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第一章 聖女召喚に巻き込まれてしまった
三十一.雷を纏う(前)
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怪我もだいぶ良くなったから、いつものように王子と一緒のベッドで眠りについて、目覚めると一人きり。忙しい王子は俺よりも早く起きて、自分の執務室で仕事をしているらしい。朝食までゆっくりしたら良いのにと思うけど、国一番の魔術師で王子という立場の人の何を知っている訳でもないのに、口を出すのは余計なお世話だろう。
クリスくんの用意してくれていた服に着替えて、寝癖を直してもらう。こちらに来た時よりも少し伸びた髪が鬱陶しくて切ろうかと話すと、綺麗な黒髪を切るのは勿体ないと言われ反対された。気分を変えたいのなら、目を隠すほどの長さの前髪を短くしてはどうかと提案されて、女顔を隠すために伸ばしていたけれど、こちらではそれを揶揄うような人間はいないだろうと思い、切ることにした。
「ショウゴ様、前髪はどの程度の長さまでお切りいたしますか?」
鏡越しに訊ねられて、ファッションとかオシャレに疎い俺は反対に問い返した。
「どのくらいの長さが似合うと思う? 俺、前髪長くしてからだいぶ経つから、どのくらいがベストなのか分かんなくて」
「そうですねー。思い切って眉の上程まで切ってしまわれても似合うとは思うのですが、ずっと伸ばしていらっしゃった前髪が、いきなり短くなりすぎては落ち着かないかも知れませんので、まずは隠れた瞳が見えるくらいの長さにしてみるのはいかがでしょうか?」
鏡に向かって俺の髪をくしで梳きながら、クリスくんは真剣に考えてくれたようで、今日からポピーの魔法を訓練に取り入れるため、自分に気合を入れるためにも心機一転軽いイメチェンをしたいと思ったんだ。
「それでは、鋏を入れさせていただきますね」
クリスくんの手際のよいカットにより、あっという間に俺の前髪は短くされて、いつも野暮ったい前髪で隠れていた垂れ目が顔を出していた。
「やはりショウゴ様の瞳はお美しいので、髪で隠れてしまうのは勿体ないと思っておりました。きっと殿下もお喜びになるでしょう」
母親譲りの垂れ目は、やっぱり男らしくなくて好きじゃないけど、もう会えない家族のことを少しだけ思い出して寂しい気持ちになった。でも、そんなことを考えてももう戻ることは出来ないんだから、俺はここでやれることをやるしかないんだ。素直に褒めてくれるクリスくんにお礼を言って、食堂まで一緒に向かった。まだあのエリック特製の苦い薬を飲まなければいけないから、食堂でエリックと王子と一緒に食事を摂ることになっているのだ。
食堂に入ると既にエリックは席に着いていて、俺の前髪が短くなっていることにとても驚いたようで駆け寄ってきた。
「その髪どないしたん? めっちゃええやん! たまに見える目元からべっぴんさんやとは思とったけど、こりゃ相当なべっぴんさんやな!」
「俺、男だよ? 男にべっぴんっておかしいだろ」
「何言うとるん? 可愛い動物にオスもメスも関係ないのと一緒で、べっぴんかどうかも男、女関係ないねんで! もしかしたらショウゴ鏡見たことないんか? 見たら驚くで。めっちゃ綺麗な顔が映りよるから!」
鼻息荒くエリックにそう言われても、小さい頃にクラスメイトに女顔だと揶揄われて、周りにいた女子にもクスクス笑われてから、俺は自分のこの男らしくない顔が嫌いだし、母親に似ている顔を綺麗だなんて思ったことなんてない。近所の人から、お母さん綺麗だねって言われたことがあるけど、自分はそうは思わなかった。優しいときもあるけど、怒らせると怖かったし。
「鏡くらい毎日見てるけど、母親に似てるからそういう目線では見たことなんてないよ」
「そうなんやぁ。無自覚の儚げ美人……。こりゃ王子も苦労するわぁ。周りに牽制掛けてしまうのも仕方ないかもしれんな…………」
