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「ミュ…ミュ…ミュラお嬢様っ!!ここ、こ、こ、こんにちはぁっ!!」

庭で薔薇を観察していると後ろから勢い良く声をかけられ、びっくりして振り向けば15歳くらいの男の子が顔を真っ赤にしてオロオロとした目でこちらをみていた。

「こんにちは。初めまして…で間違いないかしら?」
お屋敷で働いている方の顔と名前は全員覚えているつもりだけど、覚えがない方だったので失礼が無いように尋ねてみる。

「っ…!は、はいぃ!初めまして、庭師見習いで先日からぉお世話になっておりますです。ポポポールでっす!」

「初めましてミュラです。えっと…ポポポールさん?」

「いや、ちがっ…。ポールと申します。すみません、緊張してしまって…」

緊張??6歳の女の子にどうして緊張を…?あ、もしかして公爵家の令嬢って高慢で我が儘なイメージがあるのかしら?『あなたなんてクビよ!』みたいに言われるのを心配しているのね。

「気を遣わなくて大丈夫ですよ。どうぞよろしくお願いいたします。」

にっこり笑いながら伝える。『私はあなたをクビになんてしませんよ~』とちゃんと伝わればいいのだけれど。

ポールさんは「こちらこそよろしくお願いしますっ!」と勢いよく頭を下げる。
あまりの元気の良さに思わずこちらまで笑顔になってしまう。

「綺麗だ……」

「え?あぁ、この薔薇とっても綺麗ですよね。庭師の方々が頑張ってくださるおかげですね。いつもありがとうございます。」

「あ、薔薇…、薔薇も綺麗ですが、僕が言いたいのはっ……」

ポールさんが一歩こちらに踏み出し何か言いかけたところ…

「ミュラお嬢様~!!」
サーラがこちらへ駆けてきた。

「サーラ、急いで来てくれなくても大丈夫だったのに。ふふ、ありがとう。」

「とんでもございません。ガゼボにお茶を用意いたしましたので、少し休憩いたしましょう。」

サーラが私とポールさんの間に立った為、私からは完全にポールさんは見えなくなってしまった。少し身体をスライドしてサーラの後ろのポールさんを見れば、眉間にシワを寄せ何か言いたそうな顔で…。

「ありがとう。でも今ポールさんとお話の途中で…。」

「ガゼボにロイ様もいらっしゃるとの事でした。ロイ様をお待たせしてしまっては…。」

「それに、」と言いサーラはクルリと向きを変え「ポール、庭師長がお呼びよ。急いで行きなさい。」

私からはサーラの顔が見えないけれど、いつもより厳しい口調に感じた。
サーラはロレイル公爵家に従事してもう10年になる。新人のポールさんから見れば大先輩な訳で、厳しく接するのも教育の為なのかもしれないわね。
それに、ポールさんもお仕事が忙しい中、私の話し相手で引き留めてしまっては申し訳ない。

「わかったわ、ロイお兄様をお待たせしてはいけないわね。ポールさんもお邪魔してしまってごめんなさい。お仕事頑張ってくださいね。」

「は、はいっ!あ、あの…っ!」

「さぁ、ミュラお嬢様、参りましょう。」

ポールさんがまた何か言いかけた気がするが、サーラに急かされた為、私はポールさんにペコリと会釈してガゼボへ向かった。

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