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幕間

幕間12 『レーヴェラントの人々』

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 時は遡り、カイトがカティアと一時離れ故郷のレーヴェラントに向った頃。


 およそ数年ぶりに帰城したカイト…こと、テオフィルスは旅装を解く間もなく父である国王と謁見することに。

 用意されたのは謁見の間ではなく、人払いを済ませた応接室。
 久しぶりに対面するのは父王ハンネスと正妃ラシェル、他は数人の国家重鎮のみ。
 一緒に帰城した兄アルノルトも同席してくれている。



「久しいな、テオフィルスよ。よくぞ戻った。…しばらく見ぬうちに、良い顔つきになったものだ。アルノルトも特使の務め、ご苦労だったな」

「ご無沙汰しております、父上。長らくの不在、誠に申し訳ありません」

「よいよい。事情が事情ゆえ仕方あるまい。ブレーゼン侯爵からラシェルを通じて変わりない事は聞いていたからな、それほど心配はしてなかったが…随分精力的に活動していたみたいではないか。流石はフェレーネの息子よな」

 暗殺者の脅威を逃れるために出奔したと言うのに、伸び伸びと冒険者活動をやっていたことに引け目を感じて少し返答に詰まる。

「あら、その仰りよう…あなただって、奔放に冒険者やっていたではないですか。そうでなければ、彼女を見初めることだってなかったでしょうに」

 ラシェルがそう言うと、ハンネスは気まずそうに目を逸らした。



「……そうだ、母はどうしたのです?不在なのですか?」

 本来であれば、彼の実母であるフェレーネもこの場にいるはずである。

「フェレーネは今自室で静養中よ。後で顔を見せてあげなさい」

「!どこか悪くされてるのですか!?」

「いえ、そうではなくて………あなた、アルノルトから聞いてないの?」

「驚かせようと思いまして」

 しれっとそう答えるアルノルト。
 普段は真面目で物腰の柔らかい感じだが、案外良い性格をしているようだ。

 どうやら深刻な様子ではないのでホッとするテオフィルスだったが、では一体何があると言うのだろうか…と、かえって気になる様子。

「喜べ、テオ。お前に弟か妹が出来るぞ」

「……………はい?」

 アルノルトから言われた事の意味が分からなかった彼は、思わず間の抜けた声で聞き返してしまう。

 フェレーネがテオフィルスを産んだのは今の彼と同じくらいの年頃だったはずなので、まだ出産可能な年齢ではあるのだが…

「いや、前々からもう一人くらい子が欲しいと、フェレーネは言っていたのだがな。長年実現しなかったので、もう殆ど諦めていたのだが。どう言う訳かここに来て…な?」

 歯切れ悪く答えるハンネス王。
 彼自身も老け込むにはまだまだ早いので、それ自体は別におかしくはない。
 ただ、『年甲斐もなく』…と思われるのが少々気恥ずかしいのであった。


「そ、そうですか…それは、おめでとうございます…?」

 思ってもみなかった報告に、やや混乱しながらも祝福の言葉を返す。
 実際、新たな家族が増えるのは喜ばしいことだと彼は思う。

「う、うむ。まぁ、もしこれからそなたらにも子が授かれば、兄弟のような関係になるであろうな…」

 叔父叔母と言うよりは、年齢差的にそちらの方がしっくりくるのかもしれない。

「そう、それですよ。今回テオが帰って来たのは…イスパルの姫と婚約する話を進めるためなのでしょう?」

 事前に報せはしていたので、当然彼らも大筋の話は理解している。
 今回の帰国の大きな目的の一つである。
 他にも色々あるが、ちょうどその流れになったので、その話をすることに。

「はい、イスパル王ユリウス陛下からは既に許可を頂いております」

「うむ。私も特に反対する理由はないな。ただ、王族同士の婚姻ともなれば、各方面の調整は必要だ。まぁ、それも事務的な話だから問題はなかろう。数日のうちには返答出来るだろう」

「あ、ありがとうございます」

 特に反対される事はないだろうとは思ってはいたが、改めてそう言われると、ほっとするのだった。




「良かったわね、テオ。それで、私の義娘になるのはどう言う娘なのかしら?噂は色々聞いてるけど…何だか凄い娘みたいよね」

「(どの噂を聞いてるのかは分からないが、何だかとんでもないイメージになってそうだな…)そうですね…もともとは平民として育ったので、誰にも分け隔てなく接する優しくて気さくな人ですよ。その一方で、最近では王族としての自覚も備わってきて…そのカリスマには皆惹きつけられます」

「正に王族に相応しい娘さんって感じなのかしらね。それに、平民として生きてきた…というのは、あなたの境遇とも似ているし、そういうところが気が合うのかしら?」

「そう…ですね。私には勿体ないくらいですけど」

「またあなたはそうやって…自分を卑下するのは悪い癖よ。何で、あのいつも自信満々なフェレーネの息子がそうなのかしらね…」


 あの母親を見てたから自分は謙虚に生きようと思ったのだが…そう、テオフィルスは思ったのだが、それを口にする事はなかった。
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