【R18】101回目の転生～天然無自覚少女は溺愛に気付かない～

19.

コンコン。
「ミュラちゃん、入るわよ～。あら？どうしたの？」

母様にヒョイっと抱き上げられると同時に、暗い気持ちから浮上する。
柔らかなフローラルの香りと温もりに私は涙を止められなくて、ぎゅぅっと抱きつく。

「あらあら、珍しく甘えん坊さんねぇ。暗い部屋に一人ぼっちで寂しくなっちゃったのかしら？」
クスクス笑いながら、母様は背中を撫でてくれる。母様にあやされていると、マリーとサーラが部屋の明かりをつけ、魔法石で空調を整えてくれる。

「おや、ミュラはどうしたんだい？いつも余り泣かないのに…やはり体調が悪いんじゃ…」
続いて入室した父様が顔を青くさせる。

ごめんなさい。心配をかけたい訳じゃないのに。泣いたら嫌われちゃう、早く涙を止めなければ…。私はぎゅぅっと握りしめた手に力を込める。

「ミュー、そんなに強く握りしめたら掌に傷がついてしまうよ」

いつの間に側にいたカイ兄様に優しく手を包まれ、ゆっくりと指をほぐし開かれてしまう。
カイ兄様は掌に傷が無いか確認すると、手の甲にチュッと唇を落とし「良かった」と甘く微笑んだ。

「ミュラ、寂しくさせてごめんな。ちょっとみんなで話し合いをしていたんだ。」
ロイお兄様が横から頭を撫でてくれる。

「ミュリィ、今日は僕と一緒に寝る？」
ラナンお兄様が天使のような笑みをくれる。

「「それはダメだ」」

「えぇー、カイン兄様もロイ兄様もミュリィと一緒に寝たいくせに」
ラナンお兄様は怒った顔も天使だ。

「それは…」
「そうだけどさぁ…」
どうする？とお兄様達は顔を見合わせる。

「だぁ～め～よっ。魔法の事もあるし、しばらくミュラちゃんは私とルイズの寝室で寝るわ。」
母様がしたり顔で宣言すると、お兄様達はしゅんとしてしまう。なんだか怒られたワンコみたい。
対照的に父様はニンマリしていた。

「ミュラお嬢様、もしよろしければわたくしも添い寝させていただきますよ。」

「よろしい訳ないだろう！？本当にハリーは何を考えてるんだ！？」

呆れた顔で怒る父様に、
「冗談でございますよ」と笑うハリーだけど…じっと見つめられた気がして私はビクリと肩をすぼめる。


あぁ…さっきまで一人ぼっちだったのに、いつの間にか優しい瞳に囲まれている。
私は、ここにいてもいいのかな…。
シーソーのように浮き沈む気持ちに、私はまだ戸惑っていた。