そんな事実はない！」


学園長は笑いながら言った。


「冗談だよ。でも、王族から求婚されるというのは名誉なことだろう？」


その言葉に俺はため息をつくしかなかった。そして、改めてアルカディア王国の王族に面会する準備を始めたのだった。アルカディア王国の王族は、美しく聡明な雰囲気を持つ女性だった。彼女の名前はリーベといい、年齢は俺より二つ上らしい。彼女は開口一番に言った。


「カイト様、あなたに一目惚れしました！」


彼女の言葉に、俺は思わず苦笑いを浮かべた。


「それは光栄ですが……何故俺なんかに？」


リーベは微笑みながら答えた。


「実は以前からあなたの噂を聞いておりました。その圧倒的な強さと優しい性格に憧れを抱いていたのです」


彼女の言葉を聞いて、俺は少し照れくさくなった。すると、クロエが突然口を開いた。


「お兄様は私のものです！」


アリアもそれに続くように言った。


「そうですよ！ カイト先生の一番弟子は私です！」


二人の強い主張に、リーベは驚いた表情を見せた。しかしすぐに笑顔に戻り、言った。


「もちろん、あなたたちも素敵よ。でも私はカイト様が好きなの」


クロエとアリアは納得いかない様子だったが、俺は彼女たちをなだめた。


「二人とも落ち着け。今はとにかく話を聞こうじゃないか」


俺の言葉に二人は渋々引き下がった。そして、改めてリーベの話に耳を傾けることにするのだった。彼女は真剣な眼差しで語り出した。


「実は最近になってアルカディア王国の情勢が不安定になってきています。隣国のダルク帝国と私たちとは敵対関係にあるのです」


リーベの言葉に、クロエとアリアも真剣な表情で聞いている。俺も静かに聞き入った。


「それで、私たちは考えたのです。隣国を安定させるためには、あなたの力が必要不可欠だと……」


俺は溜息をついた。どうやらただの恋愛話ではないようだ。


「つまり、帝国との戦争に備えて協力しろということですか？」


俺の言葉に、リーベは頷いた。そして、一枚の紙を取り出した。そこには帝国の軍の配置図が描かれていた。


「その通りです。カイト様、あなたには我が軍の先頭に立って戦って欲しいのです」


その言葉に、俺は思わず眉をひそめた。


「……それはつまり、俺に最前線で戦えということですか？」


リーベは少し迷った様子を見せたが、やがて静かに頷いた。クロエとアリアも不安そうな表情を浮かべている。しかし、俺は冷静に答えた。


「分かりました。協力しましょう」


クロエとアリアは心配そうに俺を見つめた。二人の顔を見ながら、俺は言った。


「大丈夫だ、心配いらない。俺が必ずみんなを守ってみせる」


その言葉にクロエとアリアも覚悟を決めたようだった。二人は同時に口を開いた。


「お兄様……どうかご無事で……」


「カイト先生……無事に帰ってきてくださいね」


そんな二人の言葉に、俺は笑顔で応えた。そして、リーベに向き直り、言った。


「では、行きましょうか」


リーベも笑顔で頷いた。そして、俺たち三人はアルカディア王国へと向かうのだった。