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「今日をもってお前を我がコーネリア家から追放する」


そう言うのは、私の父であるバーンズ・フォン・コーネリア伯爵だ。


「なぜ私が追放されるんですか?」


幼い頃から私は蔑まれていた。それは私が加護無しの落ちこぼれだから。

この世界では生を受ける時に、女神の加護を得て産まれてくる。

加護は非常に重要視されており、授かった加護でその人の一生が決まるほどだ。

しかし、私は加護を持たぬものとして生まれた。加護無し。それはこの世界では最底辺を意味する。

そんな私は父であるバーンズ・フォン・コーネリア伯爵に「家の恥だ」と罵られ、常に蔑まされてきた。

母であるアリシア・フォン・コーネリア伯爵夫人も私には見向きもせず、全て父に任せていた。

そして妹のノエルには溺愛していた。私が何度死にかけても看病一つしないくせに、ノエルが怪我をすれば急いで駆け寄り、魔法で治してあげる。そんな妹のことが私は大嫌いだった。


「お前にはライトニング侯爵の元で嫁いでもらう」


「ライトニング侯爵……あの【雷帝】ですか……」


ライトニング侯爵は王国最強の騎士と恐れられる存在。相手を一瞬で消し去る雷魔法と敵に一切容赦しない苛烈さで、付いた二つ名が雷帝。


「ライトニング侯爵はノエルの婚約者ではないですか?」


「それが、ノエルが嫁ぎたくないといっておるのだ」


「それは、どうしてですか?」


「今まで何人もの令嬢がライトニング侯爵に嫁いだが、誰一人帰ってくることはなかった」


「何があったのですか?」


「真偽のほどは不明だが、ライトニング殿の不興を買い、切り捨てられたと噂されておる」


そんなバカなことがあり得るわけない。いくら侯爵だからといって人を殺せば処刑は免れない。


「そんな奴に大事なノエルを嫁に行かせるわけにはいかんというわけだ。しかし白羽の矢が立ってしまった以上、コーネリア家から嫁を出さねばならぬ。そこで貴様の出番というわけだ」


そんなことだろうと思った。可愛いノエルをその人のところへ送りたくないから、いなくなっても構わない落ちこぼれの私を生贄にしようという魂胆なのだろう。


「言っておくが貴様に拒否権は――」


「わかりました」


あっさりと承諾した私に対して父はあんぐりと口を開けている。


「ライトニング様との婚約、謹んでお受けいたします」


「そ、そうか……」


ライトニング侯爵はこの国から重宝されている。ということはかなりの資産を保有しているはずだ。お金さえあれば、貴族の令嬢というしがらみからも抜け出せ、自由な人生を送ることができる。

そしてなんといっても、ライトニング侯爵に嫁げば、こんなクズ共とおさらばできる。加護がないだけで私を虐げ、

私が死ぬかもしれないとわかったら、あっさり切り捨てる奴らの側になんて一秒もいたくない。


「まあ……向こうでもしっかりやるんだぞ」


私が嫌がって、泣きわめく様を期待していたのか父の顔がひきつっている。だがもうこんな家とはおさらばだ。

こうして、私は妹の代わりに、冷酷非情の雷帝ライトニング・フォン・フォスキーアの嫁となったのだった。
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