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翌朝、俺たちは再びエルザの元を訪れた。彼女はスカーレットの言葉を受けて、魔道都市の奥深くにある禁忌の研究所について調査を始めていた。


「カイトさん、フィーナさん……実はこの都市の地下に、封印された区域が存在します。そこには古代魔道に関する記録が眠っているとされていますが、誰も近づくことができませんでした」


「なぜ近づけない?」俺が尋ねると、エルザは困惑した表情を浮かべた。


「結界です。強力な結界がその場所を守っているのです。ただ……スカーレットが言っていた通り、あなたの力なら突破できる可能性があります」


俺は静かに頷いた。「いいだろう。その場所に案内してくれ」


魔道都市の地下へと続く道は、迷路のように入り組んでいた。エルザが持つ魔道具の光に導かれながら、俺たちは慎重に進んだ。この地下通路はかつての研究施設への道であり、今は人知れず封印されている場所だという。


「ここは……すごい魔力の密度ですね」


フィーナが周囲を見回しながら言う。その言葉通り、空気が重く感じられるほどの魔力が辺りに満ちていた。


「この魔力、普通の魔法使いなら近づいただけで意識を失いそうだな」


俺は結界を張り、俺たちの周囲を保護しながら進む。封印の結界と対峙する前に、余計な魔力の干渉を防ぐためだ。


やがて、広大な空間に出た。そこには巨大な扉が立ちはだかっている。複雑な魔法陣が刻まれ、その表面にはいくつもの宝石のような物が嵌め込まれていた。


「これが……禁忌の研究所への入り口です」


エルザの声が響く。彼女の表情には緊張が浮かんでいる。


「この扉は、いくつもの結界で守られています。その一つ一つが古代魔道の術式に基づいていて、現代の魔道士では解読できません」


「だが、俺ならできるってわけか」


俺は扉の前に立ち、手をかざした。触れた瞬間、俺の体に何かが反応するのを感じた。結界が俺の力を認識しているような感覚だ。


「カイト……無理しないでね」


フィーナの声が聞こえるが、俺は集中を切らさなかった。


「大丈夫だ。俺の力がこの扉を超える鍵だとすれば、やるべきことは単純だ」


俺は結界を操作し、扉を覆う魔法陣を一つずつ解除していく。複雑な術式も、俺の結界術の前ではまるで解体されるパズルのように形を崩していく。


「……開いた!」


扉が低い音を立てながらゆっくりと開いた。その先には、巨大な空間が広がり、無数の魔道具や古文書が並ぶ光景が目に入った。


「これが……禁忌の研究所」


エルザは感嘆の声を漏らし、慎重に足を踏み入れる。研究所の中央には、一際目立つ巨大な魔法陣が描かれていた。その中心には奇妙な石柱があり、そこに古代文字が刻まれている。


「これは……?」


フィーナが近づき、その文字を見つめた。


エルザが石柱を調べ始める。「この文字、古代魔道のものです。何か重要な情報が記されているはずですが……解読には時間がかかりますね」


俺も石柱に手を触れると、再び体が反応した。瞬間、頭の中に強烈なイメージが流れ込んでくる。


「……!」


過去の光景だろうか。強大な力を持つ魔道士たちが結界を張り、何かを封じ込めている。その中心には、暗黒のような存在が渦巻いていた。


「どうしたの?」


フィーナが心配そうに声をかける。


「……何かが見えた。多分、この研究所の目的だ」


俺は周囲を見渡し、柱に刻まれた文字を確認した。そこにはこう書かれていた。


『古代の結界術――封じられた破壊の力』


「封じられた破壊の力……?」


エルザが呟く。「まさか、この研究所はその力を研究し、制御するために作られたのでは……?」


俺はその言葉に頷いた。「そうだろうな。そして、俺の結界術は……その力に由来するものかもしれない」


突然、研究所全体が揺れ始めた。石柱が発する魔力が暴走し、空間が軋むような音を立てる。


「これは……!?」


フィーナが叫ぶ。


「何かが封印を破ろうとしている!」エルザが叫び、急いで魔法で抑えようとするが、その力はあまりにも強大だった。


「俺がやる!」


俺は結界を展開し、暴走する魔力を包み込んだ。しかし、その力は尋常ではない。


「カイト!」フィーナが駆け寄るが、俺は制止する。


「ここで引くわけにはいかない!」


俺の結界が力を封じ込めるたびに、石柱の奥から何か巨大な存在の気配が近づいてくる。これは単なる魔力ではない……意思を持った何かだ。


「これは……『封じられし破壊神』だ!」エルザが驚愕の声を上げた。


破壊神――その言葉が響く中、俺は全力で結界を操作し、研究所全体を包み込む。


「俺の力が何に繋がっているか、確かめるのは今だ!」


結界の輝きが空間を満たし、全てを飲み込んでいく。俺の中で、眠っていた力が覚醒しつつあるのを感じながら、俺は戦いの準備を整えていた。
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