上 下
298 / 683
第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火

第十幕 18 『空に舞う』

しおりを挟む

「ねえテオ、この子テオの飛竜?」

「ああ。昔世話して懐いたやつでな。数年ぶりの帰城でも覚えてくれてたんだ」

「わ~、賢いねぇ~。触ってもいいかな!?」

「パパ~、私も~」

「大丈夫だ。大人しいし人懐っこいから」

 戦闘の事後処理をしている間、私とミーティアはテオの騎竜を見せてもらっていた。

 私は割と動物全般が好きなのだが…モフモフはもちろん爬虫類とか両生類も好きな方だ。
 トカゲとかヘビって、苦手な人は多いけど、顔は結構愛嬌があって可愛いと思う。
 ミーティアも興味津々だ。


 飛竜はサイズが大きいけど、見た目は翼が生えたトカゲみたいな感じ。
 硬質な鱗が体を覆っていて、長い尻尾と太い後ろ脚を持ち、前肢が進化して大きな翼になっている。
 頭部は体に比べて小さいが、牙がびっしり生えた大きな口をしていて中々恐ろしげではあるが、つぶらで大きな黒目がちの瞳によって、むしろ愛らしく見える。
 爬虫類っぽい特徴を持つが、れっきとした竜種の端くれで、冬の寒さにも強いらしい。


「こんにちは、ロコくん?」

「ああ…そいつはメスだな」

「ロコちゃんか。よろしくね」

「よろしくなの!」

『キュオォーー!』

 私とミーティアが近付いて挨拶すると、高い声で鳴いてから鼻先を擦り付けるようにしてきた。
 本当に人懐っこいんだね。
 可愛い。

 喉元を撫でてやると目を細めて気持ち良さそうにしている。
 可愛い。


「う~ん…可愛いなぁ…いいなぁ飛竜……ウチも飼いたいなぁ…」

「飼いたい!」

 二人して犬猫のようなノリで言うが、お世話が比較にならないくらい大変なのは理解している。

「それなら…俺がイスパルに行くときに一緒に連れて行ってもよいが…」

「本当!?…母様、いい?」

「おばあちゃん…いい?」

 犬猫飼ってもいい?みたいなノリで二人で母様の方をチラチラ見る。
 あざとく上目遣いも忘れない!

「…そんな顔をしなくても別に構わないわよ。レーヴェラントほどじゃないけど、うちにも緊急用に飛竜はいるから飛竜舎は有るわけだし」

 母様は苦笑しながら了承してくれた。
 ひゃっほい!!





「そんなに気に入ったのなら…乗ってみるか?二人くらいなら一緒にn……」

「「のるっ!!」」

 テオの提案に、二人揃って被せ気味に返事をする。
 空を飛ぶのは昔から人間の夢だったんだから、当然でしょ!



 ということで、テオの前に私。
 更にその前にミーティアを乗せてもらう。
 ロコちゃんに付けられた鞍は何とか3人乗るくらいは出来るが、それでもやや手狭なのでピッタリと身体が密着する。
 そして、転落防止の命綱をそれぞれ括り付けて…いざ天空の彼方へ、れっつらご~(死語)。


 私達を乗せたロコちゃんは、多少重量が増えたくらいはものともせずにグングンと力強く空に舞い上がる。

「わわっ!……凄い凄い!!」

「とんでる~!!」

 母娘揃って大はしゃぎだ。


 あっという間に上空まで昇った私達は、一行を遥か下に見下ろす。

 ちょっと怖い気もしたけど……テオがミーティア共々ギュッと腕の中に抱いてくれてるので安心して身を委ねている。



「どうだ、カティア?空の上は初めてだろう?」

「うん!ちょっと怖いけど、それ以上に爽快だね!やっぱり空は広いね」

「パパ、ママ!!とおくまでよく見えるよ~」

 本当にすごい景色だと思う。
 前世の飛行機の方がもっと高いところを飛ぶんだけど……遮るものが全く無いから景色の見え方が全然違う。

 これから峠越する山の頂上よりも更に高く、360°の大パノラマが広がる。


 あれ?
 そう言えば……

「何か、もっと上空は寒いと思ったんだけど、全然そんなことないね。風も穏やかだし……もしかして結界が張られてる?」

 ただでさえ季節は冬であるし、これだけ高度が高ければ当然気温も相当低くなると思うのだけど、むしろ馬車の中より温かい気がする。
 魔力の流れを感じたので、おそらくは何らかの結界が周囲に張られているのだと思ったのだ。

「ああ、ロコが気流操作と温度調節の魔法を使ってるんだよ。飛竜が本能的に使える原初魔法ってことらしい」

「へえ~、知らなかった……凄いんだねぇ、キミ」

「ロコちゃんすごいの!」

『キュアーー!』

 私達が褒めると、嬉しそうに一声鳴くロコちゃん。


「言葉も分かるみたいだね」

「ある程度はな。言葉を理解してると言うよりは、言葉に込められた感情を読み取ってるらしいが。意思疎通は割としやすいな」

「へえ~……凄いんだねぇ、キミ(2回目)」

「ロコちゃんすごいの!(2回目)」

『キュアーー!(2回目)』



 そんなやり取りをしながら…私達は暫しの空中散歩を楽しむのであった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。 【あらすじ】 イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。 しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。 ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。 そんな一家はむしろ互いに愛情過多。 あてられた周りだけ食傷気味。 「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」 なんて養女は言う。 今の所、魔法を使った事ないんですけどね。 ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。 僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。 一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。 生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。 でもスローなライフは無理っぽい。 __そんなお話。 ※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。 ※他サイトでも掲載中。 ※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。 ※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。 ※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...