「守ることしかできない魔法は不要だ」と追放された結界師は幼なじみと共に最強になる～今更俺の結界が必要だと土下座したところでもう遅い～

24

ある日のこと、俺たちはギルドからの依頼で、ある村を訪れることになった。その村はかつて伝説的な魔法使いが住んでいた場所で、今でも彼の残した魔法が残っていると言われている。


「でも、本当にそんな凄い人がいたなんて……信じられない」


フィーナが感慨深げに呟くと、ノワールは頷いた。


『わしも直接会ったことはないんじゃがな。ただ、この紋章の力が本物なら……何か手がかりがあるかもしれん』


そう言って彼女は胸元の紋章石を取り出した。それはかつてノーライフキングを封印した時に使った、いわば封印の要。今は輝きを失い、ただの石ころに過ぎないが――それでも、俺たちを導く手がかりとなるかもしれない。


「そうだな……行ってみる価値はある」


俺は決意を込めてそう言った。そして俺たちは村への道を進んでいった。道中は平和そのもので、特に危険もなく進むことができた。しかし――目的地に近づくにつれて、徐々に空気が重くなっていくのを感じた。まるで何か巨大な存在が息を潜めているような、そんな感覚だ。


『この先に何かがおるな……』ノワールが呟く。俺は唾を飲み込むと、ゆっくりと足を踏み出した。目の前に広がる光景に思わず息を飲む。そこには荒れ果てた村があった。


「ひどい……」


フィーナが言葉を失うのも無理はない。家屋は破壊され、畑は荒らされている。まるで災害に襲われたような有様だ。村人たちの姿も見えないため、生存者がいるかどうかすら分からない状況だった。


『これは一体どういうことじゃ……この村には数百年の歴史があると聞いていたのじゃが』


ノワールの言葉に俺も頷くしかなかった。この惨状は明らかに異常だ。すると、突然ノワールが何かに気づいたように目を見開いた。


『お主ら……伏せろ！』


次の瞬間、地面が大きく揺れた。同時に凄まじい衝撃と突風が吹き荒れる。俺とフィーナは咄嗟に身を屈めたが、それでも体勢を崩しそうになった。やがて揺れは収まったものの、今度は周囲から獣の唸り声のようなものが聞こえてきた。見るとそこには巨大な怪物の姿がある――恐竜のような骨格に、巨大な翼を生やした異形の生物だ。


「なんだこいつは……！」


俺は思わず声を上げた。こんな生き物は見たことがない。しかし、こいつは明らかに敵意を持っているようだ。


「下がってろ、フィーナ、ノワール！」


俺は一歩前に出た。その瞬間、背中を覆うように刻まれた結界の紋様が淡く輝き始める。力が湧き上がる感覚。これは俺が最強たる所以、結界術の頂点に立つ者だけが持つ「絶対結界」。


『あの怪物……ただの獣じゃないぞ。邪気がまとわりついておる。封印が解けた呪物の類かもしれん。油断するな！』


ノワールが警告を飛ばす。しかし、俺は笑みを浮かべた。


「油断？ そんなもの必要ないさ。俺を前にして立っていられる敵なんていない」


怪物が咆哮を上げ、鋭い爪を振りかざして突進してきた。その動きはまるで疾風のように速い。だが、俺の前に到達する前に空間が歪み、怪物の爪が透明な壁に阻まれた。


「ここは通さない――“無限絶対防壁”だ」


俺の指が空中に走ると、目には見えない結界がさらに強固になっていく。怪物は苛立つように爪や翼を叩きつけるが、そのすべてが俺の結界に阻まれる。


『お主の結界術、相変わらず規格外じゃのう……だが、攻めに転じねば意味がないぞ！』


ノワールが焦る声を上げる。


「分かってるさ。でも、こういう相手には遊び心も必要だろう？」


俺は右手を掲げた。その瞬間、結界の一部が形を変え、無数の光の刃となって浮かび上がる。


「行け――“煌刃結界”！」


光の刃が一斉に放たれ、怪物の体を切り裂くように飛び交う。怪物の皮膚は硬く、何本かの刃は弾かれたが、それでも数本が深く突き刺さり、黒い煙を上げた。


怪物は怯んだ様子を見せながら後退し始めるが、俺は追撃の手を緩めない。


「これで終わりだ――“封滅の結界”！」


地面に手を触れると、足元から光の円環が広がり、怪物を包み込む。その光が眩しさを増した瞬間、怪物は悲鳴を上げて爆ぜるように消滅した。空気が静寂を取り戻し、荒れた村の広場には俺たちだけが残った。


「ふう……大したことなかったな」


俺は気軽に肩をすくめたが、フィーナとノワールは呆然と立ち尽くしている。


「カイトさん……本当に凄いですね」


「まったくじゃ。お主、まだ本気を出しておらんな？」


ノワールの言葉に俺は苦笑した。確かにこの程度なら全力を出すまでもない。だが、それでも俺の力は十分だった。


「まあな。でも、まだまだ修行が必要だって思うよ」


「うむ……じゃがお主なら必ず強くなる。わしが保証しよう」


ノワールはそう言って笑みを浮かべた。フィーナもまた、俺の肩に頭を乗せながら微笑んでいる。俺は彼女たちを見つめながら思う――この力をどう使うべきか？ そして、何のために戦うのか？その答えはまだ見つからないが、それでも前を向いて進んでいくしかないだろう。