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「今日をもってお前を【黄金の獅子王】から追放する」


いつものように依頼を終えて、ギルドに戻ると【黄金の獅子王】のリーダーであるラインハルトから突然そう宣告された。


「え?」


突然の追放に、俺は戸惑いの声を上げる。


「聞こえなったか? お前を追放すると言っている」


「理由を聞いても……」


俺はラインハルトに理由を求めた。


「理由だと? そんなの決まっているだろう。お前が役立たずだからだ」


「役立たず……?」


「そうだ。お前は魔物をテイムして、従わせるテイマーだが、肝心のお前が弱くては使い物にならない」


「そ、そんな……」


ラインハルトのあまりに理不尽な言葉に俺は動揺を隠せない。


「お前は今まで俺たちにどれだけ迷惑をかけてきたと思っているんだ?」


「それは……」


「お前がテイムした魔物のせいで、パーティーは壊滅の危機にまで陥ったんだぞ? そんなことも分からないのか?」


「そうだ! お前はこのパーティーに必要ないんだ!」


「あんたみたいなのがいるとパーティーの名に傷がつくわ!」


「……」


俺は何も言い返すことが出来なかった。確かに、俺は魔物のテイムに失敗して、パーティーに多大な損害を与えた。


「分かったなら、さっさと荷物をまとめて出ていけ」


「わかったよ」


俺はラインハルトたちに背中を向け、ギルドを去った。





「……これからどうしよう」


荷物をまとめて町を出た俺は、宛てもなくトボトボと歩いていた。


「はぁ……」


これから先のことを考えると気が重い。


「いっそ、冒険者を引退するか……?」


そんなことを考えていると……。


グゥー……。


俺のお腹が鳴った。もう日が暮れかけている。このままでは野宿することになるだろう。


「……仕方ない」


俺は近くの森に入り、野営することにした。


「ふぅ……」


夜になり、焚き火を焚いた俺は夕食を済ませた。


「これからどうしようか……」


俺は焚き火を眺めながら考える。冒険者を引退するか、それとも……。


「決めた」


俺は冒険者を引退することに決めた。俺にはもう魔物と戦う気力も能力もない。


「そうと決まれば、明日はギルドに行って手続きをしなくちゃな」


そんなことを考えていると、何かが近づいてくる気配がする。


「……なんだ?」


俺は気配のする方に視線を向ける。すると、木々の間から魔物が現れた。


「狼……」


それもただの狼じゃない、フェンリルだ。


『旨そうな匂いがしたのでな』


フェンリルは話しかけてきた。まさか、神獣であるフェンリルが話しかけてくるとは……。


「良かったら食べます?」


『よいのか?』


俺は串に刺した焼き魚を差し出した。フェンリルは魚を丸呑みにする。


『旨かったぞ』


「それはどうも」


『礼をせねばな』


フェンリルは頭を下げてくる。


『お主の従魔になろう』


「え? いいんですか?」


『うむ』


フェンリルは首を縦に振った。


「では、いきますよ」


フェンリルの頭に手を触れ、従魔契約を交わす。


『フェンリルをテイムしたことで【強奪】を覚えました』


頭の中にメッセージが流れる。


「【強奪】?」


『どうやらお主は【ゴッドテイマー】のようだな』


「ゴッドテイマー?」


『100年に一度しか産まれないと言われる特別なテイマーのことだ。神獣を従えることが出来るテイマーでもある』


「そんなことが……」


『【強奪】は相手のスキルを奪う力だ。そのスキルは魔物にも有効となる』


「そんな力が……」


俺は自分の掌を見つめる。すると、頭の中に新たなスキルが流れ込んできた。


「これは?」


『神獣にはそれぞれ固有の特性がある。我の固有特性は【氷結】じゃ』


「氷結?」


『うむ。我が放つ氷であらゆるものを凍らせることができるのだ』


「なるほど」


『さて、我に名前を付けてくれぬか?』


「名前?」


『うむ』


俺はフェンリルの名前を考える。そして、1つの名前を思いついた。


「じゃあ、あなたは今日から【リザ】です」


『リザか……。気に入ったぞ』


フェンリル改め、リザは嬉しそうに尻尾を振る。


「これからよろしくお願いします」


『こちらこそ』


こうして俺はフェンリルのリザを仲間にした。
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