転生したらやられ役の悪役貴族だったので、死なないように頑張っていたらなぜかモテました

20

翌朝、目を覚ました俺は窓の外を見る。そこには平和な光景が広がっていた。人々が行き交い、活気に満ち溢れている。そんな様子を見ていると安心感を覚えることができた。だが同時に不安にもなるのだ……いつまたあのような魔獣が現れるかわからないからだ。だからこそ俺たちは戦い続けなければならないと思っているのだが……


「ゲルドフ様！ おはようございます！」


突然、扉が開きアシュリーが入ってきた。彼女は元気よく挨拶をすると俺の側までやってきた。


「今日は何をされる予定ですか？」


そう聞いてくる彼女に俺は答える。


「そうだね、今日は休みにしようかと思っているんだけど……」


俺が言うと、彼女は少し残念そうな表情を見せた後、笑顔を浮かべた。


「わかりました！ お気をつけてくださいね！」


そんなアシュリーを見て苦笑しつつ、俺は出かける準備を始めたのだった……


「よしっ！」


着替えを終えた俺は気合を入れるために自分の頰を叩くと部屋を出た。すると目の前にエリザベータが立っていたのだ！驚いて固まっている俺に彼女は笑顔で話しかけてくる。


「ゲルドフ様、どちらへ行かれるのですか？」


俺は戸惑いつつも答えることにした。


「あ、ああ……ちょっと散歩に行こうかと思ってな……」


すると彼女は少し考え込むような仕草を見せた後、提案してきた。


「それなら私も一緒に行ってもよろしいですか？」


予想外の申し出だったが断る理由もなかったので了承することにした。


「もちろん構わないぞ」


すると彼女は嬉しそうに微笑んだ後、俺の隣を歩き始めた。そして他愛のない会話をしながら歩いているうちに目的地に到着したようだ。そこは王都でも有数の高級レストランだった。店内に入ると豪華な内装に圧倒されるが、予約していた席に座ると落ち着いて食事を楽しむことができた。


「ゲルドフ様、この料理美味しいですね！」


「ああ、そうだな」


エリザベータは終始笑顔で食事をしていた。そんな彼女を見ているとこちらまで幸せな気分になった。食事を終えた後は散歩を続けながら街中を見て回ったりした。


「この街も随分と変わったな……」


俺は感慨深げに呟いた。エリザベータが頷きながら答える。


「ええ、戦いが終わってから再建が進み、人々の生活も徐々に戻ってきましたね。ゲルドフ様のおかげです」


「いや、皆のおかげだよ」と俺は謙遜して答えた。


街の活気と平和を感じながら、二人はしばらく歩き続けた。その途中、子供たちが笑い声を上げながら走り回る姿を見かけた。彼らの無邪気な様子に、俺の心は温かくなった。


「子供たちの笑顔を見ると、本当に平和が戻ってきたことを実感しますね」


「そうだな。彼らの未来を守るためにも、俺たちはこれからも頑張らないとな」


しばらくすると、街の広場に差し掛かった。広場では市場が開かれており、様々な店が軒を連ねていた。エリザベータが目を輝かせながら提案する。


「少し市場を見て回りませんか？」


「いいな、そうしよう」


市場を歩きながら、俺たちはいろいろな店を見て回った。香ばしい匂いが漂うパン屋、色とりどりの果物が並ぶ青果店、そして手作りのアクセサリーを売る店など、どれも興味深かった。エリザベータが興味を示したアクセサリー店に立ち寄ると、彼女は繊細なデザインのペンダントに目を奪われた。


「これ、とても素敵ですね」


「気に入ったのか？」


「はい。でも……」


彼女が言葉を濁したところで、俺は店主にペンダントの値段を聞いた。思ったよりも高価だったが、俺はためらわずにそれを購入した。


「これを君に」


「えっ、でも……」


「いいんだ。今日の思い出として受け取ってくれ」


エリザベータは少し頬を赤らめながら、ペンダントを受け取った。


「ありがとうございます、ゲルドフ様。大切にします」


エリザベータの笑顔を見ていると、俺の心は温かくなった。市場の賑わいの中で、俺たちはゆっくりと歩き続けた。

ふと、遠くから賑やかな音楽が聞こえてきた。その方向を振り向くと、小さなステージが設置されており、楽団が楽しげな演奏を始めていた。エリザベータが目を輝かせながら俺を見上げる。


「ゲルドフ様、少し音楽を聴いていきませんか？」


「そうだな、せっかくだから聴いていこう」


俺たちはステージの近くまで歩み寄り、楽団の演奏を楽しんだ。人々が踊り始め、笑顔が広がっていく。エリザベータも音楽に合わせて軽くリズムを取っていた。俺はそんな彼女の姿を見て、ふとした安心感を覚えた。


「本当に平和が戻ってきたんだな」


俺がそう呟くと、エリザベータが微笑みながら頷いた。


「はい、ゲルドフ様のおかげです。あの戦いの日々が嘘のようです」


「俺一人の力じゃないさ。みんなの努力があってこその今だ」


演奏が終わり、拍手が鳴り響く中、俺たちは再び歩き始めた。エリザベータがふと立ち止まり、真剣な表情で俺を見つめた。


「ゲルドフ様、これからも一緒にこの街を守っていきましょう」


「もちろんだよ。君と一緒に、ずっとこの街の平和を守り続ける」


エリザベータの言葉に、俺は力強く頷いた。明日への不安は尽きないが、今この瞬間の平和と幸せを噛みしめることができる。それだけで十分だと感じながら、俺たちはゆっくりと城へと戻っていった。