【R18】101回目の転生～天然無自覚少女は溺愛に気付かない～

123.

重ねられたセムヤ様の手にぎゅっと力が込められる。

「貴方の周りの人間はいつも傲慢で強欲で、おぞましい者ばかりだった。人間とはなんて非情な生き物なのだろう。
それなのに…貴方はどんなに辛い目にあっても周りの人を恨む事はなかった。
死の瞬間祈る事は周りの幸せばかり。
最後の願いを叶える事が…こんなに腹立たしい事はなかった。

俺はいつも貴方の涙ばかり見ていたよ。
貴方の涙は美しい。

けれど、俺は貴方が早く壊れて欲しいとずっと思ってた。貴方がもし…周りの全てを恨んで、誰も信じられなくなって『全てを壊して』と願ったなら…俺はこの身を闇に落としてでも叶えたいと思っていたから…。」

「私は神様に…幸せになりたいって何度も祈ったわっ…。」

「俺は心底人間に絶望していた。貴方以外の人間など全て消してしまいたい程ね。

貴方を幸せにするのは俺だ。

おぞましい人間どもには任せられない。だから貴方が俺の闇まで落ちてくる必要があったんだ。
まぁ、結局上手くいかなかったけどな。」

「貴方は…神様なの…？セムヤ様は…どうなっているの？」

「元、だ。今は違う。この身体の主が命を終える瞬間に、身体を拝借させてもらったんだ。セムヤの魂は今頃転生してるだろう。」

「そう…。私は、今どういう状態なの？今回は、今までと違い過ぎる。どう考えても恵まれ過ぎているわ。また…直ぐに死ぬの？」

「今の詳しい状態はわからない。ただ、今までの反動で全てがプラスに転じているんだろう。周りからの過剰な愛情はそのせいだ。寿命に関しても…今回は心配する必要はないだろう。」

「お兄様や、周りのみんなが私を好きになってくれたのは…その仕組みからって事なのね。」

「あぁ。そうだ。」

セムヤ様はガタッと席から立ち上がり、私の足元に跪く。

「ミュラ…。俺はずっと貴方だけを見ていた。俺だけが貴方の本当の苦しみや悩みを解ってあげられる。どんな姿でも関係ない。貴方を愛しているんだ。ねぇ、俺の物になって。」
手を取られ、甲にキスを落とされる。

「…でも…。」

「ねぇ、逆にミュラは他の人の愛情を信じられるの？だってその気持ちは操作されたものかもしれないんだよ？」

「…っ。そうかもしれない…けど。」

「俺だけが本当の愛情だよ。ずっと変わらない。答えは急がなくてもいいから…よく考えてみて。」

そう言ってセムヤ様は私をぎゅっと抱き締めた。