上 下
304 / 683
第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火

第十幕 24 『ステルス義兄さん』

しおりを挟む

「して、カティア姫よ。そちらの子がミーティアかな?」

「あ、はい。私の養子で……テオのことも父と慕ってくれています。ミーティア、ご挨拶をなさい」

 それまで大人しくしていたミーティアを促して挨拶をさせる。

「はじめまして!ミーティアです!」

「うむ、元気で良いな。それに、いい子で待っておったな。……テオフィルスより話は聞いておるが、神の依代と言うことだったか」

 ミーティアの事は、父に話しても良いか?とテオに聞かれていたので、問題ないと答えてる。

「はい。ご覧の通り、私の魂の性質を受け継いでるので…実の子供と言っても過言ではありません」

「可愛いわね~、二人の子もこんな感じになるのかね~?」

「あ、え、う…こ、子供はまだ早いというか…」

「そんな事ないでしょ。私がテオフィルスを産んだのは、あなたとそう変わらない歳だったんだし」

「まあまあ、フェレーネ。二人のペースというものがあるのだから。焦らせてはだめよ。楽しみにしてるのは分かるけど、あなただってこれから子供が生まれてくるのだから、そっちをたくさん可愛がってあげなさいな」

「それもそうだけど…まあ、気長に待ってるよ」

 そ、そうしてください…




「さて、自己紹介が終わったところで……」

「あの~……僕のことも紹介してもらえないかな~、なんて……」

「「「あ…」」」

 誰?
 …と言うかいつの間にそこにいたの?


「お前、いつ帰ってきてたんだ?」

「義兄さんいつの間に…?」

「最初からいたよ…」

 最初から!?
 え?
 認識阻害とか使ってるの?

 と言うか、テオが『義兄さん』って…
 そうだよ、テオは第3王子なんだから、もう一人お兄さんがいるはず。
 すると、この人が?


「我が息子ながら…いてもいなくても存在感が薄いわね」

「と言うか。国境の部隊はどうしたんだ?」

「僕は報告書ですら存在が薄いんですかね?暫く動きもないし、もし動きがあれば飛竜ですぐ戻れるから僕もテオの婚約者に挨拶する…って、戻る前に報告したじゃないですか」

「おお、そう言えばそうだった……か?」

 え~と、メリエルちゃんの同類なのかな?
 あっちは誰にも悟られずに迷子になる能力(?)だけど、お義兄さんは存在そのものが認識されにくい…と。


「…フェレーネ義母さんが、「私が最後」みたいな感じで挨拶を始めたから分かってましたけど」

「あ~、悪い悪い。全く気が付かなかったよ」

「まあ、良いです。いつものことだから。…と、失礼しました。改めてご挨拶を。僕はハンネスとラシェルの次男でテオフィルスの異母兄、第二王子のアルフォンスです。よろしくお願いします」

「よ、よろしくお願いします。……すみません、気が付かずに」

「いえ、いつものことだから気にしないで」

 そうは言うものの、その表情には隠しきれない哀愁が漂っていた。



















「さて、気を取り直して……これからテオフィルスとカティア姫は正式な婚約関係を結ぶわけだが、面倒な手続きは予め進めてあるし、残った手続きも両国の事務方が殆どやってくれるだろうから、我々は後は調印するくらいだな。」

 どんな手続きがされてるのか詳しくは知らないけど、私自身がやることがあまり無いのは助かる。

「カティア姫はイスパルの王位継承権第一位、将来的には女王となられる身。故に此度の婚姻はテオフィルスが王婿としてイスパルに入る。これはよろしいか?」

「ええ、そのご認識で問題ありません」

 まあ、ここに至ってまだ覚悟ができていないとかは言えないからね…


「この婚姻は当人同士の希望によるものだが、国としても結束を強くするためにも式典を催し、調印はそこで行いたいと考えてる。日程はこちらで調整させてもらって…明後日を予定しているが、問題ないだろうか?」

「いえ、問題ありません。ご調整ありがとうございます」

「うむ。今日のところは旅の疲れもあるだろうし、このあとゆっくり休んでいただきたいが、明日は歓迎のための夜会を予定しているので是非出席頂きたい」

「ええ、承知しておりますわ。何から何まで感謝いたします」

 ハンネス様と母様の間でトントン拍子に話が進んでいく。

 しばらくそうして今後の予定について確認を行い、私とテオの婚約の話は一段落することになった。


「さて、婚約の話はこれくらいだな。これから滞在の間はゆっくりと過ごされると良い」

「はい、しばらくお世話になります」

「よろしくお願いします。では……もう一つの話については……」

「うむ。グラナの事についてだな。もちろんその話もあるのだが…今日のところはゆっくり休まれるといい。明日に軍議が開かれる予定なので出席してもらいたい」

「分かりました」


 そうして、レーヴェラント王家の人々との初めての会合を終えたのであった。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。 【あらすじ】 イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。 しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。 ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。 そんな一家はむしろ互いに愛情過多。 あてられた周りだけ食傷気味。 「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」 なんて養女は言う。 今の所、魔法を使った事ないんですけどね。 ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。 僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。 一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。 生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。 でもスローなライフは無理っぽい。 __そんなお話。 ※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。 ※他サイトでも掲載中。 ※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。 ※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。 ※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...