1 / 308
はじまりの一頁
しおりを挟む*
頁一枚、捲るだけではらりと破れてしまいそうなほど古びた一冊の大きな書物。
それを躊躇うことなく、丁寧にゆっくりと開いていく少女。
膝の上に置かれ、開かれた書物からは埃とカビが混じった匂いが鼻をつく。
色褪せた手書きの文字を指先で優しくなぞる少女。
彼女は視線を文章に移し、静かに語り始める。
*
――むかしむかし、世界には三つの大きな国がありました。
三つの国は長い長い間、対立し続け、争いを続けていました。
そのせいで草花は枯れ、水は汚れ、多くの人の悲しみと苦しみにあふれていました。
それでも三つの国は争いを止めることはありませんでした。
そんなあるとき、一つの国の女王さまが立ち上がりました。
争いを悲しんでいた女王さまは他の人にはない、とくべつな力があったのです。
女王さまは自分の力をきらっていましたが、世界を救いたい思いから力を使ったのです。
するとおどろくことに、やけ野原には木や花が咲き、けがした人たちをいやしていきました。
世界は争う前の平和な世界にもどったのです。
三つの国は自分たちのしていたおろかさに気付き、争いを止めました。
世界は、人々は救われたのです。
しかし、女王さまはとくべつな力を使ってしまったせいで深い眠りについてしまいました。
その力は神さまからさずかったもので、勝手に使ってはいけない力だったのです。
神さまの怒りにふれた女王さまは罰として、決してこわれることのない結晶体にとじこめられてしまいました。
平和を取り戻した世界の人々は、女王さまの真実を知って悲しみ泣きました。
女王さまこそが世界を救った女神さまだと、たたえまつりました。
人々は、女王さまの眠る結晶体を、平和のしょうちょうにしました。
人々は、女王さまの名前を借りて新しい国を作ることにしました。
そうして生まれたのが、この『アドレーヌ王国』なのです。
こうして世界は女王様のお陰で新たな国として誕生しました。
その国が、それからどう変わっていったのか。
そして、どう終わっていくのか。
これは、とある王国の始まりと終わり―――それに関わった語られることのない五人の若者たちの物語です。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
幻想美男子蒐集鑑~夢幻月華の書~
紗吽猫
ファンタジー
ーー さぁ、世界を繋ぐ旅を綴ろう ーー
自称美男子愛好家の主人公オルメカと共に旅する好青年のソロモン。旅の目的はオルメカコレクションー夢幻月下の書に美男子達との召喚契約をすること。美男子の噂を聞きつけてはどんな街でも、時には異世界だって旅して回っている。でもどうやらこの旅、ただの逆ハーレムな旅とはいかないようでー…?
美男子を見付けることのみに特化した心眼を持つ自称美男子愛好家は出逢う美男子達を取り巻く事件を解決し、無事に魔導書を完成させることは出来るのか…!?
時に出逢い、時に闘い、時に事件を解決し…
旅の中で出逢う様々な美男子と取り巻く仲間達との複数世界を旅する物語。
※この作品はエブリスタでも連載中です。
策が咲く〜死刑囚の王女と騎士の生存戦略〜
鋸鎚のこ
ファンタジー
亡国の王女シロンは、死刑囚鉱山へと送り込まれるが、そこで出会ったのは隣国の英雄騎士デュフェルだった。二人は運命的な出会いを果たし、力を合わせて大胆な脱獄劇を成功させる。
だが、自由を手に入れたその先に待っていたのは、策略渦巻く戦場と王宮の陰謀。「生き抜くためなら手段を選ばない」智略の天才・シロンと、「一騎当千の強さで戦局を変える」勇猛な武将・デュフェル。異なる資質を持つ二人が協力し、国家の未来を左右する大逆転を仕掛ける。
これは、互いに背中を預けながら、戦乱の世を生き抜く王女と騎士の生存戦略譚である。
※この作品はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※本編完結・番外編を不定期投稿のため、完結とさせていただきます。
男装の皇族姫
shishamo346
ファンタジー
辺境の食糧庫と呼ばれる領地の領主の息子として誕生したアーサーは、実の父、平民の義母、腹違いの義兄と義妹に嫌われていた。
領地では、妖精憑きを嫌う文化があるため、妖精憑きに愛されるアーサーは、領地民からも嫌われていた。
しかし、領地の借金返済のために、アーサーの母は持参金をもって嫁ぎ、アーサーを次期領主とすることを母の生家である男爵家と契約で約束させられていた。
だが、誕生したアーサーは女の子であった。帝国では、跡継ぎは男のみ。そのため、アーサーは男として育てられた。
そして、十年に一度、王都で行われる舞踏会で、アーサーの復讐劇が始まることとなる。
なろうで妖精憑きシリーズの一つとして書いていたものをこちらで投稿しました。
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる