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結婚式①

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 婚姻届けを出してから半年後――。天候に恵まれた中、私とケビンの結婚式が執り行われた。たくさんの方々に祝福されて私たちは神様の前で生涯を共にすることを誓った。

「アンジェリカ! とっても綺麗だわぁ。貴女のウェディングドレス姿を見ることが出来るなんて――」

 そう言って涙を流しているのは私の実母で、何とこの日のためにケビンとピエール様が元の世界との道を確立してくださったのだ。

 私の結婚式に実の両親と兄弟を呼ぶことが出来るなんて夢にも思っていなかったし、二度と会うことは出来ないと思っていたから、そのことを聞いた時はなかなか涙が止まらなかった。そんな私を優しく抱き締めて、サプライズが成功したと嬉しそうに笑っていたケビンは、本当に愛しい存在だ。

 元の世界の侯爵家実家とケビンの塔の行き来のみに使用される魔法陣は、許可を得た者のみが通ることが出来る。魔法陣が悪用されてはいけないので、その存在は国家機密レベルでトップシークレットだ。

 結婚式が終われば、待ち受けているのはいわゆる初夜である。

 既に夫婦でありながら今日までの半年間、キスと軽いおさわり程度で我慢してくれていたケビンが心待ちにしていた日――。

 私も、早くケビンと身も心も結ばれたいと思っていたけれど、いざ当日を迎えればどうなってしまうのかという不安が先に立って怖い。

 結婚式後に、実母とお母様に、「孫の顔を見るのを楽しみにしてるわね?」と言われてしまい、初夜を意識してしまってからはケビンの顔を真っすぐに見ることが出来なかった。

 二人とも入浴を済ませると揃ってケビンの寝室に入った。

 結婚するにあたっていずれ家族が増えることも想定して、ケビンは塔の広さを魔法で拡大してくれたので、寝室も二人で使っても十分すぎるほど広く快適になった。難なく魔法を使いこなすケビンは本当に規格外で、さすが大魔導士で自慢の旦那様だ。

 緊張で動きがぎこちない私はケビンに促されるままベッドに腰を下ろした。

 昨日まで別室で眠っていた私たちは、今日から一緒のベッドで寝起きするのだ。緊張しないはずがない。

 ケビンは私の隣に腰掛けると優しく抱き寄せて頬に口付けを落としてくれた。

「アンジェリカ、俺に君の全てをくれないだろうか?」

 私の大好きな潤んだ紫の瞳で見詰められると、目が逸らせない。

 抱き寄せた手の震えから、ケビンも緊張しているのが伝わって、この人に自分の全てを委ねようと心から思えた。

「うん。優しくしてね」

「うぐっ……、勿論だ」

 そこからはケビンに翻弄されっぱなしだった。

 私をベッドに横にすると、覆いかぶさるようにして唇を奪われる。早急に唇を割り開かれて舌を吸われる。

「あぁっ、んんっ……」

 ピチャピチャという水音と私の口から漏れる声。恥ずかしくて口を手の甲で塞ぐと、優しく外されて片方の手で頭上に纏められてしまった。

「声は我慢しないで。アンジェリカが気持ちよくなっている声をたくさん聞かせて?」

 普段よりも色気たっぷりの声で耳元で囁かれる。そして耳を舐められた。これは初めてのことで恥ずかしい。耳たぶを唇で挟むように甘噛みしたかと思えば、耳の裏をねっとりと舐め上げられ、ゾクゾクとしたものが身体を走り抜ける。

「耳、気持ちいいんだ?」

「わ、わかんないっ……、あぁっ……」

 耳の穴に舌の先が触れた。あんなに小さな穴に入るとは思えないけれど、水分を伴った舌先が耳の穴を擽るたびに身体が跳ねた。至近距離で直接聞かされるチュクチュくといったいやらしい音が脳に響く。

「はあ……、アンジェリカっ……んちゅっ、ぴちゃっ」

 私の名前を呼びながら耳をねぶられ続け、まだ始まったばかりだというのにすっかり息が上がってしまっていた。

「やぁっ、んっ、み、みみばっかり、いやぁっ」

 あまりに長い耳への愛撫に思わず抗議の声を上げる。

「でも耳、気持ちいいでしょ? 可愛いねアンジェリカ。腰がユラユラ揺れちゃって、本当に可愛い。もっとしてあげる」

 そう言って耳への愛撫が再開してしまった。ふやけてしまうんじゃないかというくらい長い時間舐められていたように思う。漸く耳から離れてくれた時には私はもう息も絶え絶えだった。

 いつの間にか夜着は取り去られていて、生まれたままの姿をさらけ出していた。ケビンは上半身だけ脱いだらしい。ほどよく鍛え上げられた筋肉が美しい。

「ああ、綺麗だアンジェリカ」

 そう言って唇を重ねる。夢中になってケビンの舌に合わせて私も舌を動かす。唇が離れそうになれば追いかけて舌を絡める。すっかり私はキスが大好きになっていた。

「んっちゅっ、顔がトロトロだね。気持ちいいね?」

「いわ、言わないでっ……」

 纏められていた腕が解放されると、ケビンの背に腕を回して抱き着いた。

 唇が首を通って胸へと進んで行く。触れられていないというのに、私のそこは期待からか存在を主張していた。大きな掌で包み込むようにやわやわと揉み込まれるが、あえて先端には触れないようにしているようでもどかしい。普段のキスの合間の触れ合いで、服の上から刺激されることがよくあったため、そこで得られる快感を知ってしまっている。

「どうしたの、モジモジして?」

 分かっているくせに意地悪だ。ケビンの新たな一面を知ったけれど、それを嫌じゃないと思う自分もいる。恥ずかしいけど、そんなケビンも好きだ。
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