【R18】101回目の転生～天然無自覚少女は溺愛に気付かない～

63.

ロイお兄様に引っ張られながら自室に連れて行かれ、部屋に入るや否やロイお兄様は後ろ手にドアの鍵を閉めた。

お兄様に距離を詰められ私は壁に押しやられる形になる。バンッ！と激しい音を立てロイお兄様の両手が顔の横につかれ、私は逃げ場を失ってしまう。

「サーラは？なぜ一人で庭に居た？」

「ご…ごめんなさい。あ…あの…」
今まで見たことがない顔と低い声に、ロイお兄様を怒らせてしまった事に気付き涙があふれる。

「約束を守れなかったの？そんなにあの男と二人で居たかった？」

「違う…！ひっく…。サーラと…お庭に…出たんだけど…。ひっく…。途中でハリーが呼んでるって…だから、その…。ごめんなさい。すぐに…お部屋に戻るべきだったのに…。」
涙が止まらず、しゃくりあげてしまって上手く話せない。

「ゴメン。ミュラが悪いわけじゃないのに…。カッとなって勘違いして…。本当ゴメン。」
ロイお兄様は何度もゴメンと言ってぎゅっと抱き締めてくれる。


しばらくすると、廊下を走る音が聞こえ、サーラが「ミュラお嬢様！いらっしゃいますか？！」と叫びながらドアをドンドン叩いた。

ロイお兄様がドアを開け、サーラは部屋の中に涙でぐちゃぐちゃになった私を見つけると、真っ青な顔で駆け寄り、勢いよく頭を下げる。

「ミュラお嬢様、申し訳ございません！私が離れたばかりに！ご無事でございますか？」
サーラは私の身体を確認し、手首に赤い跡を見つけると更に青ざめてしまった。

「ロイ様、誠に申し訳ございません！！」

「ゴメン、手首の跡は俺がつけてしまった…。ミュラ、本当にゴメン。サーラ、父上の執務室で話をしよう。ミュラの手当てが終わったら来て。」

そう言ってロイお兄様は部屋を出て行ってしまう。

私はただロイお兄様の背中を見送る事しかできなかった。
涙が止まらない私をサーラがゆっくりソファーに座らせてくれ、手首の手当てをしてくれたけど、手首の痛みより胸が苦しくて…。

あぁ、どうしてこうなってしまったんだろう…。