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「ぇ…す…好きって、私に言ってくれたの?」

コクコクとシャルカ様に向かって笑顔で頷く私を見て、双子のディオス様とメリー様が「「え?!」」と声をあげる。うん、シンクロしてる。

「あー、あれだろ?ぬいぐるみを貰えたからだろ?」
「そうね、ぬいぐるみに対しての『好き』なのよね?」

ディオス様とメリー様は二人で話し合ってウンウンと納得しているようだけど…。
私は『ぬいぐるみを貰えたから嬉しい』んじゃない、『私の為に選んでくれた気持ち』が嬉しいのだ。同じ様でちょっと違う気がする。

「あぁ…そ…そうよね。私に言った訳じゃないわよね…。ウサギちゃんを貰って嬉しかったのね。」
シャルカ様はディオス様とメリー様の話を聞いて、しょんぼりとしてしまう。

確かにプレゼントは嬉しいから間違いじゃない。でも、それだけじゃないって事を説明したいのに、上手くしゃべれず口からは「あぅあぅ」と小さな声が漏れるだけで…。あぁ、ホント赤ちゃんってもどかしいっ。

とりあえず誤解を解かなければ!

「しゃりゅかたま、しゅき!」
(シャルカ様、ありがとう!)

「ぬいぐるみが…よね?」

「しゃりゅかたま!」
(シャルカ様にありがとうって言ってるの!)

「わ…私?」

「しゃりゅかたま、だいしゅき!」
(そう!シャルカ様ありがとうございます!私はシャルカ様の気持ちが嬉しいんです!)
やっと伝わったと満足感で私は笑顔で頷く。

シャルカ様は「はうぅ!動悸がっ!」と言ってしゃがみこむ。
はっ!もしかしてずっと体調が悪かったんだろうか…。それでハァハァと息が荒かったのかも。恐いなんて思ってしまうなんて、なんて失礼な事を…。きっと体調が悪い中、無理してパーティーに来てくださったんだわ。だから意識が朦朧として、お菓子と間違って私の指を舐めてしまったのかも。
ゼノン様はいつもの発作と説明していたけど、私に気を遣わせないように体調が悪いのを隠す為にあのような言い訳をされたのかも。
心配でオロオロしてると、ゼノン様がちょっと休ませれば大丈夫だからとシャルカ様を控え室へ連れて行った。

ゼノン様とシャルカ様の背中を見送っていると、カイ兄様が真剣な顔で私に話しかけてきた。

「ミュー、『好き』は特別だから…僕以外には言わなくていいんだよ?」

カイ兄様が、ありがとうや嬉しい気持ちがは『好き』って教えてくれたのに…使い方が間違ってたのかな??
特別?すごーく感謝した時とか?
でもカイ兄様にしか言ってはいけないの?
でも、パパやママ、兄様達の他にもサーラやハリーも『好き』って言ったら喜んでくれた…。
コテン、と首をかしげてじっと見つめれば、カイ兄様は何故か慌てた様子で…。

「だから、僕以外には『ありがとう』でいいんだよ?」

んんん?
『好き』と『ありがとう』の違いは何なのだろう?どちらも感謝の言葉なのに使い方が違う?
101回目の転生といえども、これまでの平均寿命は5歳で、知識を学ぶ機会が皆無だった為、私はカイ兄様の説明をいまいち理解できないままでいた。

私とカイ兄様のやり取りを見ていたディオス様とメリー様はコソコソ話し出し、二人で顔を見合わせてニンマリ笑った。

「ミュラちゃん、これお誕生日プレゼントよ。ディオスと一緒に選んだの。」
どうぞ、とメリー様は私の腕にブレスレットをつけてくれる。エメラルドのチャームがキラキラ光って綺麗。

「しゅき…?あーと?」
(好き(ありがとう)?…ありがとう?)
私は自信なく伝える。

「まぁ『好き』って上手にお礼を言えるのね」
メリー様はナデナデと頭を撫でて誉めてくれる。

「ミュラは偉いな。‘’公爵家の令嬢として‘’しっかりお礼を言えるんだもんな。『好き』と言って貰えると『ありがとう』よりも感謝の気持ちが伝わるよ。」
ディオス様も一緒になって誉めてくれる。

「そうね‘’公爵家の令嬢として‘’人に感謝の気持ちをきちんと言えるのは大事な事よね。私も大切な人にはきちんと『好き』と伝えるわ。」
メリー様が美しい笑顔でディオス様の意見に同意する。

‘’公爵家の令嬢として‘’
やっぱり間違っていなかった。
今日こうして沢山の人にロレイル公爵家の娘として紹介されたのだから、家名に恥じないように言動を気を付けなければ。

カイ兄様は私が上手く言葉を発声できず『しゅき』と見苦しい言い方になってしまった事に気を遣って『ありがとう』でもいいよと言ってくれたのかもしれない。

私がアレコレ考えてる傍らで、カイ兄様が頭を抱え、ディオス様とメリー様がハイタッチしていたのは気付くはずもない。

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