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私とカイトは教会の中を隅々まで調べたが、特に何も見つからなかった。


「何もないですね……」


私がため息をつくと、カイトは首を横に振った。


「いや、まだ何かあるはず……」


(何かあるのかな?)


私は首を傾げてカイトの方を見たが、彼は何も言わずに黙り込んでしまった。どうやらかなり集中しているようだ。邪魔にならないように静かにしていると、急に教会の扉が開いた……。


「ここにいるのはわかっている。大人しく投降しろ!」


そう言いながら入ってきたのは、王家の紋章をつけた鎧を着た兵士だった。私たちはすぐに身を隠したが、もう逃げ道はない。


(どうしよう……?)


私は不安になりながらカイトの方を見た。するとカイトは私の耳元で囁いたのである……。


「俺が時間を稼ぐから、お前は逃げろ」


(えっ!? そんなの無理ですよ!)


私は慌てて首を横に振るが、カイトは真剣な目をしていた。その目を見ていると何も言えなくなってしまう……。結局、覚悟を決めるしかなかったのだ……。


「……わかりました……!」


私は小声でそう答えると、カイトの手を握って一緒に走り出した。教会から出ると、そこには馬に乗った兵士がいた。


(いつの間に……!?)


私は驚いて立ち止まるが、すぐに誰かに手を引っ張られた。


「クロエ!」


私の手を引っ張ったのはクロエだった。彼女は私たちに微笑みかけると、口を開いた。


「早く逃げなさい! ここは私が食い止めるから!」


「でも……!」


私が戸惑っていると、カイトが私に向かって叫んだ。


「ノエル! 行くぞ!」


そして私はカイトに手を引かれて走り出したのだ……。クロエのことが心配だけど、今は逃げるしかない……!


「はぁ……はぁ……」


あれからどれくらい走っただろう……? 息が苦しくて倒れそうになりながらも、私は何とか走り続けていた。すると、隣で走っていたカイトが立ち止まって話しかけてきたのだ。


「ここまで来れば大丈夫だろう」


「はい……」


私がその場に座り込むと、カイトは真剣な表情で口を開いた。


「これからどうするかを考えるぞ。あいつらは俺たちのことを血眼になって探している」


「そうですね……」


私は息を整えながら答えた。あの人たちから逃げ続ければ、いずれ捕まってしまうだろう……。


(何かいい方法はないかな……?)


私が考え込んでいると、カイトが口を開いた。


「俺があいつらに捕まる」


「えっ……?」


「俺が捕まれば、あいつらは満足するはずだ。その間にノエルは逃げろ」


「でも……!」


私は思わず反論しようとした。カイトが捕まるなんて絶対に嫌だ……! そんな私の思いを察したのか、カイトは私の頭をポンと叩いた。


「心配するな、俺は大丈夫だ」


「本当ですか……?」


「ああ、だから行け」


「……わかりました……」


(私が助かるためにはそうするしかないんだ……)


私は覚悟を決めると立ち上がった。そしてカイトに向かって口を開く……。


「……約束してください。必ず私の元に戻ってくると……」


「当たり前だ。お前を一人にはしない」


「約束ですよ……?」


私が念を押すように言うと、カイトは力強く頷いてくれたのだった……。


(本当に無事に帰ってきてくれるよね……?)


そんな不安を抱えつつも、私はカイトに背を向けると歩き始めたのだった……。


(どうして急にこんなことになっちゃったんだろう?)


私はそんなことを考えながら教会から離れようとしていた。私が教会に戻ったことで、クロエも捕まってしまったかもしれないと思うと胸が痛んだ。


(でも今は逃げるしかないんだ……!)


自分に言い聞かせるように心の中で呟くと、私はひたすら歩き続けた。
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