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翌日、俺とセレナは修行として、近くの森まで来ていた。


「今日の特訓は【ゴブリンの巣の討伐】だ」


「……【ゴブリンの討伐】の間違いですよね?」


「いや、ゴブリンの巣へ潜って、ゴブリン共を殲滅してこいって意味だぞ?」


「そ、そんなぁ……」


セレナが絶望的な表情を浮かべる。


「安心しろ。俺がついて行くから」


俺はそう言って、彼女の頭を撫でる。すると彼女は嬉しそうに笑みを浮かべたのだった。それからしばらく森を進むと、ゴブリンの巣が見えてきた。どうやら見張りがいるようだ。数は10体だ。


「『風纏剣』!」


セレナの放った風の刃は、10体のゴブリンを一撃で消し飛ばした。


「さすがだな。じゃあ中に入ろうか」


俺たちはゴブリンの巣の中に足を踏み入れた。


「巣の中は迷路みたいになってるから気をつけろよ。迷ったら終わりだ」


「わ、わかりました……!」


セレナが緊張した面持ちで答える。


「まあ俺がついてるから大丈夫だけどな」


それから俺たちは順調に奥へと進んでいった。道中で何度かゴブリンが現れたが、全て返り討ちにした。そしてついにボス部屋の前までやってきた。


「ここから先が巣の最深部だ。油断するなよ?」


俺がそう言うと、セレナは緊張した面持ちでコクリとうなずいた。俺と彼女は部屋の中に入る。すると中には巨大なゴブリンがいた。あれがボスだろう。


「ぐははは! 良く来たな人間ども! 生きて帰れると思うなよ!」


ボスが叫び声を上げると、他のゴブリンたちがぞろぞろと現れる。


「セレナ、行くぞ」


「はい!」


俺とセレナは同時に駆け出す。するとボスは巨大なこん棒を振り下ろしてきた。俺はそれを躱すと、剣を軽く振る。


ボトボトボト……!


ゴブリンたちは一瞬で大量のサイコロステーキに姿を変えた。


「な、なに!? 貴様一体何者だ!?」


ボスゴブリンが狼狽えている隙に俺は一気に間合いを詰める。そしてそのまま一刀両断にした。断末魔の悲鳴を上げながら、真っ二つになったボスゴブリンは動かなくなった。どうやら倒したらしい。


「す、凄いです……」


セレナは目を見開いている。


「まあこの程度ならな」


俺は剣を鞘に収めると、外に出る。


「次は【コボルトの巣の討伐】だ。行くぞ」


「え、まだやるんですか?」


「当たり前だろ? この辺りの魔物を一掃するまで終わらないからな」


「えぇ……そんなぁ……」


セレナは泣きそうな表情を浮かべる。だが俺は構わずに彼女を連れて歩き出したのだった。それから数時間後、ようやく全ての魔物を殲滅することができた。


「うぅ……やっと終わったぁ……」


セレナは地面に座り込みながら呟いた。辺りはもうすっかり暗くなっている。そろそろ帰らないとな……そう思っていると、セレナが急に抱き着いてきた。そしてそのまま唇を重ねてくる。俺はそれを黙って受け入れた。しばらく口づけを交わした後、彼女は唇を離すと言った。


「帰りましょう」


「ああ、そうだな」


俺たちは学園の寮についたのだった。
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