316 / 683
第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火
第十幕 36 『解放の力』
しおりを挟む「とにかく、今の状況が賢者の予言…ゲームのイベントに向かっている可能性は高いと思う」
「グラナ侵攻はある…と」
「その前に軍勢の侵攻があるかどうか……それで本当にイベント通りのことが起きるのか、ある程度の証左になると思う」
昨日の軍議で早急に魔境を調査するように指示がされたので、何れ明らかになるだろう。
「レーヴェラントの魔境ね。どれどれ……」
そう言ってリヴェティアラ様が目を閉じて何かに集中する様子を見せる。
もしかして、魔境の様子を探ってくれてるのか…?
「ん~………確かに、魔物の活動が活発な感じはするわね。…でも、一口に魔境と言っても広いからねぇ。軍勢を統率するような個体が居るのかまでは、パっと見では何とも…」
「何か分れば私かリヴィが神託を降ろすようにするわ」
「そうしてもらえると助かるよ。ありがとう、リル姉さん」
もし、軍勢が襲来するなら…私も力添えする必要があるだろう。
『絶唱』があれば大きな力になれると思う。
「ところで、テオちゃんは印の力は十全に使えているのかしら?」
「……そ、その、自分の潜在能力を解放する、という事であれば…」
テオちゃんって……
「それは基本中の基本ね。私の力の本質はあらゆる事象における『束縛からの解放』よ」
あ~…だからそんなに解放的な恰好なんですか。
と、心の中だけで呟く。
「つまりね、その力の及ぶ範囲は自身だけに留まらないのよ。……せっかく会えたのだから、その辺の概念を教えてあげるわ」
「ありがとうございます……って!?」
ああ、また!?
さっきと同じようにテオに近づいたと思ったら、止めるまもなく顔を近付けて…
おでこをくっつけた。
「ななな!?」
「あら、あなたも知ってるでしょ。お手軽学習」
「え?いや、それは手でちょん、ってやってたような…」
私が狼狽えていると、直ぐに顔を離してそう言うリヴェティアラ様。
直接知識を刷り込んでもらうのは私も経験があるけど、おでこ同士では無かったよ…
そんなやり取りをしてるのをよそに、当のテオ自身は頭を手で抑えて驚きの表情で呟く。
「これは……ああ、これなら確かに…凄い力だ。俺にもこれが出来る……のだろうか?」
「それはあなた次第だけど、何となくは分かるでしょう?」
「え、ええ……。何とかモノにしてみせます」
「うんうん、その意気ね」
……何だか私が妬いているのが馬鹿みたいじゃないか。
でも、テオが凄い力と言うほどだ。
きっと、これからの戦いの中で大きな助けとなってくれるに違いない。
「そうだ、カティアちゃんにも……」
「え?私にも…ですか?」
おでこ、する?
「ディー君の剣はテオちゃんに譲ってくれたのよね。だったら、私の武器はあなたに譲ろうかしら、と思ってね」
「リヴェティアラ様の武器、ですか?」
「そう。私の武器は『聖杖リヴェラ』。様々な武器と魔法を使うあなたにはピッタリだと思うわ」
そして教えてもらった、その武器の能力……確かに私にとって凄く使い勝手が良さそうだと思った。
「そんな凄いものを…ありがとうございます!」
「どういたしまして。で、それは私の神殿に保管されてるはずだから、巫女ちゃんに神託を降ろしておくわね」
「リヴェティアラ神殿総本山はエメリール神殿からそれほど離れていないから寄っていこう」
「うん、そうだね。式典の時間までは、まだあるよね。あ、もしかして……試練とかあったりします?」
聖剣を入手する時は試練を攻略する必要があったけど。
「いいえ、厳重に保管されてるみたいだけど、ディー君とこみたいなものではないみたいよ」
それなら良かった。
神託が降りたからと言って直ぐに渡してもらえるとは限らないけど、帰りに寄って確認しよう。
「それでは、私達はそろそろ行きます」
「リル姉さん、またね。リヴェティアラ様も…今回は色々とありがとうございました」
「またね、カティア、テオフィルス」
「じゃあね、テオちゃん、カティアちゃん。色々頑張って」
こうして私達は神界を後にするのだった。
11
お気に入りに追加
347
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話
嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。
【あらすじ】
イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。
しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。
ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。
そんな一家はむしろ互いに愛情過多。
あてられた周りだけ食傷気味。
「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」
なんて養女は言う。
今の所、魔法を使った事ないんですけどね。
ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。
僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。
一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。
生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。
でもスローなライフは無理っぽい。
__そんなお話。
※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。
※他サイトでも掲載中。
※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。
※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。
※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。
転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる