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45.~クロノスside~⭐

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クロノス・フォン・シラー(7歳)
シラー侯爵家 長男

シラー侯爵家は代々魔力が強く、当主が魔術団長を務め王家に仕えてきた。例に漏れず父は魔術団長をしており、俺と妹のエレクトラも魔法に長けている。

魔法のコントロールや精度は鍛練により向上するが、魔力そのものの質は生まれた時にほぼ決まってしまう。親からの遺伝も色濃く出るため、シラー侯爵家の長男として生まれた俺には暗黙の了解で強い魔力を持つ配偶者が求められていた。
まぁ俺自身、人の容姿にアレコレ好みがあるわけではないし、そもそも魔力の乏しい者には心惹かれる事が無いので、容姿より魔力重視で妻を選ぶのには全然問題ない。


ミュラが生まれた日、特別な魔力を感じた。
清らかで、温かく、優しい魔力。
今まで、父に付いて聖女様にお会いする機会もあったが、それとは全然質が違う。
今感じている魔力が光輝く宝石だとすると、聖女様の魔力が質の悪いイミテーションの玩具のように感じる程、天と地の差がある。
そして離れた場所でも感じる程強い魔力。

慌てて父に伝えれば「この魔力を感じる事ができるなら、お前は合格だ。」と頭をポンと撫でられた。妹のエレクトラも同じタイミングで父に伝えに来ていたので、どうやら二人とも魔術師としての第一歩はクリアしたらしい。

俺も妹も魔力の出所までは特定出来なかったが、父には解るようだった。「魔力を辿れる様になるのには、まだまだ修行が足りないな」と笑われてしまい悔しい思いをした。


しかし、魔力を特定できるきっかけは案外直ぐにやってきた。幼なじみのロイに会いにロレイル公爵家に行った時の事、魔力を色濃く感じる事ができたのだ。

「ロイ、最近生まれた妹のミュラに会わせろ。」

「はぁ?無理だ。ミュラはまだ小さい。」

「別に見るだけなら問題ないだろ。」

「駄目だ。どうせ魔力馬鹿の好奇心だろ?そんなクロノスにミュラは会わせられない。」

ロイに何度頼んでも了解は得られず、妹のエレクトラはラナン経由で頼み込んだ様だったが、そちらも断られたようだった。

それから俺は、頻繁にロレイル公爵家を訪ねるようになった。ミュラに会えずとも同じ屋敷にいれば魔力をより強く感じられる。
ミュラの魔力は面白い。感情でコロコロ色や温度が変わるようでとても興味深い。いつしか姿が見えなくともミュラと一緒に居るような気になり居心地が良くなっていた。
今まで他人に興味がなかった俺が、初めて一緒に居たいと思えた人。それほどミュラは特別な魔力を持っていた。


誕生パーティーでミュラを初めて見て、素直に美しいと思えた事に自分でも驚いた。女の外見なんてどうでもいいと思っていた俺が?
初めての感情に心がむず痒い。なんだこれ。


ミュラの魔法は素晴らしかった。
花を一斉に開花させる…植物魔法か、それとも時間を操っているのか?花びらを舞い降らせるのは風魔法だよな。1歳の子が混合魔法を使った?なんだよそれ。
それにこの魔力の心地良さはなんなんだ。
包み込むような優しさで、キラキラと輝いて…。マジか…。ヤバイな。

チラリと父上の顔を伺えば、手で口元を覆っていたがこれは絶対ニヤケてるな。面白い玩具を見つけた時の顔してる。隣に居た妹のエレクトラも目を輝かせている。
シラー侯爵家に目を付けられたら終わりだ。
狙った獲物は絶対に逃がさない。

俺のモノにしたい。
俺だけのモノにしたい。
その顔を近くで見てみたい。
もっと側で魔力を感じたい。

そう思ったら、ミュラを風魔法で浮かせ引き寄せ、抱き締めていた。

「捕まえた。」

絶対逃がさない。
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