ホワイトデー ラプソディ

梨花

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3月11日火曜日

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結婚する安西さんと加藤くんは入社してしばらくしてからお付き合いを始めたので5年ほどになる。
どうでもいい情報だが同期はみな知っている話。
それは初めての同期会で加藤くんが安西さんに公開告白したから。
いろいろあったようだがまあ無事結婚という節目を迎えることが出来てよかったなあと思う。

「成美が幹事するんだって?」
向かいに座る美女が口を開いた。
「あー。うん、昨日の朝言われた。」
美女はトンカツを口にする。
彼女は総務の橋場美保。
彼女もあたしの同期である。
「ラインが来たの今朝なんだけど…。」
呆れたように美保は言った。
「ふうん。」
あの同期の主任のことはよくわからない。
「まあ、村田主任とだし同じ部署なら話もしやすいからいいか。」
「そうだねー。」
あたしは生姜焼きを摘む。
橋場美保は入社した時から注目の的だった。
社内の独身男性の8割が彼女に付き合ってほしいと言ったとか言わなかったとか。
あたしのところにも合コンしてほしいと言ってくる人が何人もいた。
その度に村田が追い払ってくれたのは今では懐かしい思い出だ。
「成美はどうなの?」
「ん?
何の話?」
「何時になったら成美自身の恋話がでてくるの?」
入社して5年。
あたしに浮いた話はない。
「さあ。
恋愛じゃあ生きていけないからなあ。」
あたしは答える。
恋愛は生きていく上でスパイスにはなるだろうけど。
仕事と違って生きていけないから。
自分から積極的に求めることはない。
「村田主任とか、どうなの?」
「どうって…。
何かあったらあたし、仕事辞めちゃうよ?」
糠漬けが美味しい。
「社内恋愛、面倒そうじゃない?」
社内恋愛は禁止ではない。
しかし所詮恋愛。
出会いがあれば別れもあるわけで。
時々別れてしまった女の子が退職なんて話もある。
そもそも恋愛する気がないから関係ないと思うけど。
「まあそうかもしれないけど。
成美が出会いを求めないんだったら中でなんとかするしかないわけだし?」
そういう美保は入社したときには人妻だった。
学生結婚をし、卒業して式を挙げたらしい。
なので彼女の左手の薬指には5年ものの結婚指輪がある。
「恋愛とか結婚とか、しないとダメなのかなあ。」
「市川さんみたいな白馬の王子様があらわれる予定ならともかく…。」
市川さんは現在秘書室で働く先輩。
あたしたちより3年上であたしが入社した時の指導係だった。
結婚間近だった市川さんが相手の不貞で婚約破棄となり、同じ時期にアメリカの支社から来た男性社員と電源入籍をしたのは有名な話だ。
それも高校の時にお付き合いしていた相手だというし、アメリカ支社から戻ってきた途端広報部の課長になったというのだからみな玉の輿だと羨ましい。
あいにくあたしにはそんな話はない。
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