エリックが小さな声でブツブツ言いながら自分の席に着いたから、俺もクリスくんに促されて席に着いた。もう少ししたら王子も来るから、それから給仕を開始してくれるそう。少し離れた席からエリックが食事の後に怪我の具合を診せるように言ったから、分かったと返事をする。
今日はポピーの雷魔法を短剣に纏わせた攻撃を練習するつもりだ。その前にエリックに怪我の様子を診てもらって、練習をしても大丈夫か確認しないとな。そんなことを考えていると、給仕の人が王子の到着を知らせてくれたから、俺もエリックも扉の方を見ていた。扉が開いて、いつも通りのキラキラ爽やか王子が入って来たんだけど、俺の顔を見るなり目を見開いて立ち止まってしまった。お腹も空いたし、早く席に着いてくれないかなぁ。王子が座ってくれないとと朝食が始まらないのに――。
「レオンハルト様、お腹空いちゃったんで早く席に着いてもらえません?」
そう声を掛けると、王子はハッとした表情をして俺の方へ足早にやって来た。どうしたんだろう? 俺は早くごはんが食べたいから座って欲しいって言ったのに。エリックの方をチラリと見れば、やれやれといった様子で肩を竦められただけで、ちっとも分からない。何か王子を怒らせるようなことをしたとか? 心の中であれこれ考えて頭を捻っていると、いつの間にか王子が俺の前に跪いていて、俺の手を取り懇願するように握りしめた。
「えっ……レオンハルト様、いきなりどうしたの?」
「ショウゴ殿の美しい黒曜石のような瞳に吸い込まれてしまいそうです」
どうした? という質問の答えになってないし、無意識なのかナチュラルに握られた手がスリスリされて、いきなりのスキンシップに戸惑ってしまう。
「王子は、前髪切ったべっぴんさんなショウゴに見とれてるんやて」
俺を見詰めたまま動かない王子と、戸惑って固まる俺に痺れを切らせたエリックが助け舟を出してくれた。
「――前髪切ったんだけど、似合わないかな? 前の方が良かったですか?」
相変わらず王子と話す時は、完全なタメ語が出来なくて変に敬語が混ざってしまう。
「そんな! 似合わないなど滅相もございません! とてもよくお似合いです。隠されることがなくなったショウゴ殿の魅力が眩しくて、我を忘れて夢中になってしまいました」
「ほんま、よう似合うとるよ。これだけべっぴんさんやったら、王子もおちおち一人に出来ひんよなぁ」
エリックが何か余計なことを言ったみたいで、王子はスクっと立ち上がると、給仕の人たちに向かって恥ずかしい宣言をした。
「ショウゴ殿を邪な目で見たらどうなるか――、分かってはいると思うが改めて言おう。しっかりと心に刻みつけるように! ショウゴ殿はわたしの大切な人であるのだから、必要以上の接触を禁じることとする! 他の使用人たちにも周知するように!」
「王子ってやっぱり過保護やなぁ……。いや、過保護はちゃうか? ――うーん。そや、独占欲や! うんうん」
「ちょっとエリック何一人で納得しているんだよ! レオンハルト様もやり過ぎです! そこまで言わなくても、誰も俺をそんな目で見る人なんていないから!」
「クリス、ショウゴ殿に邪な視線を送る者がいたらすぐにわたしに報告するように!」
「はい。承知いたしました。ショウゴ様に近付く不届き者がいた場合はすぐに対処いたします」
「ええ~……。何だか大事になって何が何だか分かんないよ……。クリスくんまで真剣な顔してるし……」
俺の意見はちっとも聞き入れてもらえなさそうで辟易していると、取り合えず王子が席に着いて朝食が運ばれて来たから、今はお腹を満たすことだけを考える。食べ終わったら、エリック特製激苦薬を飲まされる。それからまたまたミント水で口直しをして、エリックからもらった飴を口に放り込む。
「傷口を見た感じでは、もう大分ええけど、今日の昼と夜までは飲み薬飲んだ方がええやろな。湿布はもう少し続けるとして――。何? 訓練したいやて?」
「――まだ早いって言われるかもだけど……。妖精魔法について昨日ポピーに聞いてさ、妖精によって得意な魔法が違うって言うんだ。それでポピーは雷魔法が得意らしくて、短剣に雷を纏わせて攻撃してはどうかって提案してもらったんだ」
