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次の日、私はエレローラを連れて花畑に来ていた。この花畑は私たち家族のお気に入りの場所で、よく3人で訪れていた場所だ。
「見て! お母様! お花がいっぱい咲いていますよ!」
エレローラが嬉しそうに飛び跳ねる。その様子を見ていると私まで楽しくなってくるのだった。
「ふふ……そんなに慌てなくても花は逃げないわよ」
そんな私の言葉も聞こえていないのか、エレローラはどんどん先に進んでいく。そして一本の花の前にしゃがみ込むと、その花をじっと見つめ始めたのだ。
「どうしたの?」
私が尋ねると、エレローラはゆっくりと口を開いた。
「このお花……お母様の好きな花ですよね」
そう言って指差したのは白い綺麗な花だ。それを見て私は思わず笑みを浮かべる。
「よく覚えてたわね!」
「もちろんです! お母さまのことなら何でも知っていますよ!」
エレローラは誇らしげに胸を張ると、再びその花をじっと眺め始める。そんな娘の姿が微笑ましくて仕方がなかった。
「……ねぇ、お母様?」
突然、エレローラが私に声をかけてきた。その表情は少し不安げに見える。一体どうしたのだろうか?
「私……お母様の子供で本当に良かったです」
「あら、急にどうしたの?」
エレローラの言葉に私は驚いたが、同時に嬉しくもあった。この子はこんな風に思っていたのか。そう考えると親として感慨深いものがあるというものだ。
「だって、こんなに優しいお母様と素敵なお父様に囲まれて育ったのですから!」
エレローラはそう言って笑った。その笑顔を見て私は胸が熱くなるのを感じたのである。この子を産んで本当に良かったと思う瞬間だった。
「……ありがとうね」
私はそれだけしか言えなかった。それ以上何かを言うと泣いてしまいそうだったからだ。そんな私の気持ちを知ってか知らずか、エレローラは再び花に視線を戻す。そして再び口を開いた。
「私、お母様の子供で良かったです!」
「……!?」
今度ははっきりとした声で言う。その言葉を聞いた瞬間、私の目からは自然と涙が溢れてきたのだ。慌てて手で涙を拭うが止まらない。
「あれ? なんでだろう……涙が……」
自分でもなぜ泣いているのか分からない。ただ、胸の奥から込み上げてくるものがあったのだ。
「お母様!? 大丈夫ですか?」
エレローラが心配そうに駆け寄ってくる。私は慌てて涙を拭うと、笑顔を作ってみせた。
「ごめんなさいね……ちょっと目にゴミが入ったみたい」
「それならいいのですが……」
エレローラはまだ心配そうな顔をしていたが、私が大丈夫だと言うと安心したようだ。そして再び花に視線を戻すと口を開いた。
「……でも、本当に幸せです! お父さまもお母さまもいるのですから!」
そう言って笑う娘の顔を見て、私の目からは再び涙がこぼれ落ちる。エレローラはそんな私を優しく抱きしめてくれたのだった。
「お母様、泣かないでください」
「ごめんね……ありがとう……」
私はエレローラの背中に腕を回し、優しく抱き締めた。この小さな体にどれだけの負担をかけているのだろうか? 親として反省しなければならないだろう。でも今はこうして娘との時間を過ごしたかったのだ。
「お母様……大好きです!」
「私もよ」
私たちはしばらくの間抱き合っていたのだった。その間、ずっと雨は降り続いていたが、そんなことは気にならなかった。ただ目の前にいる娘のことだけを考えていたのだ。
「見て! お母様! お花がいっぱい咲いていますよ!」
エレローラが嬉しそうに飛び跳ねる。その様子を見ていると私まで楽しくなってくるのだった。
「ふふ……そんなに慌てなくても花は逃げないわよ」
そんな私の言葉も聞こえていないのか、エレローラはどんどん先に進んでいく。そして一本の花の前にしゃがみ込むと、その花をじっと見つめ始めたのだ。
「どうしたの?」
私が尋ねると、エレローラはゆっくりと口を開いた。
「このお花……お母様の好きな花ですよね」
そう言って指差したのは白い綺麗な花だ。それを見て私は思わず笑みを浮かべる。
「よく覚えてたわね!」
「もちろんです! お母さまのことなら何でも知っていますよ!」
エレローラは誇らしげに胸を張ると、再びその花をじっと眺め始める。そんな娘の姿が微笑ましくて仕方がなかった。
「……ねぇ、お母様?」
突然、エレローラが私に声をかけてきた。その表情は少し不安げに見える。一体どうしたのだろうか?
「私……お母様の子供で本当に良かったです」
「あら、急にどうしたの?」
エレローラの言葉に私は驚いたが、同時に嬉しくもあった。この子はこんな風に思っていたのか。そう考えると親として感慨深いものがあるというものだ。
「だって、こんなに優しいお母様と素敵なお父様に囲まれて育ったのですから!」
エレローラはそう言って笑った。その笑顔を見て私は胸が熱くなるのを感じたのである。この子を産んで本当に良かったと思う瞬間だった。
「……ありがとうね」
私はそれだけしか言えなかった。それ以上何かを言うと泣いてしまいそうだったからだ。そんな私の気持ちを知ってか知らずか、エレローラは再び花に視線を戻す。そして再び口を開いた。
「私、お母様の子供で良かったです!」
「……!?」
今度ははっきりとした声で言う。その言葉を聞いた瞬間、私の目からは自然と涙が溢れてきたのだ。慌てて手で涙を拭うが止まらない。
「あれ? なんでだろう……涙が……」
自分でもなぜ泣いているのか分からない。ただ、胸の奥から込み上げてくるものがあったのだ。
「お母様!? 大丈夫ですか?」
エレローラが心配そうに駆け寄ってくる。私は慌てて涙を拭うと、笑顔を作ってみせた。
「ごめんなさいね……ちょっと目にゴミが入ったみたい」
「それならいいのですが……」
エレローラはまだ心配そうな顔をしていたが、私が大丈夫だと言うと安心したようだ。そして再び花に視線を戻すと口を開いた。
「……でも、本当に幸せです! お父さまもお母さまもいるのですから!」
そう言って笑う娘の顔を見て、私の目からは再び涙がこぼれ落ちる。エレローラはそんな私を優しく抱きしめてくれたのだった。
「お母様、泣かないでください」
「ごめんね……ありがとう……」
私はエレローラの背中に腕を回し、優しく抱き締めた。この小さな体にどれだけの負担をかけているのだろうか? 親として反省しなければならないだろう。でも今はこうして娘との時間を過ごしたかったのだ。
「お母様……大好きです!」
「私もよ」
私たちはしばらくの間抱き合っていたのだった。その間、ずっと雨は降り続いていたが、そんなことは気にならなかった。ただ目の前にいる娘のことだけを考えていたのだ。
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