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翌日、店番をしていた私はお客さんから声をかけられた。


「すみません! ポーションを売ってほしいんですけど……」


私が振り向くと、そこには二人の男女が立っていた。鎧を着ていていかにも冒険者といった感じだ。二人は私の姿を見ると少し驚いたような表情を浮かべていたが、すぐに笑顔を浮かべると近づいてきた。


「いらっしゃいませ! 何本お求めですか?」


私は笑顔で尋ねると、彼らは顔を見合わせた後で口を開いた。


「二本ください!」


二人は同時に答えた。どうやら彼らは同じ目的のようだ。私は笑顔で頷くと、棚からポーションを取り出した。


「こちらの二種類がありますが、どちらがよろしいですか?」


私が尋ねると、彼らは少し考えた後でそれぞれの特徴を話し始めた。


「こっちの赤い方は攻撃力アップで、こっちの青い方は防御力アップなんですよ」


どうやらこの人たちは二人でパーティーを組んでいるようで、攻撃と防御のどちらを重視するか悩んでいるようだ。確かに戦闘スタイルや戦いの状況によっても使いやすいポーションは変わってくる。


「なるほど……。それなら赤い方は攻撃力が高くて、青い方は防御力が高いみたいですね」


私がそう答えると、二人は驚いた表情を浮かべていた。どうやら私が鑑定スキル持ちだと察したようだ。私はさらに言葉を続けることにした。


「実はこのポーションには隠された効果があるんですよ」


すると二人の表情が一気に明るくなったのが分かった。興味津々といった様子だ。私は言葉を続ける。


「赤い方のポーションは攻撃力が上がる代わりに体力が少なめになる効果がありますし、青い方のポーションは防御力が上がる代わりに魔力が少なめになります」


私がそう言うと、二人は少し残念そうな顔をした。攻撃力が高い方が有利に見えるし、防御力が高い方が安全だと思ってしまうのは仕方ないことだろう。私は最後に一つ付け加えることにした。


「でも! 二つのポーションを混ぜることでさらにパワーアップしますよ!」


二人の目が輝いたような気がした。どうやら興味を持ってくれたらしい。私は彼らに作り方を説明することにした。


「まず赤いポーションと青いポーションを混ぜると、体力と魔力のバランスが良くなります」


実際に作って見せると、二人は食い入るように見つめていた。そして出来上がったポーションを試飲してもらうと、彼らの表情がさらに明るくなる。どうやら気に入ってくれたようだ。


「これください!」


彼らは迷わずに赤い方のポーションを手に取った。どうやら彼らは防御力を重視することにしたらしい。私は笑顔を浮かべて頷くと、彼らの注文通りの本数を袋に詰めて手渡したのだった……。


「ありがとうございました! また来てくださいね!」


私は笑顔で彼らを見送った。ポーションの効果は本物だ。あの二人も喜んでくれているようで良かったと思う。


(今日もいい一日になりそうね……!)


私は心の中で呟くと、大きく伸びをしたのだった……。


「おはようございます! ノエルさん!」


元気よく挨拶する声が聞こえたので振り返ると、そこにはエレナちゃんの姿があった。どうやら今日は元気いっぱいのようだ。昨日あれだけポーションを作ったというのに疲れは残っていないらしい。流石はハーフエルフといったところだろうか?


「おはようございます! 今日は自信がありそうですね!」


私が尋ねると、エレナちゃんは満面の笑みを浮かべて大きく頷いた。どうやら彼女は自分なりにポーションの作り方をアレンジしたらしい。一体どんな効果があるのだろうか……楽しみである。


(この子が成長していく姿はきっと見ていて楽しいんでしょうね……)


私はそんなことを考えつつ、エレナちゃんに微笑みかけた。彼女は笑顔で頷くと、そのまま店の奥に行ってしまう。きっとすぐに戻ってくるだろうと思い、私は前に向き直ったのだった……。

しばらくして店の奥から足音が聞こえてきたかと思うと、エレナちゃんが戻ってきた。その手には何やら小さな袋が握られているように見える。


「ノエルさん! これが昨日教えてもらったポーションのアレンジです!」


そう言うと彼女は袋を手渡してきた。中を見ると赤い粉が入っているのが分かるが一体どんな効果があるのだろう……? 気になったのでその場で少し飲んでみることにした。口に含んでみると、爽やかな甘みと酸味を感じることができる。そして体がじんわりと温かくなるような気がした。これは一体……!?


「体力回復ポーションと魔力回復ポーションの二つの効果を組み合わせたものなんです!」


エレナちゃんは誇らしげに答えた。彼女の説明によると二つのポーションを混ぜると体力と魔力が両方回復するという効果が得られるらしい。これは画期的である!


(凄い……)


私は心の中で感嘆の声を上げた。今まではどちらか片方しか回復させることができなかったはずだけど、この二つを組み合わせることで両方を回復できるようになったのである。


「体力も魔力もフル回復するんですよ! すごくないですか!?」


エレナちゃんは興奮した様子でそう語ると、私の反応を見て嬉しそうに笑った。私はただただ頷くことしかできないでいた……。


(この子の成長は本当にすごいわ……)


私は改めてエレナちゃんの才能に驚かされていたのだった……。
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