「無理をなさらない方が良いと言うのは、わたしも同意見です。ショウゴ殿の妖精魔法には大変興味がそそられるのですが……。ここは素人が判断するのは良くありませんし、ショウゴ殿の治療を担当しているエリックの意見を聞きましょう」
俺としては早速試してみたいところだけど、無理してまたあの痛みを味わうようなことになるのは避けたいから、エリックに判断してもらうしかない。
「激しい打ち込みは、まだ響くやろうから止めといてもろて、的か何かに切りつけるくらいなら許可してもええかな。まだ全快やないんやから、勇者と手合わせなんてしやんなよ? それは王子も一緒やで! あくまで妖精魔法のお試しくらいの許可や」
「わたしが責任を持ってショウゴ殿に無理をさせないようにする。エリック、それなら良いか?」
こんな怪我くらいでここまで心配させてしまうのは、やっぱり俺がひ弱だからだろうな――。室内で出来る筋トレくらいなら増やしても大丈夫だろうし、こっそり励むことにしようかな。
「あと、もう分かってるとは思うんやけど、王子に念押しさせといて欲しいことがある」
「ああ、何だ?」
「ショウゴの体を見たら分かると思うけど、こっちの世界に来るまでは戦いとは無縁だったのは聞かずとも一目瞭然やんな? 王子や勇者は比較対象にはなれへんけど、こっちの一般人の子供でも、肉体労働で筋肉は付くし、魔獣に襲われる可能性もあるような環境やから、多少の戦闘スキルを持っとるわけや。そんなんと無縁やったんやから、お城のお姫さんと同じように、怪我や体力に気を遣ったらなあかんで」
「ちょっとまって! 俺がひ弱なことは認めるけど、さすがにお姫様と同じ扱いは嫌だよ!」
エリックの発言に驚いて慌ててそう言うと「アホか!」と怒鳴られてしまった。
「正直なところ、お姫さんの方が今のショウゴよりよっぽど強いで。大抵の貴族は少なからず魔法が使えるからな」
そうなのだ――。俺自身は魔法は一切使うことが出来ないし、レオンハルト王子は規格外だけど、みんな多少は魔法が使えるし、魔力のある貴族は小さい頃に魔法の基本を習うらしいから、何も持たない俺より断然強いんだ。俺は情けなさでいっぱいになった――。
クリスくんの用意してくれていた服に着替えて、寝癖を直してもらう。こちらに来た時よりも少し伸びた髪が鬱陶しくて切ろうかと話すと、綺麗な黒髪を切るのは勿体ないと言われ反対された。気分を変えたいのなら、目を隠すほどの長さの前髪を短くしてはどうかと提案されて、女顔を隠すために伸ばしていたけれど、こちらではそれを揶揄うような人間はいないだろうと思い、切ることにした。
「ショウゴ様、前髪はどの程度の長さまでお切りいたしますか?」
鏡越しに訊ねられて、ファッションとかオシャレに疎い俺は反対に問い返した。
「どのくらいの長さが似合うと思う? 俺、前髪長くしてからだいぶ経つから、どのくらいがベストなのか分かんなくて」
「そうですねー。思い切って眉の上程まで切ってしまわれても似合うとは思うのですが、ずっと伸ばしていらっしゃった前髪が、いきなり短くなりすぎては落ち着かないかも知れませんので、まずは隠れた瞳が見えるくらいの長さにしてみるのはいかがでしょうか?」
鏡に向かって俺の髪をくしで梳きながら、クリスくんは真剣に考えてくれたようで、今日からポピーの魔法を訓練に取り入れるため、自分に気合を入れるためにも心機一転軽いイメチェンをしたいと思ったんだ。
「それでは、鋏を入れさせていただきますね」
クリスくんの手際のよいカットにより、あっという間に俺の前髪は短くされて、いつも野暮ったい前髪で隠れていた垂れ目が顔を出していた。
「やはりショウゴ様の瞳はお美しいので、髪で隠れてしまうのは勿体ないと思っておりました。きっと殿下もお喜びになるでしょう」
