上 下
487 / 683
第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り

第十三幕 10 『夢から覚めて』

しおりを挟む

 …
 ……
 ………


「ん、ん~……ふぁ~………………ねむ……」


 何か…まだ寝起きなのに凄く疲労を感じる。
 普段はスッキリ目が覚めるのに……

 あぁ……あの『夢』のせいかな……
 とにかく緊張感が半端なかったから。



 300年前の魔王と勇者たちの最終決戦。
 シェラさんから色々と話を聞いたから、前世の……多分、リディアの記憶が呼び起こされたのかもしれないね。

 出来ることなら、あの神殿の場所とかが分かればよかったんだけど。
 リディアが途中で気を失ってしまったからなのか……肝心の魔王を倒す場面が見られなかったし。
 リシィ……シェラさんが魔王と調律師を封印するところも。

 だけど、伝説に語られる出来事が実際にあった事なのだと……凄く実感した。

 そして、魔王の強さも。


 あの最終決戦におけるテオフィールたちの強さは、一線を画していた。
 それこそ今の私などよりも数段は実力が上に見えた。
 正にRPGで言うところのラスボスに挑むようなレベルだ。
 だけど、魔王の強さは更に上を行っていた。

 私だって、ここ半年で強敵との戦いやダンジョン攻略で、かなり実力が上がったと思うのだけど……もし、魔王と対峙するようなことがあったら、まともに戦えるとは思えなかった。

 少なくとも、夢で見たリディア王女くらいの強さは身に付けないと……







「おはようございます、カティアさん」

「あ……おはようございます、シェラさん」


 そうだった。
 私の寝室では今、シェラさんも一緒に過ごしてるのだった。

 あと、ミーティアも。
 彼女はまだ私の隣で、すぴーすぴー…と寝息を立てていた。
 そして、腕の中にはミロンを抱きしめている。

 ……取り敢えずカワイイので写像魔道具カメラで激写しておく。
 こういうシャッターチャンスを逃さないように、近くに置いてあるのだ。
 印画プレートもかなり買い足してるのだけど、ミロンが来てから更に消費が激しくなってる気がする。


「え~と……」

 いきなり撮影を始めたものだから、シェラさんが面食らってる。

「あ、ごめんなさい。あまりにもマイエンジェルがプリティエンジェルなもので……」

「は、はぁ……確かにミーティアちゃんは可愛いですね」

「そうでしょうそうでしょう」


 ……などと、朝っぱらから親馬鹿を発揮してしまうのであった。




















「じゃあ、今日も行ってきますね~」

「ママ、行ってらっしゃい!!」

 いつも通り身支度を整えて学園へ向かう事に。


「シェラさんはゆっくりして……と言っても退屈ですよね。もし体調がよかったら城内を見学されたらどうでしょう?」

 ずっとベッドに居るのも苦痛だよね。
 昨日は読書して過ごしてたって聞いたけど。

「それでしたら私がご案内いたしましょう」

「私もお姉ちゃんを案内するよ!」

「お気遣いありがとうございます。そうですね……体調はもう殆ど良くなってるので、確かに少し動きたいですね」

「是非そうして下さい。では、行ってきます!」






















「おはようございます、カティアさん」

「あ、ルシェーラ、おはよ~」

 教室に入り、既に来ていたルシェーラと挨拶を交わす。
 いつもはルシェーラか私が最初に来て、次いでステラとシフィルの寮生組、そして始業ギリギリくらいにレティがやってくる感じ。
 たまに隣のクラスからメリエルちゃんが来る(彼女はステラたちと一緒に登校してるはず。迷子になるから……)。



「昨日はありがとうございました。シェラさんはお元気ですか?」

「うん、もう大分良くなってるみたいだよ。ずっとベッドに居たんじゃ逆に身体に悪そうだったから、城内散策を勧めたんだ」

「それは良いですわね。庭園など見応えのあるところもありますものね」

 立入禁止の場所も多いけど……市民に開放してるところもあるし、気晴らしには丁度よいかと思うんだよね。
 ルシェーラの言うとおり立派な庭園もあるし。



「それにしても……昨日はお見舞いに行ったはずなのに、シェラさんには辛い話をさせてしまって申し訳ありませんでしたわ」

「でも、誰かに話を聞いてもらって良かったとも言ってたから……良かったんじゃない?あの人はずっと一人で抱え込んでたから……」

「……そうですわね。これからは私達も力になりますわ!」

 ルシェーラの言う通りだ。

 あの最終決戦を見たら、まだまだ実力を付けなければ…とは思うけど。
 少なくとも…シェラさんや私が一人で抱える話でないのは確かだね。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。 【あらすじ】 イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。 しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。 ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。 そんな一家はむしろ互いに愛情過多。 あてられた周りだけ食傷気味。 「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」 なんて養女は言う。 今の所、魔法を使った事ないんですけどね。 ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。 僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。 一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。 生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。 でもスローなライフは無理っぽい。 __そんなお話。 ※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。 ※他サイトでも掲載中。 ※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。 ※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。 ※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

処理中です...