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「ゲルドフ様、おはようございます」


目が覚めると、エリザベータが顔を覗き込んでいた。彼女はいつも朝早くから俺を起こしにくるのだ。


「ああ、おはよう」


俺が挨拶を返すとエリザベータは嬉しそうに微笑む。そして朝食の準備を始めたようだ。しばらくすると食卓の上に美味しそうな料理が並ぶ。


「どうぞ召し上がってください」


「ありがとう」


俺は早速食べ始めることにした。どれも絶品であり思わず舌鼓を打つほどだった。食事を終えると学校へと向かう準備をする。


「きゃああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」


突然、悲鳴が聞こえてきた。【千里眼】で遠くを見ると馬車が盗賊に襲われているようだ。


「助けに行ってくる!」


俺は慌てて駆け出した。剣を抜き放ちながら駆け出す。そしてあっという間に盗賊の背後まで迫ると剣を振り下ろした!


「なんだてめえ! ど、どっからきやがった!」


突然現れた俺に盗賊たちは驚いているようだ。


「大人しくするなら手荒な真似はしない」


「ふざけんじゃねえぞ!!」


盗賊達は一斉に襲いかかってくる。しかし、俺の敵ではなかった。次々と斬り伏せていく。数分後には全ての盗賊を倒し終えたのだった。


「大丈夫ですか?」


馬車の方に声をかけると中から騎士らしき女性が出てきた。


「姫様に近づくな!」


騎士は剣を抜いて威嚇してくる。どうやら警戒されているようだ。


「おやめなさいサブリナ! この方は私を助けてくれたのよ!」


「はっ! も、申し訳ありません!」


騎士は慌てて謝ると跪いた。そして一人の少女が馬車から降りてくる。


「私はこの国の王女であるアシュリーと申します」


彼女は自己紹介をして頭を下げた。俺も自己紹介をする。


「俺はゲルドフだ」


「まあ! あなたがあの有名な!」


アシュリーは目を輝かせて俺を見る。どうやら俺のことを知ってるらしいな。


「姫様に汚い手で触るんじゃない!」


サブリナが怒りの声を上げる。


「やめなさい! 彼は私の命の恩人よ!」


アシュリーはサブリナを叱りつけた後、俺の方を向いて微笑んだ。


「私を助けてくれて本当に感謝していますわ」


「当然のことをしたまでです」


俺は謙虚に答えた。そしてサブリナは俺に剣を向ける。どうやら警戒を解いてくれる気はないらしいな。まあ当然と言えば当然の反応か。


「ゲルドフ様」


「ん? なんだ?」


「私と結婚を前提にお付き合いして頂けませんか?」


「はい!?」


突然のプロポーズに俺は戸惑ってしまう。一体どういうつもりなのだろうか?


「き、貴様ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」


サブリナが目にも止まらぬスピードで斬りかかってくる。


「っと」


怒りの一撃を俺は日本の指で受け止める。


「わ、私の剣が!」


サブリナは信じられないといった表情をしていた。無理もないだろう。彼女の剣はこの世界で最も硬い鉱物であるアダマンタイトでできているのだ。それを指で受け止められるとは思わなかったのだろうからな。


「まだやる気か?」


俺が言うと彼女は素直に剣を下ろした。俺に勝てないと悟ったのだろう。俺はアシュリーに向き直ると質問した。


「どうして俺なんだ? 他にもいい男はたくさんいるはずだろ?」


するとアシュリーは頬を赤く染めながら答える。


「実は私……一目見た時からあなたのことが気になっていましたの」


「そうか……」


俺は少し考え込んだ。そして決断を下す。


「分かった、結婚はまだ早いがしばらく君と付き合ってみよう」


俺の言葉にアシュリーは嬉しそうな表情を浮かべた。しかし、サブリナは納得いかないようだ。


「姫様! そんなどこの馬の骨とも分からないやつと結婚などいけません!」


サブリナは必死に説得しようとするが、アシュリーは聞く耳を持たないようだ。


「サブリナ、私はゲルドフ様とお付き合いすることに決めたのです。それに彼はとても強い御方ですわ」


アシュリーは自信満々に言う。その言葉にサブリナは何も言えなくなってしまったようだ。こうして俺はアシュリーと付き合うことになったのである……
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