冷酷非情の雷帝に嫁ぎます～妹の身代わりとして婚約者を押し付けられましたが、実は優しい男でした～

4

旦那様であるライトニング様は、王城へと出仕している。今はきっと仕事中だろう。


「さてと、掃除を始めましょう！」


私は早速準備を始める。まずは部屋の掃除だ。部屋を隅々まで丁寧に掃除していき、家具や調度品も磨いていく。


「ふう……」


そして部屋が綺麗になった頃、もうお昼時になっていた。


「そろそろお昼ね……」


食事の用意をしようと思い厨房へと向かうことにする。するとそこにはエプロン姿のクロエがいた。


「……何をしているのかしら？」


私が声をかけるとクロエは飛び上がって驚いていた。


「フィーナ様！ えっと、これはですね……」


「もしかして私に黙ってつまみ食いでもしていたの？」


「違います！ そんな意地汚いことしません！」


必死に否定しているが目が泳いでいる。どうやら図星のようね……まあ、別に隠すこともないと思うのだけれども。私は彼女を咎めるつもりはないので普通に話すことにする。


「ふふっ、冗談よ」


私がそう告げると彼女はホッと胸を撫で下ろしていた。そしてクロエが手に持っていた料理を見て察する。


「もしかして私の分も作ろうとしてくれていたの？」


「はい。いつもフィーナ様にお世話になりっぱなしですから……」


どうやら彼女は自分の仕事をサボっていたわけではないらしい。私はクロエに笑いかける。


「ありがとう」


それから私たちは一緒に食事を摂ることにしたのであった。そうして食べ終わった後、私はまた掃除を始めることにした。次は洗濯だ。


「洗濯もやってしまいましょう！」


私は腕まくりをして気合いを入れる。まずは洗濯物を水洗いして、それから洗剤で綺麗に洗う。そして最後に乾燥させる。


「さてと……次は庭園の手入れね」


旦那様であるライトニング様から許可は得ているし、早速始めることにしよう。まずは雑草抜きだ。根こそぎ取ってしまうと植物が死んでしまうので適度に残しつつ、雑草を抜き取る。


「ふう……終わったわ」


庭園の手入れを終わらせると、時間は夕方になっていた。そろそろライトニング様も帰ってくる時間だろう。私は庭で摘んできた花を花瓶に入れて彼の帰りを待つことにした。


「帰ったぞ」


ほどなくしてライトニング様が帰ってきたので出迎えることにする。すると彼は驚いた顔をしていた。


「なぜ貴様がわざわざ来る？」


「妻ですから、旦那を出迎えるのは当然です」


「ふん……」


彼は面倒くさそうに鼻を鳴らす。だが、怒っている様子はなさそうだった。


「夕飯の用意ができておりますわ」


「おい」


「私の名前はフィーナです。『おい』じゃありません。人には親から与えられた大事な名前があるのですから」


「本当に口が減らない奴だな！」


「あなたの言動が問題だと思いますわ」


そんなやり取りをしながらも、私たちは食事を始める。


「お野菜食べないのですか？」


彼の皿は野菜が残されている。


「野菜など食えるか」


「ダメです。野菜を食べないと大きくなれませんよ？ それに健康にも良くありませんし……」


私は彼を諭すように言う。すると彼は不服そうにしながらも、渋々野菜を口に運んでいた。なんだかんだで素直な人だった。


「ご褒美のデザートです」


運ばれてきたのは新鮮なミルクと砂糖を混ぜて作った私特製アイスクリームだ。


「なんだこれは？」


「アイスクリームというお菓子ですわ」


私は彼にスプーンを手渡す。彼は恐る恐るといった様子で口に運んでいた。すると彼の表情が一変する。


「……！」


「どうですか？」


私の問いかけには答えず、彼は無心でアイスクリームを食べていた。どうやら気に入ってもらえたようだ。私はそんなライトニング様を見ながら微笑むのであった。


「悪くなかったぞ……」


ライトニング様は食べ終わると一言だけ告げて、部屋に戻っていく。その後ろ姿を見ながら私は思うのだ。


（よかった……）


ライトニング様の機嫌を損なうことなく、満足してもらえて……そして何より私自身も彼の役に立てたことが嬉しかったのであった。こうして私の新婚生活は順調にスタートしていったのであった。