母親譲りの垂れ目は、やっぱり男らしくなくて好きじゃないけど、もう会えない家族のことを少しだけ思い出して寂しい気持ちになった。でも、そんなことを考えてももう戻ることは出来ないんだから、俺はここでやれることをやるしかないんだ。素直に褒めてくれるクリスくんにお礼を言って、食堂まで一緒に向かった。まだあのエリック特製の苦い薬を飲まなければいけないから、食堂でエリックと王子と一緒に食事を摂ることになっているのだ。
食堂に入ると既にエリックは席に着いていて、俺の前髪が短くなっていることにとても驚いたようで駆け寄ってきた。
「その髪どないしたん? めっちゃええやん! たまに見える目元からべっぴんさんやとは思とったけど、こりゃ相当なべっぴんさんやな!」
「俺、男だよ? 男にべっぴんっておかしいだろ」
「何言うとるん? 可愛い動物にオスもメスも関係ないのと一緒で、べっぴんかどうかも男、女関係ないねんで! もしかしたらショウゴ鏡見たことないんか? 見たら驚くで。めっちゃ綺麗な顔が映りよるから!」
鼻息荒くエリックにそう言われても、小さい頃にクラスメイトに女顔だと揶揄われて、周りにいた女子にもクスクス笑われてから、俺は自分のこの男らしくない顔が嫌いだし、母親に似ている顔を綺麗だなんて思ったことなんてない。近所の人から、お母さん綺麗だねって言われたことがあるけど、自分はそうは思わなかった。優しいときもあるけど、怒らせると怖かったし。
「鏡くらい毎日見てるけど、母親に似てるからそういう目線では見たことなんてないよ」
「そうなんやぁ。無自覚の儚げ美人……。こりゃ王子も苦労するわぁ。周りに牽制掛けてしまうのも仕方ないかもしれんな…………」
エリックが小さな声でブツブツ言いながら自分の席に着いたから、俺もクリスくんに促されて席に着いた。もう少ししたら王子も来るから、それから給仕を開始してくれるそう。少し離れた席からエリックが食事の後に怪我の具合を診せるように言ったから、分かったと返事をする。
今日はポピーの雷魔法を短剣に纏わせた攻撃を練習するつもりだ。その前にエリックに怪我の様子を診てもらって、練習をしても大丈夫か確認しないとな。そんなことを考えていると、給仕の人が王子の到着を知らせてくれたから、俺もエリックも扉の方を見ていた。扉が開いて、いつも通りのキラキラ爽やか王子が入って来たんだけど、俺の顔を見るなり目を見開いて立ち止まってしまった。お腹も空いたし、早く席に着いてくれないかなぁ。王子が座ってくれないとと朝食が始まらないのに――。
「レオンハルト様、お腹空いちゃったんで早く席に着いてもらえません?」
そう声を掛けると、王子はハッとした表情をして俺の方へ足早にやって来た。どうしたんだろう? 俺は早くごはんが食べたいから座って欲しいって言ったのに。エリックの方をチラリと見れば、やれやれといった様子で肩を竦められただけで、ちっとも分からない。何か王子を怒らせるようなことをしたとか? 心の中であれこれ考えて頭を捻っていると、いつの間にか王子が俺の前に跪いていて、俺の手を取り懇願するように握りしめた。
「えっ……レオンハルト様、いきなりどうしたの?」
「ショウゴ殿の美しい黒曜石のような瞳に吸い込まれてしまいそうです」
どうした? という質問の答えになってないし、無意識なのかナチュラルに握られた手がスリスリされて、いきなりのスキンシップに戸惑ってしまう。
「王子は、前髪切ったべっぴんさんなショウゴに見とれてるんやて」
俺を見詰めたまま動かない王子と、戸惑って固まる俺に痺れを切らせたエリックが助け舟を出してくれた。
「――前髪切ったんだけど、似合わないかな? 前の方が良かったですか?」
相変わらず王子と話す時は、完全なタメ語が出来なくて変に敬語が混ざってしまう。
「そんな! 似合わないなど滅相もございません! とてもよくお似合いです。隠されることがなくなったショウゴ殿の魅力が眩しくて、我を忘れて夢中になってしまいました」
「ほんま、よう似合うとるよ。これだけべっぴんさんやったら、王子もおちおち一人に出来ひんよなぁ」
