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その後、私たちは別室に移動した。そこには豪華な家具や装飾品が並んでおり、まるで王宮の応接間のような雰囲気だった。


「ここで少しお待ち下さい」と王妃は言い残して部屋を出て行った。私たちはソファに腰掛け、これからのことを話し合うことにした。


まず最初に口を開いたのはカイトさんだった。


「なあ、クロエ……お前はどう思う?」


彼は不安そうな表情で問いかける。するとクロエさんは冷静に答えた。


「そうね……今の時点ではまだ何とも言えないわ」


確かに彼女の言う通りだ。情報が少なすぎるし、判断材料があまりにも少ない。しかし、このまま何もしないというわけにはいかないだろう。


「そうね……まずは情報収集から始めましょう」とクロエさんは続けた。


その後、私たちは城内を案内されることになった。まず最初に訪れたのは書庫だった。ここには様々な書物が保管されており、その中にはこの世界の歴史に関する文献もあった。その膨大な量に圧倒されつつも、一つ一つに目を通していくうちに徐々に理解を深めていくことができた。

次に通されたのは国王の私室だった。そこには歴代の王たちの肖像画が飾られており、中には王妃と思われる女性の姿もあった。


「これは歴代の国王陛下たちだよ」と陛下が説明してくれた。絵の中の王妃はとても美しく、優しげな笑みを浮かべている。私たちはしばしの間、その美しい姿に見惚れていた。


最後に案内されたのは城内にある礼拝堂だった。そこでは神官たちが祈りを捧げており、ステンドグラスからは淡い光が差し込んでいる。私たちは静かに祈りを捧げた後、その場を後にしたのだった。


その後、私たちは再び応接間に戻り、今後について話し合うことになった。最初に口を開いたのはカイトさんだった。


「まずは情報集めだな……」と彼は言った。


次に口を開いたのはクロエさんだ。


「そうね、それと仲間も必要だわ」


確かにその通りだと思う。私たちはこの世界について何も知らないのだから、協力できる仲間が必要だ。


「そうだな……とりあえず冒険者ギルドに行ってみるか?」


そう言って立ち上がる彼に続いて私も立ち上がった。部屋を出て廊下を歩いていく途中、ふと気になったことを尋ねてみた。


「そういえば、陛下はなぜ私たちにこんなに良くしてくれるんでしょうか?」


すると彼は少し考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。「それは俺にも分からない……でもあの人は信頼できる人だ」と断言する。その言葉には強い意志が感じられた。


私たちが謁見の間に戻ると、そこには既に王妃の姿があった。彼女は深々と頭を下げると、穏やかな口調で話しかけてきた。


「勇者様方……どうかこの国をお救い下さいませ……」


その瞳には深い決意のようなものが宿っていた。その眼差しからは確かな信念を感じ取ることができる。私は思わず息を呑んだ。


「はい……必ずお役に立ってみせます」と私は答えた。しかし、その言葉に対して陛下は首を横に振った。そして優しく微笑みかけながら言ったのだ。


「君はまだ若いな……焦る必要はないんだよ……」


その言葉には少し寂しさも感じられた。私は何も言えずに立ち尽くすしかなかった。そんな私の肩にそっと手を置く者がいた。それは王妃だった。彼女は微笑みながら言った。


「大丈夫よ、きっと上手くいくわ」


私は頷きながら、王妃の言葉に勇気づけられた。確かにまだ私たちは若く、経験も浅い。しかし、この国を救うという使命を与えられた以上、全力を尽くすしかない。


「では、私たちは冒険者ギルドへ向かわせていただきます」とクロエさんが丁寧に告げると、王妃は頷いて言った。


「ギルドまでは護衛を付けましょう。この城下町は広いですから」


そう言うと、王妃は側近に指示を出した。すぐに二人の騎士が現れ、私たちの案内役を買って出てくれた。


城を出ると、まぶしい陽光が私たちを迎えた。城下町は活気に満ち、市場では商人たちが威勢の良い声で呼び込みをしている。通りを行き交う人々は皆、楽しげな表情を浮かべていた。


「この平和な街並みを守るため……」


私は心の中でそうつぶやいた。クロエさんとカイトさんも同じことを考えているようだった。


しばらく歩くと、立派な三階建ての建物が見えてきた。正面には「王立冒険者ギルド」という看板が掲げられている。


「到着しました」と騎士が告げる。


私たちは深く礼を述べ、緊張した面持ちでギルドの扉に手をかけた。扉を開けると、中からは活気のある声が聞こえてきた。


たくさんの冒険者たちが、依頼の掲示板を眺めたり、仲間と情報交換をしたりしていた。みな、それぞれの目的のために集まっているのだろう。


受付には若い女性が座っており、私たちを見るとにっこりと微笑んだ。


「いらっしゃいませ。新規登録でしょうか?」


「はい」と答えると、彼女は手際よく書類を取り出した。


「では、こちらにお名前と、ご希望の職業をご記入ください」


私たちは順番に書類に記入していく。この瞬間から、私たちの本当の冒険が始まるのだ。それぞれの胸に、期待と不安が入り混じっていた。
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