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第十一幕 転生歌姫と迷宮の輪舞曲〈ロンド〉

第十一幕 49 『心配と信頼』

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ーーーー ロウエン ーーーー


 いや、参ったッス。


 こんなダンジョン深層部で孤立するとは……オイラは純粋な戦闘職じゃ無いんだから、勘弁して欲しいッスよ。

 とは言っても……これでも百戦錬磨のエーデルワイスの一員だから、これくらいの修羅場は何度も潜って来たッス。
 実は結構攻撃力もあるんスよ?
 周りがちょっとアレなだけで。


 ただ、他のメンバー……ミーティアちゃんも心配だけど、何だかんだあの娘は強いスからね。
 どちらかと言うと、純後衛職のリーゼちゃんの方が心配ッスね……
 魔導士としての実力は信頼してるけど、流石に前衛がいないと……何とか早く合流してあげたいところッス。


 ならば、オイラの持てる技の全てを総動員して、無駄な戦闘は極力避けながら進むしかないッス。


 さてさて……ロウエン様の本気を見せてやるッスよ!










ーーーー リーゼ ーーー


 なるほど……今度のコンセプトはそう言うことですか。



 迷宮妖精のミロンは……ダンジョン深層部は『試練』だと言ってました。


 それを踏まえて振り返ってみれば、先の2つの階層は、謎解きと集団戦闘に主軸が置かれていたように思えます。
 つまり知恵とパーティーとしての力量を試されていたのだと思います。


 ですが、今度は少し毛色が異るようです。

 今、この状況から導かれるのは……要するに個人の力を試すという事なのでしょう。

 そして、強制的にこのような状況に追い込むからには、おそらく個々の特性に合わせた試練が用意されるのでは、と推測します。
 人間、得手不得手がありますから。
 ……そうでないと困ります。


 それにしても……ミーティアちゃんも心配ですが、あの娘はカティアさんと同じオールラウンダーですから、多分なんとかしてしまうと思います。

 それよりロウエンさんが心配ですね。
 彼は斥候専門だから、純戦闘職ほどには火力は無いはず。
 早く誰かが合流できれば良いのですが……




 とにかく、こうしていても仕方ありません。
 先に進みましょう。




ーーーーーーーー













 ミーティアと二人でダンジョンを進んでいく。
 何度か分かれ道もあり、一応マッピングしながらだ。


 そしてしばらく進むと、前方より何者かがやって来る気配を感じた。

「ママ、まもの?」

「多分ね」


 その場に立ち止まり、戦闘態勢をとって待ち構える。

 やがて姿を現したのは、ガシャッ、ガシャッと音を鳴らして行進する鎧が8体。
 剣や槍、戦斧など武装はバラバラだ。

 リビングアーマー……アンデッドか。




 ……はっ!?

 私は慌ててミーティアを見る。

「どうしたの?ママ?もう、敵が来るよ?」

「う、うん……そうね。え~と、ミーティアはあの魔物は大丈夫なの?」

 彼女は大のアンデッド嫌いだったと思うのだけど……

「んにゃ?」


 ……どうやら大丈夫らしい。

 と言うか、あれをアンデッドと認識してないだけかも。
 それならそれで黙っておこうか……
 アレなら[退魔]系じゃなくても倒せるし。


「結構数が多いから手分けしましょう。魔法は効きにくいから物理でね」

「は~い!」

 ミーティアに言った通り、リビングアーマーには魔法が効きにくい。
 しかし、見ての通りの鎧なので物理攻撃に対する防御力もかなりのものだ。

 だが、私のリヴェラやミーティアの双剣なら攻撃は通ると思う。

 確かランクはBだったか。

 どうやら孤立させられる代わりに、魔物のランクは落ちるみたい。
 ……案外親切設計じゃないの。



 そしてリビングアーマー達が一斉に襲いかかってくる!

 だが、数は多いがその動きは私達にとっては緩慢に見えるので、それほど脅威には感じない。
 私一人だけだったらもう少し苦戦を覚悟したけど、今はミーティアと二人だから……と、そこまで思ってから少し苦笑する。
 いつの間にか、私はこの娘のことをすっかり頼りにしてるんだな、と思って。

 事実、これまでの階層でも彼女の力は頼りになったし、切り札もある。

 それが嬉しくもあり、少し寂しいとも思った。


 っと、そんな感傷に浸ってる場合じゃないか。


 私は薙刀モードにしたリヴェラを大きく振るって、近付いてきた数体を纏めて薙ぎ払う。
 胴体を分断されたリビングアーマーは、それで戦闘不能になり、あっさりと光の粒となって消える。

 ミーティアは素早く懐に飛び込んで双剣を振るい、一体ずつ確実に仕留めていく。



 そうしてそれほどの時間もかからずに、8体いたリビングアーマーをあっさりと撃破した。


「よし、完勝!」

「ぶいっ!」

「とは言っても……一人だともう少しキツかっただろうね。私達は幸運だったけど、他のみんなは大丈夫かな……」

「みんな強いから大丈夫なの!」

 揺らぎない信頼を見せて、ミーティアはそう断言した。

「…そうだね。みんな強いものね」

 なんだか、この娘が断言してくれるとほんとうに心配ないって気持ちになる。

 思わず頭をナデナデすると、ミーティアは嬉しそうに目を細める。



「さぁ、行こうか」

「うん!」



 試練はまだ続く。

 でも大丈夫。
 きっとみんな乗り越えられる。


 そう思いながら、再び前へと進むのだった。
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