エリックが何か余計なことを言ったみたいで、王子はスクっと立ち上がると、給仕の人たちに向かって恥ずかしい宣言をした。
「ショウゴ殿を邪な目で見たらどうなるか――、分かってはいると思うが改めて言おう。しっかりと心に刻みつけるように! ショウゴ殿はわたしの大切な人であるのだから、必要以上の接触を禁じることとする! 他の使用人たちにも周知するように!」
「王子ってやっぱり過保護やなぁ……。いや、過保護はちゃうか? ――うーん。そや、独占欲や! うんうん」
「ちょっとエリック何一人で納得しているんだよ! レオンハルト様もやり過ぎです! そこまで言わなくても、誰も俺をそんな目で見る人なんていないから!」
「クリス、ショウゴ殿に邪な視線を送る者がいたらすぐにわたしに報告するように!」
「はい。承知いたしました。ショウゴ様に近付く不届き者がいた場合はすぐに対処いたします」
「ええ~……。何だか大事になって何が何だか分かんないよ……。クリスくんまで真剣な顔してるし……」
俺の意見はちっとも聞き入れてもらえなさそうで辟易していると、取り合えず王子が席に着いて朝食が運ばれて来たから、今はお腹を満たすことだけを考える。食べ終わったら、エリック特製激苦薬を飲まされる。それからまたまたミント水で口直しをして、エリックからもらった飴を口に放り込む。
「傷口を見た感じでは、もう大分ええけど、今日の昼と夜までは飲み薬飲んだ方がええやろな。湿布はもう少し続けるとして――。何? 訓練したいやて?」
「――まだ早いって言われるかもだけど……。妖精魔法について昨日ポピーに聞いてさ、妖精によって得意な魔法が違うって言うんだ。それでポピーは雷魔法が得意らしくて、短剣に雷を纏わせて攻撃してはどうかって提案してもらったんだ」
「無理をなさらない方が良いと言うのは、わたしも同意見です。ショウゴ殿の妖精魔法には大変興味がそそられるのですが……。ここは素人が判断するのは良くありませんし、ショウゴ殿の治療を担当しているエリックの意見を聞きましょう」
俺としては早速試してみたいところだけど、無理してまたあの痛みを味わうようなことになるのは避けたいから、エリックに判断してもらうしかない。
「激しい打ち込みは、まだ響くやろうから止めといてもろて、的か何かに切りつけるくらいなら許可してもええかな。まだ全快やないんやから、勇者と手合わせなんてしやんなよ? それは王子も一緒やで! あくまで妖精魔法のお試しくらいの許可や」
「わたしが責任を持ってショウゴ殿に無理をさせないようにする。エリック、それなら良いか?」
こんな怪我くらいでここまで心配させてしまうのは、やっぱり俺がひ弱だからだろうな――。室内で出来る筋トレくらいなら増やしても大丈夫だろうし、こっそり励むことにしようかな。
「あと、もう分かってるとは思うんやけど、王子に念押しさせといて欲しいことがある」
「ああ、何だ?」
「ショウゴの体を見たら分かると思うけど、こっちの世界に来るまでは戦いとは無縁だったのは聞かずとも一目瞭然やんな? 王子や勇者は比較対象にはなれへんけど、こっちの一般人の子供でも、肉体労働で筋肉は付くし、魔獣に襲われる可能性もあるような環境やから、多少の戦闘スキルを持っとるわけや。そんなんと無縁やったんやから、お城のお姫さんと同じように、怪我や体力に気を遣ったらなあかんで」
「ちょっとまって! 俺がひ弱なことは認めるけど、さすがにお姫様と同じ扱いは嫌だよ!」
エリックの発言に驚いて慌ててそう言うと「アホか!」と怒鳴られてしまった。
「正直なところ、お姫さんの方が今のショウゴよりよっぽど強いで。大抵の貴族は少なからず魔法が使えるからな」
そうなのだ――。俺自身は魔法は一切使うことが出来ないし、レオンハルト王子は規格外だけど、みんな多少は魔法が使えるし、魔力のある貴族は小さい頃に魔法の基本を習うらしいから、何も持たない俺より断然強いんだ。俺は情けなさでいっぱいになった――。
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