サヨナラの後

15

「坂上ちゃん～。」
「か、係長っ、最初から酔ってませんかっ？」
「坂上ちゃんが来る前から呑んでるんだもん、できあがってるにきまってんでしょお？
なんでさぁ、やめちゃうのよお。あたし、坂上ちゃんのこと大好きなのにい～。」
係長はあたしの隣に席を移して迫ってきた。
いや。
あたしそういうのは直接はちょっとっ。
「何女の子に迫ってんの。」
課長が係長の腰をぐわっと掴んで引き寄せた。
「あわわわ。」
「そもそも、貴女は俺が若い女性部下と2人っきりになるのは不安だってついてきたんですよね？」
課長はいいながら係長を元の席に収めた。
…ぇ。
「うー。だってー。」
目の前で繰り広げられていることを理解…できない。
係長は課長にしなだれてるし。
「…用事終わったので帰ってもいいですか？」
「いや…。
ちょっと、何酔ったフリしてるんだ。」
「アレ？バレた？」
「バレたじゃない。
坂上が困っているだろうが。」
「あはは。
ごめんね？坂上ちゃん。」
係長のその呼び方は変わらないんだ。
「はぁ。
でも坂上ちゃんの悩みを聞こうと思ったのは本当なのよ？
なんとなく、彼氏くんと上手くいってない感じが、ね？」
「そんな風に、見えちゃうんですかね？」
「んー。
どうだろう？
あたしが坂上ちゃんのことをよく見てるからかな？というのはあるよ。」
「えっ？」
「だってさ、あたしが本社に来て仕事教えてくれたの坂上ちゃんだったじゃない？」
そんなこともありましたっけ。
「ある程度は覚悟してたんだけどさー。ホント周りは文句ばっかで何にも教えてくれないんだもんね。聞きたくても聞きにくるなって壁作ってくるしさ。坂上ちゃんがまめに声かけてくれたから頑張れたんだよ。」
「あたしは…教えたって意識はなかったんですケド。
係長が仕事出来ないと結局は困るのあたしたちですし、前任者のやり方を伝えただけでしたし。」
「うん。
でも、あの時の坂上ちゃんがいなかったらあたしダメになってた。
だから感謝してるんだよ。」
「こちらこそ、ありがとうございます。
係長がいてくださったから、色々教えていただいたからこそ今こうして仕事をすることができてます。
だから、お互い様ですね。」
「だったらあたしのところに嫁においでー！」
あたしに抱きつきそうになった係長を止めたのは課長だった。
「貴女は俺の何だからダメでしょ。」
はあ。
課長の意外な一面ですね。